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声変わりしない声にコンプレックスを持った男子高校生を描いた漫画「翅の音」が、心に響いてくる物語で読者を魅了しています。作者は漫画家の三輪まこと(@miwa_tiluca)さん。
先天的な原因で変声期がなく、高校3年生になっても高いままの声を気にしている六丸。ふとしたきっかけで、定時制の夜間授業で彼の席を使っている鳴瀬と知り合います。ある日、鳴瀬が捕まえたコオロギを逃がす場面に行きあった六丸。彼の声に関心を示し、聞きたがる鳴瀬にいら立ちを感じます。

その後、2人は机の引き出しに置き手紙をしてやり取りするように。ラーメン屋や教師のかつらなど他愛ない話題を交わす「声を出さない会話」に六丸は少しの心地よさを覚えていきます。1カ月がたったころ、六丸は鳴瀬がバンドのボーカルをしていることを知ります。ポリープの手術を受け、バンドはやめたほうがいいと医師に言われていることも。

なぜ自分に構うのか。そう問う六丸を、鳴瀬はコオロギを逃した河原に連れてきます。コオロギの鳴き声が響く河原に佇む2人。鳴瀬は、逃していたコオロギはペットのエサに捕まえたものだったこと、鳴き声を聞いてエサにするにはもったいないと思って逃したことを話します。六丸と初めて会ったときも同じことを思い、彼の声をもっと聞きたいと思ったことも――。
自分の声にコンプレックスを持ち、声を出したくない六丸と、歌いたいのに歌えなくなるかもしれない鳴瀬。対極にある2人をコオロギの音色がつなぐ、美しい構図が感情を揺らします。前半の手紙のやり取りという静かな交流から一転、終盤は河原に響き渡るコオロギの鳴き声が聞こえてきそうなほど音に満ちた場面に。転換の妙にもうならされる作品です。
三輪まことさんは現在、電子書籍サイトで『わるいあね』を配信中。7年前に実の弟を誘拐し、家族の崩壊を招いた姉の前に、突然弟が現れるという物語です。
「翅の音」






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