小学生のころ、女子だけが別室に呼ばれ、生理について説明を受ける日があったのを覚えているでしょうか。記者の場合、女子がナプキンの使い方などを教えられている間、男子は学校の中にある畑の世話に駆り出されていたと記憶しています。
しかしよく考えると不思議です。自分の身に起こらないことなら知らなくてもいいのでしょうか? そうではないはずです。身近な相手を思いやるためにも、男子も生理について知っておく必要があります。

生理をひとごとにしない性教育
アクロストンの「男子のための生理教室」
「子どもたちに楽しく正しく性の知識を伝えたい」――そんな思いから「男子のための生理(月経)教室」を開いたのが、医師夫婦によるユニット「アクロストン」です。結成の背景は、子どもたちへの性教育を考えたことだったといいます。
「そもそもは私たちの子ども(10歳、8歳)に楽しく性教育をしたいと思ったのが結成のきっかけです。子どもが簡単にスマホやタブレットでネットにアクセスできる今、心の準備をせずにHなマンガやAVの広告などを目にすることがあり得るので、その前に楽しく正しい性の知識を伝えたいと考え、活動を始めました」(アクロストン/以下同)

生理中の身体がどうなっているのか、女性以外も知っておく必要があります
アクロストンの「男子のための生理(月経)教室」は、公立小学校の5年生と6年生の男子を対象に行われました。これまでも保健の授業を担当したり、性教育のワークショップを担当することはあったものの、このような教室を開催するのは初めてだったそうです。
「教室を開催するに至った直接のきっかけは、女子生徒がワコールの『ツボミスクール』(※1)に参加する時間、「男子生徒達に何か授業をしてください」とお願いされたことです。もともと4年生の性教育を含む保健の授業を数時間担当していたため、信頼していただいて授業を任されたのだと思いますが、まさか生理教室を開催するとは学校側も予想していなかったと思います」
※1……ワコールが小4〜中2の女の子とその保護者を対象に開催している教室。思春期の身体の変化や下着の選び方について教える。
「男子のための生理教室」プログラム
教室の流れは以下のようなものです。最初に生理の基礎知識を確認したあと、男子が生理について学ぶ必要性を伝えます。
「ただ生理(月経)の話をすると『なんで男子に女子の話をしてくるんだ? 関係ないじゃないか!』と思う生徒も出てくることが予想されたので、なぜ男子も自分の体には起こらない生理現象である月経について知ったほうがよいのか、丁寧に説明しました」

ナプキン、タンポン、月経カップ……生理が来る人でも全部使ったことがある人は少ないかも?
そしてメインとなるのは、「大地震が起き、小学校にたくさんの人が避難している」という状況設定で、生理用品を必要な人に適切に配るシミュレーションゲームです。子どもたちは班ごとにナプキン、タンポン、月経カップなど、さまざまな生理用品を渡され、「どうやって使うもの?」「これが必要な人はどんな人?」などの設問に回答していきます。

ナプキン
子どもたちは自らパッケージを熟読し、わからないことを質問しながら、最終的にはみな使い方や名前を説明できるようになりました。ナプキンをいくつ配るべきか、という質問には「大体5時間おきに交換だから一日5個必要。5から7日続くとして25から35個」としっかり計算して答えた班、「余裕をもって少し多めに渡す」と回答した班など、渡す相手のことを真剣に考えた答えが出たそうです。
アクロストンのお2人は、実はもともと男女わけて行う性教育には否定的でした。お互いの身体についてお互い理解しあう必要があるためです。しかし同性だけでワークショップを行うことにより、性教育により主体的に参加できるようになる可能性も大いにあると言います。
「以前4年生の授業のときに生理用品を持って行ったのですが、男子生徒も興味を持って近づいてくるものの、女子が色々と手にとっている輪には入りづらそうだったのを見ていたので、男子が思う存分手に取って、自分たちで考えて体感できるワークになるよう工夫しました」

月経カップは水で洗うと何度も使えます

タンポン
より開かれた性教育へ
一方、家庭内で性教育を行う場合は、どのような配慮が必要なのでしょうか。
「最も大事なことは『性の話で聞きたいことがあったら、この人(親・保護者など)に聞いてもいいんだ』という安心感を子どもに与えることです。
子どもがきいていくる性教育に関わる質問は『どうして赤ちゃんがうまれるの?』『なんで女の人にはおちんちんがついてないの?』など、とっさに答えるのが難しい場合もあります。その場合は即答する必要はありません。ただ、『今忙しいから』などとごまかさずに、一緒に考えたり、調べたり、『あとで答えるね』と約束して数日後に答えてあげるなど、性の話をタブーにせずに、家庭内で信頼して話せる空間を作っていくことが大事だと考えています」
今後やってみたい取り組みについて尋ねると、「3歳頃〜小学2、3年生向けのワークショップで使用するシール絵本がちょうど完成したところです。まだ自作の域を出ていないので、より多くの方が手に取ることができるように出版できたらいいな、と思っています。あとは性教育のボードゲームを作ってみたいです」とのことでした。アクロストン流の開かれた性教育は、子どもたちの未来を変えるのかもしれません!
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