
賭ケグルイシリーズの表紙は、どれもこれも少女たちがエロティック
アニメ放映中のギャンブルマンガ『賭ケグルイ』。高校生のヒロイン・蛇喰夢子は、勝つ気はあんまりなく「リスクを背負って両者が全力で賭け事をする」中毒。最高のギャンブルができればそれでいい。だから試合内容と賭けるもののインフレがすさまじい。高校生なのに賭けているものが、一勝負で100億とか、人生とか、命とか。クレイジーな作品です。
そんな狂気の学園の中、頭はいいのに周りが奇人変人なので、相対的に凡人と化したツンツンツインテール少女早乙女芽亜里(さおとめ・めあり)。スピンオフ作品『賭ケグルイ双(ツイン)』からご紹介。
一般家庭だよ芽亜里ちゃん
早乙女芽亜里は、特待生で入学した才女です。学校の食事には水筒を持ってくるあたり、等身大な幼さもあってキュンときます。
ところが彼女が通う私立百花王学園は、超上流階級のお嬢様お坊ちゃま、政財界の跡継ぎレベルな人間が集う学校。この学園で大事なのは学力でも運動でもなく、ギャンブルの強さのみ。
芽亜里はギャンブルなんて知らないし、やったことがない(そりゃそうだ)。金銭的にはごくごく普通の平民家庭に育った子です。水筒を持参した特待生となると「お金がないので頑張って勉強して入りました」と公言しているようなもの、と周りは見る。
ギャンブルはド初心者の彼女。イカサマが横行する学園、カモがネギを背負ってくるとはこのこと。

20万円の借金。普通はすぐには返せないよね(1巻27ページ)
最初の試合では、1回1万円で勝負。賭けたことがない芽亜里にとっては衝撃。100円とかじゃないの!てかお金賭けるの!? ところがこの学園では1万円なんて、お金のうちに入らない。借金は膨れ上がって20万、30万。一般的には成人でもこの額をギャンブルで溶かすとなると痛い。高校生の芽亜里にとっては返済不可能な金額。
周囲の子たちは超絶お金持ち。20万円なんてはした金です。百万円の札束をポンと出せる子たちの中で、弱者にならず生き抜かねばいけない。『キン肉マン』の超人の中に混じった(元)人間ジェロニモのような、圧倒的不利。
まさに、大富豪の「大貧民」状態。周囲の嘲笑を耐えるところからのスタートです。
下克上だよ芽亜里ちゃん
ギャンブルには、お金の有無はどうしてもかかわってくる。金持ちが見下す視線が、庶民の芽亜里に集中して刺さります。つらい。

いやな学校だなあ。あと貧乳関係なくない!?(4巻77ページ)
彼女が選んだのは、徹底的に戦って、何が何でも勝者になるというものでした。
幼い頃から彼女のことを慕っており、今は学園でギャンブルに負けて虐げられている花手毬つづらに言います。
「私達は上に立つ。二度とコケにされないために。それがギャンブルで決まるというなら、ギャンブルで勝つ! 学園の金持ち共を全員見返してやる。私達は勝者になるの!」
最初は弱者だった。でももう弱者なんて言わせない。彼女は以降、徹底して「勝者」の語にこだわります。搾取される弱者な現状からの、下克上です。セリフを見るとわかるように、別に勝者になれるのなら、ギャンブルじゃなくてもいい。

煽りには煽り返す。さあ芽亜里の目を見ろ(4巻109ページ)
『賭ケグルイ』本編は、蛇喰夢子というミュータントが、絶対負けない超人的能力と、結果はどうでもいいという理解しづらい価値観で、学園を引っかき回すのが面白い作品。
一方『賭ケグルイ双』は、早乙女芽亜里が泥をすすってでも勝とうと努力する、根性の成り上がり物語。対になっています。
ポイントになっているのが、芽亜里の性格。極度の負けず嫌いで、勝つためだったら汚い手も辞さない。これ、ギャンブラーがイカサマをしてでも勝つためには必須な部分。勝負中は負けがこんでいても動揺した顔を見せません。
また、ギャンブル以外の部分で頭がいい。勝負どころと引き際を冷静に考えることに長けている。なんせお金がない芽亜里。しゃにむに試合で勝つよりも、長期的に賭場を経営して少しずつ稼いでいくようにする、利益計算がちゃんとできている。この学園、金銭感覚がマヒしている子ばかりなので、これはとても貴重。
それでいて、煽り力が異常に高い。本人、正義の味方として戦っているわけじゃない。特に『双』では幼さが目立ちます。単に勝って「バーカバーカ」となることも多い。結構ずうずうしくて大胆な素の部分が、相手におじけづかないというプラスに作用しています。

気持ちはわかるけど、お前わりと最低だな!(3巻227ページ)
試合に挑む時の経験値は圧倒的に足りない。つづらたち仲間の力を徹底的に頼って、脳をフル回転させる。おごらず、勝つためになんでもするというのは、努力家の証。
こうしてみると、芽亜里は少年マンガの主人公が持つ必須要素、ほぼ全部持っています。這い上がり仲間との友情はあるし、積み重ねていく努力もしている。蔑まれてもめげない根性も持っているし、自分らしく戦う矜持(きょうじ)もある。最後の最後には勝利する。

友を信頼し、友に信頼され。勝者になるのは「私たち」。かっこいい!(3巻9ページ)
だから、わりかし芽亜里は負けます。弱くて一度なめられた人間が全力で反撃するのって、熱いじゃん。
熱血漢だよ芽亜里ちゃん
彼女は自分が善人だとはみじんも思っていません。勝つためにはなんだって踏みにじるぜ、くらいの気持ちです。
でも実際読んでみると、彼女相当義に厚い人物なのが見えてきます。人の道に外れたこと、他人を傷つけること、傲慢なことに対しては鋭く反応。自分がバカにされてもそこまで怒らないけど、理に反した言動に対しては、自らが不利になろうと声をあげます。

クラスの中で孤立することになろうとも、芽亜里は自分の正しいと思った道を貫きます(4巻171ページ)
芽亜里をはめて、ひどい目に合わせようとしたクラスメイト。その子が他の級友に手のひら返されていじめられているのを見て、とっさにタンカを切ります。目の前で行われている理不尽には、後先考えず正直に文句を言うのが芽亜里らしい。
これは『双』だけでなく『賭ケグルイ』本編でもそうです。借金があるものはいじめてもいい、という家畜制度など、倫理がめちゃくちゃ学園の中で、冷静に状況を見抜き、はっきりと意見を述べ、反旗を翻せるのは、超真っすぐな芽亜里だけ(夢子は多分そういう感情皆無なので……)。
みんなにモテるよ芽亜里ちゃん
周囲の一般クラスメイトには指さして笑われる芽亜里。けれども彼女の曲がらない性格に、一部の人は惚れ込みます。本編と『双』のカギになる人物は敵も味方もだいたい惚れ込んでいる。
中でもベタ惚れなのが、小学生のころから彼女の正直な姿に憧れている、花手毬つづら。何もかも信じて、芽亜里についていこうとしています。それは自分のために勝ってほしいからじゃなくて、どんなことがあってもくじけない彼女のことが、大好きでしかたないから。愛です。

実際、ネットを見ると芽亜里の読者人気はめちゃくちゃ高いです(4巻P177)
彼女の生き方に、支配者側の生徒会役員たちも目をつけます。本編では、生徒会長が一本釣りで役員にしようとしたり、副会長が自分の味方につけようとしたり、激モテ。何より夢子がものすごく気に入っているようで、常にベタベタ。芽亜里ハーレムです。本人めちゃくちゃ嫌がっているけど。
『双』では、一緒に賭場を経営することになった戸隠雪見や、生徒会役員の聚楽幸子、壬生臣葵が、芽亜里に目をつけます。なお聚楽は嬲りたいという性癖的な理由です。
芽亜里自身は、自分たちが勝者になれるのであればどの話にでも乗る、とは言います。けど、きっと芽亜里のことを本当に信じている子たちは、そうは思っていないはず。本編も『双』も、芽亜里が大切にしている人間の義の心を決して曲げないのを、みんなわかっている。だからこそ、彼女を信頼し、自分たちの人生を預ける決意ができます。
能力的には夢子のようなスーパーマンじゃない。けれど、大丈夫、信じて、と囁いて視線を曲げないのが芽亜里。その姿はまるで。

手を差し伸べてくれる王子様!(注・つづらの妄想です)(2巻P186-187)
芽亜里は、金髪ツインテールの王子様。
本編ではサブヒロインでしたが、8巻でついに、メインの夢子・生徒会長に並んで、主人公格に上り詰めてきた芽亜里。『双』とどこかで合流するのかな。
できれば本編を読んでから『双』を読むのがオススメではありますが、時系列的には『双』の次が本編なので、熱血芽亜里を見たい人は是非『双』からでも。
(C)2017 Homura Kawamoto・Kei Saiki/SQUARE ENIX
(たまごまご)
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