予想外の雨に襲われ、屋根の下でどうしようかと棒立ち。こんなときに頭をよぎるのが「雨のときは『歩く』『走る』のどちらが、ぬれにくいのか」という話。時折耳にする疑問ではありますが、正解はどちらなのでしょうか。物理エンジンを使って検証してみます。
こーじ

物理エンジン(Unity)で、シミュレーションして動画にしています!
Twitter:@PhysicsKJ/YouTubeチャンネル:こーじ
雨のときは『歩く』『走る』のどちらが、ぬれにくいの?
今回は、雨が降るなか、30メートルの距離を移動する場合をシミュレーション。上空から落下してきた雨粒(秒速7メートル、降水量1ミリ程度)が体に衝突した数を計測します。人間の移動速度は成人平均に合わせて、歩く速度は時速4キロ、走る速度は時速16キロに設定しています。
ちなみに、事前にYouTubeでアンケートを行ったところ、「歩く」派は28%、「走る」派は25%。わずかな差ではありますが「歩く」派が優勢となりました。最も多かったのは「どちらも同じ」という意見で、47%にのぼっています。……ですが、検証結果はこの前評判とまったく異なるものになりました。

YouTubeでアンケートしたところ、「歩いても走ってもぬれ方は同じ」という意見が大多数に


上空から降ってきて、体に衝突した雨粒の数を計測

歩いた場合は530粒

では、走るとどうなる?

す、少ない……!
- 「歩く」で衝突した雨粒:530個
- 「走る」で衝突した雨粒:244個
歩く場合と走る場合とでは約2倍の差がついており、「走った方が圧倒的にぬれにくい」という結果になりました。シミュレーションを行ったこーじさんによれば、降水量を変えても結果は同じだったそうです。
ところで、この差はどこから生まれたのでしょうか。より詳細に調べるために、今度は人間のモデルに近いサイズの平面を使用して、体上面に衝突する雨粒の数、前面に当たる数を計測しました。

移動速度とぬれやすい場所の関係性を検証。まずは体上面




走って雨にさらされる時間を小さくすると、ぬれにくくなるようです

次は体前面




歩いても走っても、ほとんど一緒
<体の上面に衝突する雨粒>
- 歩く:328粒
- 走る:99粒
<体の前面に衝突する雨粒>
- 歩く:246粒
- 走る:252粒
体の前面のぬれ方は移動速度による影響が小さく、歩いても走ってもあまり変わらない一方、体の上面は、徒歩の方がぬれやすいということが分かりました。おそらく速度が遅い分、雨にさらされる時間が伸びるためでしょう(※)。
※蛇口から出てくる水をコップで受ける場合を考えると分かりやすいかも。水を長時間受けたコップには水がたっぷり入りますが、短時間で引っ込めたコップにはあまりたまりません。
これらの検証結果をまとめると、「雨にさらされる時間を減らすために、走ったほうがぬれにくい」ということになりますが……こーじさんはさらに踏み込んで「急いで傘を買いに行こう」と結論づけています。元も子もありませんが、雨にさらされる時間を減らしたいのであれば、これが最も効果的なはず。

「目的地に着くまでの時間が短くなるほど、頭や肩(体の上面)がぬれなくなる」という結論に。このためには、走って移動速度を上げるのが有効

……でも、頭や肩ってそもそも傘でカバーできるんですよね
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