今季からメジャーリーグでプレイしている大谷翔平選手がすごい。投げても打っても超一流、「ベーブ・ルースの再来」と大きな注目を集めている。
一人二役をこなす大谷選手だが、今回は投げるほうに注目したい。大谷選手は鋭いフォークやスライダーと最速165km/hのストレートで三振を奪うピッチャーだ。この165km/hは日本プロ野球の最速記録である。
日本記録なわけだから、もちろんそうやすやすと165kmは出ないのだが、やりようによっては私たち素人でもそんな球速をたたき出せるかもしれない。

豪速球への足場固め
野球の公式ルールで、ピッチャーはホームベースから18.44m離れた高さ0.254mのマウンドから投げることになっている。
一見微差に見えるこのマウンドの高さが今回の鍵。マウンドが高いと一般に球速は速くなる。実際プロ野球でも、投手が有利な状況を受けてマウンドの高さが低く変更された例がある。
マウンドが高いと球速が速くなる原因としては、球は投げ下ろした方がスピードが出る、落ちる距離が長くなって重力でより加速される、などが考えられる。
ということは、だ。マウンドをめちゃくちゃ高くすれば165kmも投げられるのでは?
一見(実際)間抜けなアイデアだが、どのくらい高くすればそうなるのか計算してみた。
これが俺の万有引力投法
ややこしくなるので、ボールが受ける空気抵抗は考えないことにする。このとき力学的エネルギー保存の法則から、ピッチャーがボールを投げてからキャッチャーが受けるまでの、運動エネルギーと位置エネルギーの和は常に等しくなる。

大谷選手について、
- ボールが手から離れた瞬間に球速が165km/h(=45.8m/s)出る
- ボールは水平方向にリリースされ、マウンドの高さ分(0.254m)だけ落ちてホームベースに達する
とする。細かいところは実際と異なるだろうが、概算するには十分な仮定だ。
一方、やたら高いマウンドから投げる素人についても、球速と高さについて同じ関係が成り立つ。ホームベース地点の球速が同じになるように投げるとすれば、大谷選手の投球と素人の投球を等式でつなぐことができる。ここからマウンドの高さを算出すれば良い。

ここが俺のマウンド
さて、残る仮定すべき変数は「素人の球速」だけ。筆者に関して言うと、高校時代体力テストのソフトボール投げが10mしか飛ばなかった弱肩の持ち主である。投げても平均的な成人男性には全く及ばないと思うので、球速を60km/h(=16.7m/s)とする。大谷選手との球速差は実に105km/h、それを埋めるマウンドの高さは……93m!

18.44m先にそびえる、高さ93mのマウンド……。バッターの位置から見上げたとき、仰角は実に78.6度。マウンドというかビルだ。しかも高層。球はそれより高い角度から落ちてくることになり、速さ以上に打ちにくいことこの上ない。
なお、マウンドの高さは球速が80km/h出せる肩なら81.8m、100km/h出せる肩なら67.6mで済む。済む……?
大谷翔平はまだ23歳。こんなマウンドよりもはるかな高みを目指す彼を応援してやまない。
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