
画像は国立天文台公式サイトより
こんにちは、ライターのてんもんたまごです! 先日から「史上初、ブラックホールの撮影に成功」の話題でにぎわっていますね。でも正直なところ、こうも思いませんでしたか?
「一部しか映ってないんじゃない?」
「なぜドーナツ型なの?」
「つまりなにがすごいの?」
「そもそもブラックホールってどんな天体だっけ?」
あの画像、実は映っている部分というより「映ってない部分があること」がすごかったのです。



ブラックホールってなんだっけ?
ブラックホールとは、きわめて大きな質量が、点ほどの大きさも持たないほどに小さく縮んでできる天体です。
ブラックホールはあまりに強い重力を持つため、ものが中心に向かって落ちる速度が光速に達する範囲があります。この範囲には「シュバルツシルト半径」というカッコいい名前がついており、さらにその境界面は「事象の地平線」とも呼ばれ、ブラックホールの大きさを表します。

「ブラックホール」とは、「無限に小さく縮んだ質量の点」と、この「事象の地平線」をセットにして呼んだ名前だったのです。
「ドーナツの穴」はどうなっているの?
ブラックホールには「観測できない部分」があります。というのも、「事象の地平線」内では「光のつぶ」すらも落ちて出てくることができないので、観測することができないのです。
「事象の地平線」の内側は見えないけれど、光に囲まれていればブラックホールの「陰」が見えるかも? そしてその「陰」は、質量が大きいほど実際の事象の地平線より大きく見えるかも? と、理論物理学では予測されてきました。

実際に史上で初めて撮影に成功すると、なんと「陰」の様子は驚くほど予測通り!
つまりこのシュバルツシルト半径よりも大きく見えているブラックホールの「陰」こそが「ドーナッツの穴」の正体だったのです。
そしてこのブラックホールの「陰」には「ブラックホールシャドウ」というこれまたイカした名前がついています。
じゃあ「ドーナツの光の部分」はなに?
それでは、このブラックホールシャドウを浮かび上がらせてくれている「光の輪」の正体はなんなのでしょう?
これはブラックホールの周囲を飛び交う光が、ブラックホールの重力によって光の進路がねじ曲げられることで、光の輪に「見える」というもの。
ブラックホールに近づきすぎた光は、ブラックホールを周回しながら吸い込まれてしまいます。一方で、一定の距離よりも遠い光は、ブラックホールの重力による時空の歪みで、進行方向が曲げられてしまいます。
これによって本来地球に来ないはずの光が地球に届き、ブラックホールシャドウを浮かび上がらせているのです。


つまりどういうこと?
一般相対性理論では、ブラックホールは「観測できない球面」と「質量の点」で表現される天体だとされてきました。
また、ブラックホールのそばに明るく光るものがあれば、事象の地平線が実際より大きく見える真っ黒な部分「ブラックホールの陰(ブラックホールシャドウ)」が見えると理論的予測がされていました。
ブラックホールの存在自体はほかの方法でも観測されていましたが、視覚的にもっとも迫った姿「ブラックホールシャドウ」そのものは見ることができていませんでした。
そんな中、今回の観測結果により、ブラックホールが本当に「観測できない球面」を持つことが実証され、ブラックホールシャドウの撮影に成功! しかもその姿はほぼ理論的な予測の通りでした!
ブラックホール画像の見どころは、映っている部分というよりも映っていないブラックホールの「陰」の部分だったのかもしれませんね。
ブラックホールシャドウの様子をよく調べれば、ブラックホールの質量や性質を知ることができます。今回観測した楕円銀河M87だけでなく、ほかの巨大ブラックホールの「陰」も観測することで、ブラックホールの特徴がどんどん研究されていきます。
ブラックホールからはまだまだ目が離せませんね!




参考文献
- NAOJのニュースリンク
- NAOJの光子球の解説ムービー
- シリーズ現代の天文学8 ブラックホールと高エネルギー現象
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