三鷹の森ジブリ美術館で企画展示「映画を塗る仕事」展が11月17日から始まります。前回の「食べるを描く。」以来、約1年半ぶりとなる新企画展。16日に行われたメディア向け内覧会のレポートをお届けします。

こんなに複雑なのを手作業で? 宮崎監督「そうだよ」
内覧会では会見が行われ、館長の安西香月さんから展示の説明がありました。企画のきっかけとなったのは2年半前に美術館を大幅修繕したとき。当時展示されていたセル画が劣化してきていたことに気付き、張り替えのためスタジオを訪れたところ、手の混んだセル画を大量に発見。

着色作業は今でこそデジタルで行われますが、かつてはセル画を用いた手作業で行われていました。おまけにアニメーションの場合1枚だけ塗れば良いというわけではなく、特にセル時代には何枚も塗る膨大な手間暇が必要でした。こんなに複雑なものを手で塗っていたのかとその場にいた宮崎駿監督に訪ねたところ、「そうだよ」とあっけなく答えられた衝撃が「映画を塗る仕事」展の契機になったのだと、安西さん。

中央に三鷹の森ジブリ美術館館長の安西香月さん。左右には協賛企業を代表して丸紅新電力 代表取締役社長の西山大輔さん(写真左)と、日清製粉グループ本社総務本部広報部長の町田英樹さん(写真右)
会見では色彩表現の豊かさを示す例として、「となりのトトロ」に登場するネコバスについて解説がありました。アニメでは時間経過などを表すためにシーンごとに色が作られますが、今回取り上げられたのはネコバスの「黄昏色」「夕方色」「街灯色」。

ネコバスのパネル。これが「黄昏色」「夕方色」
「黄昏色」は妹のメイが行方不明になり、途方に暮れるさつきの元にネコバスが走ってくる、ほんのささやかなシーンのために考えられた色。黄昏時には日が落ちきっていないため、ネコバスは通常よりやや暗い色にはなっているものの、車内の電気も付いていません。続いての「夕方色」はメイが見つかったころの時間。だいぶ陽の光が弱くなっていることを表現するため、身体の色がさらに濃くなり、車内の照明も付いた状態に。
そして最後に紹介されたのが「街灯色」。夜にお父さんをバス停で待っていて、なかなか来ないというシーンで用いられた色です。やってきたネコバスが街灯の光を浴びるため、いつもの茶色ではなく、やや緑色を帯びた独特な色味で塗られています。単体で見ると違和感がありますが、背景画に合わせると違和感がなくなるのだから不思議です。

こちらが「街灯色」
企画展では上記のネコバスの「時刻によって変わる色」の解説パネルはもちろん、「天候」「水の表現」「特殊な光」「リアリズムの追求」など、テーマごとにピックアップされたパネルを37枚展示。実際のセル画も196点が展示されるなど、濃密な内容になっています。





「映画を塗る仕事」展は 11月17日〜2019年11月(予定)まで開催。入場は日時指定の予約制で、毎月10日10時から翌月入場分のチケットを販売。チケットはWebのほか、ローソン店頭のLoppiからも予約可能です。

常設展示室にある色彩関連の展示も、今回の企画展の後に見ると新たな発見がありそうです
(C)Museo d'Arte Ghibli (C)Studio Ghibli
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