昨今、首都直下型地震や南海トラフ地震の脅威が盛んに叫ばれています。いつ“その時”が来てもいいように、日頃から備えを万全にしておきたいところです。
非常事態のとき、私たちの助けになるのが非常口のマーク。おなじみの白地に緑のピクトグラム、いたるところについていますよね。

ところで、どうしてこのマークは緑色なんでしょうか?
緑が赤(=炎の色)の補色だから
答えはずばり、「緑が赤(=炎の色)の補色だから」。

この図は「色相環」といい、色合いを環状に配置して体系化したものです。正反対の位置にある色同士を適当な割合で混ぜると、光の場合には白、絵の具なら灰色になるように設定されています。
このときの向かい合う2色の関係を「補色」といい、互いに引き立て合う効果を持ちます。緑色なら、燃えさかる火(赤色)の中でもはっきりと確認できるというわけです。
ポインセチアの花がちょうどこの2色のコントラストですね。

視認性が低かった「非常口」
現在のマークができるまでは、「非常口」と文字で記しただけの武骨なデザインが多く見られました。

この非常口の視認性の低さが原因で、1972年に起きた「千日デパート火災」(大阪市)や、翌年の「大洋デパート火災」(熊本市)は、多くの死者を出しました。文字だけの表示では、いくら大きくしたところで、煙に紛れて見えなくなってしまうという大きな問題があったのです。
新たなマークの考案、日本から世界へ
そこで新たなデザインが公募され、小谷松敏文・太田幸夫らの案が採用されました。現在、私たちがよく知る形のマークです。

このマーク、1987年には、国際標準化機構(ISO)によって国際規格に指定されました。
非常口を示す文字やピクトグラムのデザインは、消防法施行規則に基づく「誘導灯及び誘導標識の基準」で定められています。
れっきとした国際規格であるので、EU諸国やオーストラリア、カナダなどでも類似の表示が用いられています。海外旅行に行ったときでも安心ですね!
おわりに
火事にしろ何にしろ、災害にはあわないのが理想ですが、いつ何が起こるかは分かりません。もしもの時には落ち着いて行動したいものです。冷静な心が残っていれば、きっと緑色に光るランプがすぐに目に入ることでしょう。
参考文献
日本火災学会誌 Vol.57 「誘導灯表示面のピクトグラフについて」
照明工業会報no.12:技術コラム:誘導灯の歴史 「黎明期から現在まで」
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