Twitterで「ロボット工学の教科書が面白すぎて集中できない」と紹介された専門書の挿し絵が、確かにぶっ飛んでいて面白すぎます。ロボットが力余ってドアノブをもぎ取ったり、家人にボディブローをかましたり、ギャグ漫画にしか見えない。



マニピュレータがうまく制御できず、やらかしまくるロボ。モニターとして一緒に暮らしている少女の、達観したような表情がまたおかしい
書内で暴れているロボットは、『イラストで学ぶ 人工知能概論』で初登場した「ホイールダック2号」。名前の由来は見た目がアヒルに似ているからですが、実はペンギン型です。

Twitterで話題になったのは、同書の姉妹書にあたる『イラストで学ぶ ロボット工学』。マニピュレータが追加され、家庭用ロボットとして発展したホイールダック2号の姿が描かれています。ところが新仕様の制御をするうえで新たな問題が発生。それで前述のような暴走を起こしているわけです。

マニピュレータの追加で重心などが変わり、従来の設定のままでは移動が困難に

新たにマニピュレータの制御設定も必要に
挿し絵のインパクトがありすぎて冗談のようにも見えますが、本の内容は至って真面目。ムチャクチャな失敗シーンにしても、「制御がうまくいかないと惨事になりますよ」と、分かりやすく伝えているといえます。この楽しみながら学べる専門書のアイデアはどのようにして生まれたのか、編集を担当した講談社サイエンティフィクに話を聞きました。
ホイールダック2号の暴走っぷりを考案したのは、監修者の谷口忠大博士(立命館大学教授)。そのアイデアを、著者の木野仁博士(福岡工業大学教授)とイラストレーターの峰岸桃氏で固めているのだそうです。
ユーモラスな内容は谷口博士の趣味も影響してのことですが、根本にあるのは「(制御などが)できないと何が困るか?」を学び手に理解してもらうことが大切との考え。問題提起をしたうえで、同書のコンセプト「学んで知識をつけることは『問題解決』できるようになることである」へつなげていくのが狙いです。



こうした意図は多くの読者に受け入れられたようで、「思ったより本格的」「分かりやすい表現で難しい内容をやさしく解説してくれる」「ロボット工学の基本がよくまとまった本」など、好意的な反応が多く、刊行以来2度の重版を果たしたとのこと。教科書としても全国十数校の高専や大学で採用されているそうです。
シリーズ第3弾として『イラストで学ぶ制御工学概論』を準備中とのことで、ホイールダック2号の活躍(?)はまだまだ続くもよう。峰岸氏が手がけたLINEスタンプのように専門書の枠を超えた企画も。同社としてはコラボレーションもウェルカムらしく「プラモ化、アニメ化などのオファーをお待ちしております!」とのことでした。


取材協力:講談社サイエンティフィク
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