かつて中学校では必ず教わるものだったアルファベットの筆記体。現在では習わないのが一般的で、筆者(平成2年生まれ)も活字体しか使えない世代の1人です。
この筆記体を習った/習っていない世代の境界線は、どこにあるのでしょうか。
筆記体を習っていないのは、何年生まれから?
日本の中学校では、1947年から筆記体が必修とされてきましたが、2002年4月施行の学習指導要領では「生徒の学習負担に配慮」したうえで教えるものとされました。「必ず習うもの」から「余裕があったら習う」に変わったわけです。
しかし、この2002年度は、ちょうど完全学校週5日制がスタートした年度。いわゆる「ゆとり教育」で授業数が減っており、筆記体を教える公立中学校は激減したといわれています。その後、「脱ゆとり」への方向転換で授業数は増加しましたが、筆記体教育の方針は変わらず、現在でも習わない子どもが多いそうです。
転換点となった学習指導要領(2002年度施行)が適用されたのは、1989年度以降に生まれた人から。同年は昭和64年、平成元年にあたり、だいたい「中学校で筆記体を習った=昭和生まれ」「習っていない=平成生まれ」という図式になります。

1947年「学習指導要領(試案)」。筆記体は中学1年生で習うものとされていました(国立教育政策研究所より)

2002年度に施行された「中学校学習指導要領」。筆記体を教えてはいけないというわけではないのですが、授業数減少などの影響で扱う公立中学校が激減(国立教育政策研究所より)
「筆記体で書くリットル」にも世代差
また、平成生まれの中にも“筆記体の世代差”があります。例えば、近年はリットルの単位表記には筆記体ではなく、活字体が使われるようになっています。

使われなくなってしまった筆記体小文字のエル
これは、国際的に用いられている単位表現をまとめた「国際単位系」への準拠を目的とした動き。教科書会社・東京書籍は2002年から段階的に移行を進めていたとのことですが、筆者が調べた限り、大きな動きがあったと思われるのは2010年ごろ。
2009年に「義務教育諸学校教科用図書検定基準」の改訂があり、「国際単位系(SI)の単位又はSIと併用される単位がある場合には、原則としてこれによること」とされました。これによって教科書の内容変更が起こり、リットル、メートルなどの表記に活字体が使われるようになったのです。

教科書会社各社が、リットルが「L」になった理由を解説しています(東京書籍より)

教育出版は「教師向け指導資料」として掲載
以上をまとめると
- 昭和生まれは「筆記体を習った世代」
- 平成の早いうちに生まれた人は「リットルなどの単位で筆記体に触れた世代」
- それ以降は「筆記体を習わず、リットルも活字体で書く世代」
ということができそうです。
参考までに言うと、28歳の筆者は、リットルなどの単位で筆記体に触れた世代に該当。個人差はあるはずですが、子どものころは、筆記体小文字のエルを「リットル専用の特殊な記号」と勘違いしていました。他のアルファベットの筆記体が全く分からないため、文字として認識できなかったのだと思います。

図にするとこんな感じ
主要参考文献
- 教員は語学授業で筆記体アルファベットを使ってもよいか?(大学教育ジャーナル/東京農工大学)
- 「リットル」の表記を「L」に変更した理由を教えてください(東京書籍)
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