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「嘘だッ!!!」
ぎゃあーーーーっ!!
いやー面白怖かったですよね、「ひぐらしのなく頃に」。ゼロ年代を代表する大ヒットホラーゲームとして話題をかっさらいました。
そもそも「ゲーム」と呼んでいいのか議論が分かれる、選択肢無しの一本道シナリオ。手がグローブみたいに丸っこい、癖の強い絵柄など。いろんな要素が化学反応を起こした結果、数多くのゲーム機に移植されて、アニメ化、実写映画化と快挙を成し遂げました。

「ひぐらしのなく頃に」(07th Expansion)。2002年夏のコミックマーケットで第1作「鬼隠し編」が頒布され、2004年に突然のブレークを果たしました(公式サイトより)

ヒロインの竜宮レナ。今見てもかなりクセのあるデザインです(キャラクター紹介ページより)
バカ売れしたゲームは他にもたくさんあります。じゃあなんでこれがインターネット回顧録なのか。作品の盛り上がりにインターネットが大きく関わっていた、当時としては珍しいケースだったからです。
備考:「ひぐらしのなく頃に」シリーズ一覧(Wikipediaより)
出題編(「ひぐらしのなく頃に 暇潰し編」に全4話収録)
鬼隠し編(2002年夏・コミックマーケット62発表)
綿流し編(2002年冬・コミックマーケット63発表)
祟殺し編(2003年夏・コミックマーケット64発表)
暇潰し編(2004年夏・コミックマーケット66発表)
解答編(「ひぐらしのなく頃に解 祭囃し編」に全4話収録)
目明し編(2004年冬・コミックマーケット67発表)
罪滅し編(2005年夏・コミックマーケット68発表)
皆殺し編(2005年冬・コミックマーケット69発表)
祭囃し編(2006年夏・コミックマーケット70発表)
番外編(ファンディスク『ひぐらしのなく頃に礼』)
「賽殺し編」「昼壊し編」「罰恋し編」(2006年冬・コミックマーケット71発表)
特別編(『ひぐらしのなく頃に奉』)
上記全ての編および「雛見沢停留所」「ひぐらしアウトブレイク」「神姦し編[2]」(2014年夏・コミックマーケット86発表)
全然知らない人からいきなりタレコミメールが届いた
私が体験版を知ったのは2004年8月1日(※)。全然知らない人からいきなりメールで「とにかくすごい同人ゲームが出たから紹介してくれ!」ってタレコミをいただいて、かーずSPで紹介しました。Flash新作以外でタレコミメールはほとんどもらわなかったので、そうさせるほどのエネルギーに驚いた記憶があります。
※編注:第1作「鬼隠し編」がリリースされたのは2002年夏でしたが、当時はまだそれほど話題になっていませんでした。かーずさんが体験版を遊んだのは2004年8月なので、第4作「暇潰し編」のリリース直前
それで体験版を最後まで遊んでひっくり返りました。「なんだこれ!」と衝撃を受けてサイトに感想文を上げたのがこちら(※)。Webアーカイブに残っている、「ひぐらしのなく頃に」雑感の鬼隠し編の項目です。
※オタクは自分が好きなものを布教したがるやっかいな習性があります。ネットで大声を出して、「これすげー!」って言いたかっただけ

「ひぐらしのなく頃に」雑感 鬼隠し編(Internet Archiveより)
前半はぬるいテンプレギャルゲーなんですが(言い方!)、1人目の殺人事件が起こる、豹変する仲間たち、ほんとに1シーン、1テキストから、物語は一変して怒涛(どとう)の展開を見せます。序盤にちりばめれた伏線が明らかになり、身近な人間が突拍子もなく変化していく恐怖を描く。そして、謎は謎のまま終わっちゃう。えっ? オチは?
こんなチラ見せ、続きが気になりますよね。そりゃコミケに買いに行きましたとも。3日目の島中(※)でした。そして100円でした。ジュースより安いんかい。その後ずっと壁サークルを続ける07th Expansion、当時は島のお誕生日席ですらありませんでした。
※コミックマーケットのサークルスペースのこと。小規模サークルは机を並べてある“島”に配置される。少し人気だと島の角に。大手サークルは混雑対策で外周に配置される。俗に言う「壁サークル」
この島中から、3年間で60万本を売り上げるお化けソフトになろうとは。竜騎士07さんと相方の故・BTさんが自宅で焼いたCD-Rを手売りしてる光景はレアそのものでした。そこに汗だくのキモヲタが1匹、同人誌でパンパンにした手提げバッグでブース前に駆け付けました。午後なので人はまばら。山積みのCD-Rのケースを一部手に取って、
「体験版が面白くて買いに来ました!」
「ありがとう。これも遊んでみてよかったら感想聞かせてね」
その数日後に、最新版「暇潰し編」をプレイした連中が僕も含めてネットで大騒ぎです。だって謎がさらに深まるだけなんだもん。
次々と感染していくニュースサイト管理人、同人ショップでは完売続出
当時のネットにはTwitterがありませんでした。そこでみんなが議論を戦わせたのが、2ちゃんねるのスレッド、そして公式の掲示板です。昔のホームページ(この呼び名も懐古)には、掲示板(BBSと呼ばれていた)という交流の場所があるのが普通でした。
2ちゃんねると07th Expansionの掲示板では、「誰が犯人だ」「原因は病気か、幻覚か」「このシーンは魅音なの、詩音なの?」とかんかんがくがくの大論争です。
翌9月から同人ショップにプレス盤が委託開始。価格は1500円。15倍かよ〜、いやいや良心的な価格です。それも入荷されては即完売が続きます。当時の光景はこちらにて。

「ひぐらしのなく頃に」が秋葉原も含めかなりの品薄に(アキバBlogより)

「ひぐらしのなく頃に」と「ひぐらしのなく頃に解」のパッケージ。オタクのもう一つの習性「気に入ったものは遊ぶ用、保存用を二枚買う」。これは未開封の保存用です


右上にはいつプレスしたのかを表すバージョン刻印も
個人サイトでは「ひぐらしのなく頃に」熱がDAIさん帝国、かーずSPに続いて、げいむ乱舞界、発熱地帯と次々に感染。あ、これ完全に雛見沢症候群だ。
このようにオタク系ニュースサイトに補足されていきました。驚いたことに、カトゆーさん(@katoyuu/「カトゆー家断絶」管理人)に「ひぐらしのなく頃に」の話をしたら、ブームになる1年前から遊んでいたようです。カトゆーさんに当時のことを聞いてみました。
カトゆー:2003年の8月にあるサイトで「ひぐらし」が面白いと評判だったんです。それで興味が湧いて07th Expansionのサイトを見に行ったら、その年の夏コミで出る「祟殺し編」のテストプレイヤー募集が行われてたんですね(募集ページ)。で、「無料ならもらおうかな」くらいの軽い感覚で応募したのが8月15日で、夏コミを挟んで25日に送っていただきました。まぁそんな感じです(笑)。
マジか! カトゆー先生! アンテナ高すぎでしょ。
行列にただボーゼン、冬コミでは壁サークルに
「暇潰し編」発売から数カ月でオンリー即売会、コミックアンソロジー、特別設定資料集の発売。企業も、ようやく「ひぐらしのなく頃に」の祭りに乗ります。その年の冬コミではもう壁サークルでした。午前中に入場したのに、目の前の大行列にただボーゼン。諦めて秋葉原の委託ショップに向かってました。その時の「ひぐらしのなく頃に解 目明し編」が、ファン屈指の名エピソードだったことも盛り上がりに拍車を掛けました。
あとはご存じの通りスクウェア・エニックスでエピソードごとに漫画化、ドラマCD化、講談社BOXで書籍化、さまざまなコンシューマー移植、アニメ化、パチスロ化、実写映画化、テレビドラマ化まで。破竹の勢いです。コンシューマーやテレビアニメで絵がキレイに描き直されたのを見て、「やっぱり手がグローブじゃないと『ひぐらし』じゃないよな〜」みたいな調教済みの発言まで発してました。

テレビアニメ「ひぐらしのなく頃に解」公式サイト – オヤシロさまドットコム
ネットが経済に影響を与える社会の到来
同人ゲームがここまでブレークするのは初めてではありません。今「Fate/Grand Orderが大人気のTYPE-MOONの処女作「月姫」も、テレビアニメになっています(リメーク版ずっと待ってます!)。
では、どこが斬新だったのか。ゲーム内には一切選択肢がなく、ユーザーには謎を提示するのみ。あとは推理してくださいという仕組みが、「俺はこう思う」「いやいや、それだったらもっと違う解釈が」と推理合戦を活発化させました。「アドベンチャーゲームは制作者から与えられる一方通行のシステム」という概念をぶち破り、ユーザー参加型コンテンツへと昇華させたんです。
語り合う場としてのインターネットが普及していったのもこの時期です。2001年ごろからYahoo!BBが、駅前でADSLモデムを大量に無料配布していました。インターネットが、一部のコア層から一般家庭に急速に浸透していった時代です。
2004年秋は「ひぐらし」の他にも、「電車男」が書籍化されて大ヒット。社会現象となりました。今ではインターネット発でモノが爆発的に売れることも珍しくありません。ですが当時は珍しいことでした。そんな時期に「ひぐらしのなく頃に」や「電車男」がネットユーザーを巻き込んで、一大ムーブメントを築いた功績は大きいと感じます。

「電車男」(中野独人/新潮社)が話題になったのも2004年でした
インターネットがきっかけでモノが動く。ヒトが動く。カネが動く。ネットが経済にも巨大な影響を与える新しい社会の到来を感じさせました。その象徴的な出来事として、「ひぐらしのなく頃に」祭りは、今も鮮明に記憶しているのです。
作者の竜騎士07氏は今も、漫画原作者としても数多くの作品を手掛けています。中でも最近1巻が発売された「恋愛ハーレムゲーム終了のお知らせがくる頃に」が、女子同士の生き残りをかけたデスゲームの頭脳戦で非常に熱い! それでいてかわいくてちょっとサービスシーンもある、珠玉のマンガに仕上がっています。マジおすすめ。

恋愛ハーレムゲーム終了のお知らせがくる頃に(漫画:緋賀ゆかり・原作:竜騎士07/講談社)
(かーず)

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