「境界は、現実世界と異界を分けているもの」という考え方は、世界的に見られる普遍的なものです。何をもって境界と捉えるかは国と地方によってさまざまですが、例えばブラム・ストーカーによる怪奇小説の古典『吸血鬼ドラキュラ』では、「吸血鬼(異界の住人)は家主の許可を得なければ、その家の中(現実世界)に入れない」と設定されています。

さて、日本において昔から「境界」として扱われていた、私たちにとって一番身近な境界は「玄関」と「トイレ」になります。今回ご紹介する作品は、玄関に見知らぬ美少女がいたことからはじまる、実に奇妙な物語です。
作者はVTuberの茸谷きの子(@Nabatani_kinoko)さん。バーチャルクリエイターグループ「曖昧の惑星プロジェクト」の主催者であるほか、自身でもYouTubeチャンネル「茸谷きの子」でVTuver活動を行っています。
主人公(あなた)の自宅の玄関にいたのは、すっかりおびえきった様子の女の子でした。何やら訳アリらしく、かくまってほしいと主人公に頼むのですが……その理由はすぐに判明します。玄関の向こう側に、得体のしれない「何か」がいるのです。

激しく玄関を叩く「何か」が姿を消し、少し落ち着いた女の子は、妙なことを語りはじめます。主人公が小学生だったころの友達のこと……表向きには転校とされているが本当は死んでいる……自分は脅されており、ここまで連れて行けと言われた……。

ひとしきり語り終えると、玄関の向こうに大量の「何か」が現れました。そして女の子が一言「入って」とつぶやくと、玄関は勢いよく開け放たれ、たくさんの「何か」は全て姿を消したのです。

立ち尽くす女の子をよそに、玄関から謎の足跡が、ペタ、ペタ、ペタと、音を立てて近づいてきます。やがて女の子の姿が消え、足跡の正体が姿を現し……。
少々難解な内容もあってか、リプライ欄にはさまざまな解釈や疑問が寄せられており、茸谷きの子さんによる作品の流れの解説も用意されています。ただし「結構野暮な解説だから、謎のままの方がいいな、という人は読まなくてもいい」とのこと。先に読むと完全なネタバレになってしまいますので、最後のページに置いています。作品を最後まで読み終わった後、どうしても気になる方のみ目を通して下さい。
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