AIの知性が人間を超える「シンギュラリティ」が訪れた後、ヒューマノイドが人間たちと同じように暮らす世界。SF漫画『AIの遺電子』には、テクノロジーによって変わった世界と、それでも変わらない人間たちの営みが描かれています。
作者である山田胡瓜(やまだきゅうり)さんに、「2018年に漫画を描くということ」をテーマに話を聞いた連載の2回目は、「漫画家の役割の変化」について。胡瓜さんは読者に漫画を届けるにあたって「どうやって魅力をネットに乗せるか」を模索しているようです。

「Twitterなんてやっている暇があるなら……」
――最近はTwitterなどのSNSを使って自ら発信する漫画家も増えました。漫画家に求められる役割が変わってきたという意識はありますか?
胡:
漫画家にはいろんな態度があると思っていて、中でも一番シンプルかつ王道なのが、「つべこべ言わずに全てのパワーを漫画に集中させろ」というもの。「Twitterなんてやっている暇があるんだったら、その時間を使って圧倒的な漫画を描け」というような考え方です。
これは確かにその通りで、自分はこういう姿勢で漫画を描いている人を尊敬します。ただ一方で、Twitter発の漫画が書籍化されてヒットしたり、ファンの気の利いた口コミがバズって認知拡大のきっかけになったりと、ネットで漫画が「動く」時代になってきたのも事実だと思うんです。自分の魅力をうまくアピールできる作家がSNSを有効活用するケースは、今後も増えていくんじゃないでしょうか。
好みの漫画が世間的にはマイナーだったりすることが多いので、出版不況の中でそういうタイプの漫画がどうやったら生き延びられるかなとか考えたりするんですが、今のところは「ネットをうまく活用する」ってのが近道なんじゃないかなと思っています。
――胡瓜さんのTwitterアカウント(@kyuukanba)では、ご自身の作品以上に(?)他の漫画家さんの作品をすすめていることが多いですね。
今は自分の作品もせっせと宣伝していますけどね。他人の漫画を宣伝するのは単純にその漫画が好きで広めたいからです。
漫画家になる以前、ITニュース記者をやっているときに痛感したことですが、頑張っていい記事を書いても、タイトルがイマイチだと全然読まれないし、気を引くタイトルになった途端すごく読まれたりするわけです。中身は一緒なのに。これと同じことが漫画でも起きてる気がするんですよね。せっかくの魅力が単行本を包むシュリンクの中に隠れてしまっていて、「届くべき読者」が知らないってケースが。
なので、そういう作品の魅力をツイートに込めて、それがバズれば、手に取る人がぐっと増えるんじゃないかなと。本当はそういうことを出版社にやってほしいなというのもあるはあるんですけどね。
雑誌離れがどんどん進むなかで、今の時代、「届く」プラットフォームってどこかなって考えると、TwitterとかYouTubeとかAmazonなんじゃないかって。
だから今、漫画家が自分でつぶやいたり、自分自身の影響力で広げていって、本来作品を買ってくれるような人に届けようとするのは、自然なことなんじゃないでしょうか。
(つづく)
ためし読み「AIの遺電子」第29話 トゥー・フィー

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