「警視庁」と「警察庁」。どちらも、ニュースや推理小説などでよく目にする組織です。
似た名前ですが、何がどう違うのか、分からない方も多いのではないでしょうか。
「警視庁」は東京都の警察、「警察庁」は全国の警察のまとめ役
日本の都道府県では、それぞれの公安委員会の下に「都道府県警察」が設置されていて、各地の警察業務を担っています。大阪府の警察は「大阪府警察」、北海道の警察は「北海道警察」であり、他県も全て「○○県警察」という呼び方です。
一方で、東京都は「東京都警察」ではなく「警視庁」と呼んでいます。
庁とつくと、「気象庁」のような国の機関が思い浮かびますが、「警視庁」は国の機関ではありません。他の道府県警察と同じように、各都道府県の公安委員会の下にある組織で、それぞれの管轄区域内で業務を行っています。
各地の警察本部をまとめるのが警察庁
警視庁が東京都の組織なのに対して、「警察庁」は国家公安委員会の下にある、れっきとした国の機関です。
何をしているかというと、各地の警察の連携の手助け、大規模テロ対策などの、国としての警察業務や、警察制度自体に関わることなどです。複数の都道府県警察にまたがるようなことを、警察庁が調整しているのです。
まとめると、警視庁は「東京都内を管轄する警察」、警察庁は「全国の警察の調整役」といえます。

なぜ東京都だけ「警視庁」?
そもそも、ほかの都道府県は「○○県警察本部」なのに、なぜ東京都だけ「警視庁」なのでしょうか。はっきりしたことは分かっていませんが、明治時代に警察制度を導入したときの経緯が関わっていると考えられます。
東京の警察は特別にしよう
もともと、明治の初め頃には「ポリス」に近い言葉として「警察」「警視」「警保」「邏卒(らそつ)」などのさまざまな言葉が入り交じって使われていました。
そこに、ヨーロッパ各国を視察した川路利良(かわじ・としよし)という人物が、さらに優れた警察制度を作るべく、「首都である東京に、内務省直属の警察を設けるべきだ」といった内容のまとまった提案を行いました。

「東京警視庁」の誕生
この建議を1つのきっかけとして明治7年に設置されたのが、現在の警視庁のおおもとである「東京警視庁」です。おそらく「首都・東京の特別な警察」ということから、比較的広く使われていた「警察」とか「警保」でない言葉が採用されたのでしょう。
これ以降名前や制度の変更を何度か挟みつつ、首都・東京を担当する警察の名前として「警視庁」が次第に浸透し、今に至ります。
おわりに
警視庁と警察庁は非常に紛らわしいのですが、都民やミステリファンにとっては、「警視庁捜査一課」といった部署を含めた言い回しに親しみもあるでしょう。現状のままだと、「警視庁」が「東京都警察」などに改称されることはなさそうです。
参考文献
警視庁創立100年記念行事運営委員会(1974)『警視庁百年の歩み』
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