突然だが、パンダについて想像してほしい。白黒で、丸っこくて、竹とか笹とかばかり食べていて……。
ここでひとつの疑問が湧く。竹ってカロリーは低そうなのに、どうしてパンダはあの丸っこい体型を維持できているのか?

今回は、「一見ダラダラしているように見えるが、パンダはパンダなりに苦労しているのだ」というお話。
質より量の食生活
草しか食べない動物でイメージしやすいのはウシだろう。ウシは消化器に微生物を飼っていて、草を分解させた微生物を通して栄養を得ている。そのような仕組みを持っているから、草だけ食べても生きていられるのだ。
近年、パンダの消化管内にも繊維質の消化を助ける微生物が存在するという研究成果が発表されたが、他の草食動物ほど効率的に消化吸収できているわけではない。竹ばかり食べている姿で勘違いしやすいが、パンダはクマの仲間で、肉食もする雑食なのだ。

腸の長さも、特に植物を消化できるように進化している訳ではなく、そのため竹を食べてもその2割ほどしか消化できていない。
栄養がないので、パンダは生きるためにひたすら食べまくる。パンダは1日の半分(12時間)以上を、10kg以上の竹や笹を食べるのに費やす。この大量の餌から2割をエネルギーとして、やっとあの丸い体形を維持できているのだ。

「敵がいない代わりに一生竹しか食べられないボタン」押す?
なぜこんな苦行をするに至ったのか、というと、パンダが「敵がいないところで生きる」という生存戦略をとっているから。竹しかない環境ならば、餌を取り合うことも自分が食べられることもない。
上野動物園のジャイアントパンダ情報サイトUENO-PANDA.JP」には、
ジャイアントパンダは、天敵や餌の競争を避けて、中国山岳地帯の奥地を生息の場としました。そこで冬でも枯れず1年を通し豊富に得ることが出来る食物がタケ・ササだったのです。ジャイアントパンダは、生存競争を避け、身を守る環境で暮らすために、食べるものは無理をする生活を選んだ動物です。
と書かれている。
要するに、パンダは無理をして竹を食べている。
敵がいない生活と引き換えに、栄養にならない餌を食べ続ける人生、いやパンダ生を強いられている。弱肉強食の自然界を生きるのに楽な道はないのだなあ。
【2019年3月5日19時半 追記】記事初出時、「ウシは消化器に微生物を飼っていて、草を分解させた微生物を通して栄養を得ているが、パンダにはそうした仕組みがない」と記載していましたが、誤りを含む内容だったため、本文の内容を修正しました。
参考文献
パンダ大百科|上野動物園のジャイアントパンダ情報サイト「UENO-PANDA.JP」
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