その年で最も“ブラック”だった企業を「ノミネート」として公表し、「授賞式」を行うブラック企業大賞。長時間労働や残業代未払いなどが、社会人にとって身近で切実な問題になっているためか、例年注目を集めています。
しかし、意外と知られていないのは「どのように開催されているのか」という点。ノミネート企業から嫌がらせを受けたり、訴訟されたりする心配はないのでしょうか。同企画委員会メンバーを務める河添誠さんに取材しました。

ブラック企業大賞Webサイト
ブラック企業大賞って、どうやって運営してるんです?
―― ブラック企業大賞は、どのようなコンセプトで始まったのですか?
ブラック企業大賞が始まる前から、「ブラック企業」「ブラック会社」という表現はスラング的に使われており(※)、過労死などに関する報道もありました。ですが、ニュースとして取り上げる形だと情報が流れては消え、流れては消え……という感じになってしまいます。
われわれのコンセプトは「記憶に残してもらうこと」、それから「具体的な企業名を出して批判すること」です。運営を行う企画委員会のメンバーは約10人で、ブラック企業大賞が発足したころからほとんど変わっていません。
※例えば、2007年末、旧2ちゃんねるに「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」というスレッドが登場。元ニートのプログラマーを名乗る人物が、自身の職場をついて語った。のちに書籍、映画化。

映画「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」公式サイト
―― どうして単に公表するのではなく、「ノミネート」「受賞」という形式に?
実は海外に先行事例があります。例えば、「環境的によろしくない活動をする企業を、あえて表彰する」とか。
―― ルポライターや弁護士、ジャーナリストなどの方々が委員会メンバーを務めていますが、どうやってブラック企業を探しているんですか?
それぞれが労働問題にかかわる活動をしていて、そこで得た情報を使っています。全員で集まるのは大変ですが、ネットを使ってやりとりしながら、毎年ノミネート企業などを考えています。

企画委員会メンバー(Webサイトより)
―― ノミネート企業の選抜は、具体的にはどのように行っているんですか?
選抜基準には、公式サイト上で公開している「ブラック企業を見極める指標」を使っています。ですが、「長時間過密労働」「セクハラ・パワハラ」「いじめ」「コンプライアンス違反」……など多岐にわたり、実際には、委員会内で意見交換を行いながら総合的に判断している感じです。業界、分野などのバランスも考慮しています。

Webサイト上に掲載されている「ブラック企業を見極める指標」
2012年に第1回を行ったところ、「実はうちの会社も……」と情報を耳にする機会が増えました。「弊社もブラックだから、ノミネートしてほしい」と思っている人もいるかもしれませんが、われわれは誰かから要請を受けてやっているわけではないので、そういった声には応えられません。
苦しんでいる人を応援したい気持ちはあるのですが、ノミネート企業を決める際は、純粋に「その企業がどれくらいひどいことをしているか」を考えています。
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