空き家に忍び込んで過ごす女子高生を描いた漫画「スミカの棲家」が、心に響く内容で反響を呼んでいます。作者は漫画家のうたたね游(@remon__pie)さん。
不法侵入と知りながら、放課後に時折他人の空き家に忍び込んでは過ごしているスミカ。ある日、忍び込んだ空き家でひまりという少女と出くわします。その家はひまりの亡き祖母のもの。2人は仲良くなり、思い出の詰まったその家で一緒に過ごすようになります。

スミカが他人の家で過ごすのは、自分の家には何もないから。離婚をきっかけに、母が思い出の物を全て捨ててしまったのです。ひまりの祖母の家に、昔の我が家を重ねるスミカですが、家は取り壊されてしまいます。

「他人の家の借り物の思い出に触れてる時だけ、自分の本当の家に帰れた気がして息ができたのに」――そう語るスミカに、一緒にこの家を覚えていてほしいと、思い出の品を贈るひまり。スミカはそれを受け取って“自分の家”に帰り、母親に自分の気持ちを伝えます。
家は寝起きし、生活する場所。でもそれだけではないことが感じられるお話です。作中の「家は人の思い出をつめた箱」という言葉がじんわりと心にしみます。箱はあっても中身(思い出)がなかったスミカにとっては、思い出の詰まった他人の家が心地よかったのでしょう。そんな彼女が迎えた結末は希望を感じさせ、思い出を大切にしたいと思わせるものとなっています。
読者からは「おばあちゃんの家を思い出して泣いた」「20年以上住んできた実家に物流倉庫が建つ事になり家を出ていくことになった(中略)思い出ごと帰る場所が消えてしまうのって自分の存在が半分消されるみたいで悲しくて怖い」と自身の体験を思い出すコメントや、「今の家もそのうち取り壊して新しい家に変わるかもしれないけれど、その今の家の思い出は残しておきたい」「思い出のたくさんある居心地の良い家作りを考えるきっかけになりました」など思い出づくりをしようというコメントが寄せられています。
「スミカの棲家」は『月刊コミックゼノン』に読み切りとして掲載され、現在はWeb漫画サイト「ゼノン編集部」に掲載中。うたたね游さんは、生まれつき頭花(トーカ)と呼ばれる花が頭部に咲く世界を舞台にした漫画『ひらりふたり、花の国』などを手掛けています。
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