皆さんはこのようなフレーズを聞いたことはありませんか?
「法律により10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が課せられます」
これは映画の上映前に流れる「NO MORE 映画泥棒」でのアナウンスです。ニュースでも「○年以下の懲役又は○万円以下の罰金」はよく耳にしますね。
しかし、このフレーズでは「1000万円以下」などと上限は述べられていますが、下限は述べられていません。1200万円がありえないことは分かりますが、1000円や100円はどうなのかは分からないのです。
極端な話、「罰金1円」などということがありえるのでしょうか?
基本的には1万円以上
犯罪に対する刑罰を定めている刑法には、このような条文があります。
第15条 罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。
これは罰金の下限について一般的に定めたもの。「10万円以下の罰金に処する」など、法律のなかで下限について定められていないものに関してはこの条文が適用されるので、「1万円以上10万円以下の罰金」という意味になるのです。

減軽されることも
しかし、先ほどの条文のただし書きには「1万円未満に下げることができる」とあります。どこまで下げられるのでしょうか。
減軽について定めた刑法68条には「罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の2分の1を減ずる」とあります。ここでいう多額は上限、寡額とは下限のことです。
では罰金の下限は、1万円の2分の1である5000円……かといわれるとそうではありません。
減軽2回で最低2500円
減軽にはまず、「法律上の減軽」というものがあります。これは法律で定められている自首や未遂などの場合の減軽です。ただし法律上の減軽事由が複数あるときでも、減軽は1回限りとなっています。
この法律上の減軽に加え、裁判所は「酌量減軽」ができます。これはよく耳にするいわゆる「情状酌量の余地」による減軽です。この酌量減軽も1回までですから、あわせて2回の減軽が限度となります。
したがって最大限の減軽がなされた場合、罰金の下限は1万円に2分の1を2回かけた「2500円」となるのです。
どんなに少額であっても罰金は罰金。犯罪は犯罪です。できるだけ罰金とは無縁の生活を心掛けたいものですね。
参考文献
大塚仁ほか(2015)『大コンメンタール刑法』青林書院

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