2019年5月30日の株式市場で、ヤマト(東証1部)が乱高下し、終値では前日比24円高(+4.64%)の541円まで上昇しました。同社は群馬県前橋市に本社を構える空調設備や給排水設備などの管工事が主力の企業ですが、直近で特に材料はなく、この日のニュースで注目された同じ名前の別の会社と勘違いされたのではないかという見方があります。

この日午前、白血病の治療で重要な「造血幹細胞」を、コンビニでも買える液体のりで大量に培養することに東京大学などのチームが成功した──というニュースが流れました(朝日新聞の記事)。
報道で取り上げられた液体のり「アラビックヤマト」を販売するのは、さまざまなのり製品で知られる「ヤマト株式会社」(東京都中央区)。1899年(明治32年)創業の老舗ですが、非上場です。
こうした材料が大好きな一部の投資家が、同じ名前の上場企業「株式会社ヤマト」に飛びついたのかもしれません(「前(株)」と「後(株)」の違いはあるのですが)。ヤマトの株価は午後の取引で上がったり下がったりを繰り返し、出来高は26万2100株と、前日から9倍近く増えています。

勘違いだったのかどうか、本当のところは不明ですが、Yahoo! ファイナンスの掲示板には、「市販のりが白血病の救世主になればいいね」といった投稿があり、Twitterでも間違って買ったという人の報告がありました。
勘違いが株価に影響するケースはたまにあります。2018年9月には、フィリピンでCATV向け通信回線を提供するアイ・ピー・エス(東証マザーズ)が好材料で上昇した際、同時に情報システム開発会社のアイ・ピー・エス(東証JASDAQ)も上昇しましたが(会社四季報ONLINEの記事)、これは勘違いだったとみられています。
液体のりの成分であり、造血幹細胞の増殖に威力を発揮した「PVA」(オリビニルアルコール)はクラレ(東証1部)が世界最大手のメーカー。クラレもこの日、31円高(+2.51%)の1262円で取引を終えました。

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