現在では一般に、漢字を書くときにパーツの位置を入れ替えると間違いだとされます。例えば「海」のさんずいを右に動かして、「毎シ」のようにすることはできません。
珍しい例では、「部(ブ)」と「陪(バイ)」のように、パーツは一緒なのに左右を入れ替えるとまるで違う漢字になってしまうものまで存在します。

このように、漢字はパーツの組み合わせでできています。しかしよく考えてみると、それならばどうして、同じパーツなのに違う意味の漢字が存在するのでしょう。ここでは、「部」と「陪」を例にとって考えてみましょう。
“あの形”には2種類ある
結論から言ってしまうと、「部」の右側と「陪」の左側は、まったく違うものなので、この2つの字の意味が違うのは当たり前のことです。
2つとも“あの形”で、形に違いは見受けられないように思われます。しかしこれは、省略された形を見ているからであって、もともとは違う形をしていたのです。
「部」の右側の“あの形”は「おおざと」と言い、もともとは「邑」という形をしていました。邑は「むら」と読む通り、村や里といった意味があります。
一方、「陪」の左側の“あの形”は「こざとへん」と言い、もともとは「阜」という形をしていました。現在では「岐阜」くらいにしか使われていないこの字ですが、丘などといった意味があります。
パーツは省略されがち
このように、漢字のパーツはしばしば省略されます。現代の私たちが急いで字を書くときと同じですね。
この結果、まるで違う漢字だったはずの「邑」と「阜」が同じ“あの形”になってしまうというようなことも起きてしまいます。

漢字の意味・成り立ちを考えるときには、現在知られている形ではなく、もともとの形を見なければいけないんですね。
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