日本人なら誰でも知っているであろう、呪いの儀式「丑の刻参り」。一説には陰陽道から派生したとも言われていますが、実はこの儀式は一種の「集団セラピー」だった――という設定の創作漫画が話題を呼んでいます。
漫画の作者は柏木大樹(@kasiwagidaiki)さん。他にもさまざまな短編漫画を描いており、月に1回(毎月第三金曜の夜に更新)Twitterで作品を公開しています。
短編漫画シリーズ第5話 「刻参りの輪」その1
短編漫画シリーズ第5話 「刻参りの輪」その2
「彼氏に浮気されたので丑の刻参りにやってきました」という主人公。時刻は深夜、真っ暗な森にはコーン、コーンと、主人公の釘を打ち込む音だけが不気味に鳴り響いています。ところがそこへ「こんばんはー」と声を掛ける人物が……!

丑の刻参りは「その行為を誰かに見られると、呪いが自分に跳ね返ってくる」とされており、目撃者を殺さなければ自分が呪われ死んでしまう、と伝わっています。パニックになって声の主に襲いかかろうとする主人公でしたが、実は声を書けた人もまた丑の刻参り中の“同業者”。しかもよく見たら、まわりにも大勢の女性たちが……。実はこの森、丑の刻参りをする女性が大勢集まる場所だったのです。


結局、他の女性たちと一緒に呪いの儀式を行うことになった主人公。しかし、それぞれのスタイルで一心不乱に釘を打ち続ける女性たちの姿を見て、やがて不思議な一体感を覚えるようになります。「…感じる、森に鳴り響く音の一つ一つに、私と同じかそれ以上の、激しくて苦しい思いが込められてるんだ」「ああ…なんだろう…あたたかい…」「そうだ、見ず知らずの人たちと、この森で私たち…今…つながってる…」。


いつしか主人公は、涙を流しながら毒気の抜けた笑顔を浮かべていました。そんな主人公の様子を見た“同業者”の女性も「良い顔してる…」と穏やかな表情に。実は女性は「丑の刻参り研究の権威」で、丑の刻参りの本当の目的は「昔から弱い立場にあった女たちのやり場のない苦しみ、悲しみを癒やす、いわば集団セラピー」で、「目撃者は殺されるというのも、この行為の神聖性、秘匿性を保つための流言」だったというのです。初耳ですけど……説得力あるな!



丑の刻参りは「流言によって表の世界から巧みに隠匿された、悩み苦しむ女性たちをを救うために存在する、古来から続く秘密の儀式」というまさかの新説。もちろんこの漫画はフィクションですが、もしもこのような優しい場所が人知れずあるのだとすれば、それはとても夢のある話ではないでしょうか。
言うまでもないとは思いますが、実際に丑の刻参りを行うと不法侵入や器物破損などの罪に問われる可能性があるため、くれぐれも実行は厳禁です。
漫画提供:柏木大樹(@kasiwagidaiki)さん
(たけしな竜美)
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