『エロマンガ表現史』が3月に北海道で有害図書指定を受けた件について、出版元の太田出版が公式サイトであらためて見解を公表しました。

『エロマンガ表現史』書影(公式声明より)
同書の企画意図は「漫画における身体の記号的表現の進化史研究」にあり、「人間の身体を視覚的技術のもとに描写する“エロマンガ”は、最も重要な領域である」と同社は認識。そのために、起源の1つとしての春画を含め、多数の作品を引用の範囲で掲載しています。北海道青少年健全育成審議会はその点を問題視し、「著しく粗暴性を助長し、性的感情を刺激し、又は道義心を傷つけるものなどであって、青少年の健全な育成を害するおそれがあると認められる」を理由に、「有害図書類」に指定しました。
これに対し、同社は「漫画という視覚的表現の解説書である以上、これら実例の掲載は不可欠」と反論。収録図版は研究に最低限必要な点数と大きさに留め、全てモノクロで掲載しており、「これらが“著しく青少年の粗暴性を助長し、性的感情を刺激”するとまでは考えにくいのではないか」と述べています。
同時期に滋賀県で有害指定を受けた『全国版あの日のエロ本自販機探訪記』(双葉社)についても触れ、「この2冊が『有害指定』されたことは、個々の書物が持つテーマや文脈を無視した短絡的な判断がなされ、かつそのような傾向が加速しつつあることのあらわれではないか」と懸念を表明。「題材そのものと、それに対するアプローチを混同することは、一種の思考停止であり、歴史や過去事例の調査研究行為そのものを否定することに等しい」としています。
さらに、作品のどこが「粗暴性」や「性的感情」を助長・刺激するか否かは主観的な問題であり、特定の表現物を公に「有害」だと定義することには慎重な配慮が求められるべきだと主張。にもかかわらず、北海道青少年健全育成審議会は、有害図書指定に至った審議の議事録すら残していなかったといいます。同社は「公的機関による、表現物の内容に関する審議の過程が結論ありきのブラックボックスと化している」と指摘し、「こうした『不健全』な状況に変化が生じることを強く願う」と声明文を結んでいます。

(沓澤真二)
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