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夜の街を歩く妖怪パレードの写真が、「雰囲気ある」「幻想的」「実際に見てみたい」と話題になっています。これは大人も圧倒される迫力……!
かわいいの範ちゅうに収まらない妖怪たち。もちろん矢杉さんは「妖怪ウォッチ」もリスペクト
フォトグラファーの矢杉佳一郎(@KeiichiroYASUGI)さんが「本物志向」「大人の方が楽しめるかも」「泣き叫ぶ子供もおります」とパレードの写真を投稿。“本物”が混ざっていても気づかなそうな本格的な仮装パレードの様子は、Twitterで10万件を超える「いいね」を集めました。
パレードの正体は、大将軍商店街(京都市上京区)を妖怪の仮装で練り歩く「一条百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)」。2019年は10月19日に開催されました。

夜の大将軍商店街を妖怪に扮して練り歩く(画像提供:矢杉佳一郎(@KeiichiroYASUGI)さん)

「見越し入道」子どもじゃなくても、夜遭ったら泣いてしまいそう(画像提供:矢杉佳一郎(@KeiichiroYASUGI)さん)

「本当に人間入ってる?」と思うほど精巧な造り(画像提供:矢杉佳一郎(@KeiichiroYASUGI)さん)

なんとも言えない表情の「鬼女」(画像提供:矢杉佳一郎(@KeiichiroYASUGI)さん)
ありさ丸(@kahiya)さんが投稿した動画も注目を集めました
このユニークなイベントは、いったいどんなきっかけで行われるようになったのか。そして百鬼夜行だけに、妖怪は100体いるのか。大将軍商店街「一条妖怪ストリート」のプロデューサーであり、嵯峨美術大学の専任講師でもある河野隼也(こうのじゅんや)さんにお話を聞きました。

たぶん人間(のはず)! プロデューサーの河野隼也さん(画像提供:大将軍商店街、以下同)
はじまりは商店街のピンチから
「一条百鬼夜行」が行われる大将軍商店街は、およそ400メートルにわたって商店が並び、市内北西部の商業地として発展してきました。しかし近くに大きなスーパーマーケットができてから、客足が遠のいてしまったそうです。
商店街の人たちは危機感を持ち、商店街にある食堂に通う歴史に詳しい常連さんの「かつて、大将軍商店街を通る一条通りで、百鬼夜行という妖怪の大行列が行われていた」という言葉を頼りに、「妖怪ストリート」と銘打って、商店街の活性化を図ります。そして2005年、商店街にある大将軍神社の秋祭りの前夜祭で、「妖怪仮装行列」をすることに決めました。

古くなって捨てられた道具が、人間を恨み妖怪化
「当時、僕は嵯峨美術大学の学生で、町おこしの取材のため大将軍商店街を訪れたのですが、商店街の人から話を聞くうちに、スタッフとして参加することになりました」(河野さん)
子どもの頃から妖怪好きだった河野さんは大学の後輩を30人集め、妖怪の衣装やお面を制作。当日は妖怪の仮装をして歩きました。

京都の一条通りを歩く、百鬼夜行に
100人を越え、増え続ける参加者
妖怪仮装行列は第1回目から大盛況。メディアに取り上げられ話題となりました。翌年の2回目から「一条百鬼夜行」という名前になり、2008年の第4回目からは嵯峨美術大学の学生だけでなく、一般の人も仮装行列に参加できるように。2009年からは妖怪をテーマにしたアートフリーマーケット「モノノケ市」も開催されるようになりました。

知名度や人気の高まりで、公募制が始まった2008年。
「回を重ねるごとに『私たちも参加したい』という人が増えていったので公募制にしました。第5回(2009年)から参加者は100人を超えました。第15回の今年は約130人です」(河野さん)

マスコットキャラクター「夜行童子」。百鬼夜行を復活させるべく暗躍しているという
ド迫力の百鬼夜行はこうしてできた!
さて、子どもが泣くほど迫力のある百鬼夜行の仮装行列はどのようにつくられたのでしょうか。
「一条百鬼夜行は室町時代にできた『付喪絵巻(つくもえまき)』という物語をモデルにしているので、もともとの古風なイメージを大事にしたいと思いました」(河野さん)

妖怪サークル「百妖箱」は、お面や衣装の製作、仮装行列でも大活躍
一般参加者はアニメのコスプレ風の仮装が多い傾向なので、行列の雰囲気を統一するため、2008年に河野さんが立ちあげた嵯峨美術大学の妖怪サークル「百妖箱」のメンバーが、伝統的なスタイルの妖怪の仮装で参加し、全体のバランスを取っているとのこと。「百妖箱」はお面や衣装も製作しています。

行列全体の雰囲気に統一感を持たせるため、参加者は事前に「妖怪度審査」を受けるそうです
また、「百鬼夜行」だけに参加者は100人以上になるようにしていて、定員は120人。「百妖箱」のメンバーで人数を調整しているのだそうです。

「百妖箱」が手掛けた衣装
長く参加し続ける人、他府県から駆けつける人
「一条百鬼夜行」に参加するのは「百妖箱」の他、立命館大学をはじめ関西の学生の和太鼓サークル「和太鼓ドン」のメンバーが演奏しながら参加者と一緒に歩きます。一般の参加者は大人が多く、親子で参加する人もいます。

歩く人も、見る人も百鬼夜行をエンジョイ!
「小学生から参加していた大阪の子が、成長して大学生となり『百妖箱』のメンバーとして運営に携わってくれています」(河野さん)
他府県の参加者もおり、2019年は「酒天童子の出身地」新潟県燕市から鬼の仮装で参加した人も。「実は9月の末、燕市で行われた『越後くがみ山酒呑童子行列』で『百妖箱』が作った衣装を使ってもらえたので、妖怪による町おこしのコラボになったんですよ」と河野さんは語ります。

今年(2019年)の参加者、勢ぞろい。右端に「酒呑童子行列」の赤いのぼりが
商店街の「ピンチ」とは……? 「一条百鬼夜行」は見られなくなるのか
ところで、今年の「一条百鬼夜行」ポスターには「主催の大将軍商店街がピンチ」と書かれており、どのようなピンチに見舞われているのか気がかりです。果たして、今後も百鬼夜行は見られるのでしょうか。

「絶滅危惧種 百鬼夜行」! ただごとではない雰囲気がひしひしと伝わります
「イベントの運営は商店街の負担が少なくなく、毎年赤字でした。今年から僕も商店街に『京都一条妖怪雑貨 百妖堂』(妖怪グッズショップ)を構えたのですが、商店街の一員として参加することで、より財政的な厳しさを実感するようになったんです」(河野さん)

募金で「一条百鬼夜行」をサポート! これからもずっと怖がらせてね
そこで、2018年から行っていた募金を、ポスターでも呼びかけるなど本格化。おかげで2019年は赤字を回避できたといいます。2020年の「一条百鬼夜行」は10月17日に開催される予定。これからもずっと、たくさんの人を楽しませたり、怖がらせたりし続けてほしいです。
大将軍商店街:Webサイト、大将軍商店街_妖怪ストリート公式(Twitter)
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