大人になるにつれ友人と遊ぶ機会も減り、たまに会っても居酒屋か飯屋と相場が決まってしまいますが、童心に帰ってゲームに白熱するのも悪くないですよね。カードゲーム、ボードゲーム、心理ゲーム……。世の中にはいろいろなゲームがありますが、中でもとりわけスリル満点なゲーム、それはデスゲームです。

というわけで今回は、デスゲームを描いた魅力的な映画を紹介したいと思います。次に目隠しをされ、クロロホルムを口に当てられるのはあなたかもしれません。先人たちの姿を見て生き残る術を学びましょう。
「エスケープ・ルーム」

とある企業から、謎解き脱出ゲームへの招待状が届いた6人の男女。指定された場所で始まったのは、脱出できなければ死が待ち受ける恐ろしいゲームだった……。
「遊びだと思っていたらがマジの死のゲームだった!」系プロットは、近年すっかりありふれてしまいました。日本には「エスケープ・ルーム」というタイトルの同名映画が現時点で3本も存在しちゃってる始末。いいの?
たいていは低予算のB級映画がほとんどですが、本作「エスケープ・ルーム」に限っては、A級の制作規模で古き良きデスゲームを撮影した大変ぜいたくな作品です。このジャンルに慣れていない人は、本作で“命を賭けたゲーム”というものに触れていただきたい。
ビジュアル面の圧倒的な魅力や、肝心の謎解きパート、そしてお約束の“人間の汚い本性”など、まさにデスゲーム入門編といえる娯楽作品です。グロ表現も抑えめなので、あまり過激な映画はちょっと……という方にもオススメできます。本当おもしろいですよ。
慣れている人が見ると、王道を行く展開にやや物足りなさを感じるかもしれませんが……。まあ、まずはこういうのを紹介させてください。次からが本番です。
「バウンド9」

拉致され、密室に監禁された9人の男女。彼らに取り付けられた特殊な首輪は、身体が“痛み”を感じたときに分泌される物質を抽出するための装置だった。“被験者”となってしまった彼らは、「制限時間内に分泌物を一定量溜めろ」と指示を受けるが……。
こちらも面白い設定です。生き残るために、被験者たちは死なない程度の痛みを味わい続けなければならないんですね。効率の良い痛みを模索していく過程や、被験者同士の駆け引きなど、やがて実験室には確かなゲーム性が生まれます。
互いに協力していたはずが、徐々に拷問へと移り変わっていく様はホラー映画として非常に見応えのある展開。低予算で画質も粗いB級映画ではありますが、この設定の面白さだけで価値のある作品です。
なんと本作は『ボーダーライン』『最後の追跡』、そして監督も務めた大傑作『ウインド・リバー』でおなじみの、今ハリウッドで最も注目を集める脚本家テイラー・シェリダンの初監督作品でもあるのです。めちゃくちゃ意外ですよねえ。今回紹介する映画の中でも特におすすめしたい傑作です。
「サバイバル・フィールド」

とあるサバゲーイベントに参加した8人の男女。舞台は森の中。ペイント弾を使ったゲームに興じる一行だったが、誰かの銃から実弾が飛んできて……。
いやあ、興味をそそられる設定です。「サバゲ―でマジの銃撃ってる奴がいた!」という驚き、恐怖は想像にたやすいですよね。サバイバルゲームは大好きだけど、実戦経験なんてもちろん無い。そんな一般人に毛の生えた男女が、参加者に紛れ込んだ正体不明の殺人鬼から逃げ惑うアクションスリラーです。
長回しを多用した躍動感あふれる映像がすばらしい。広い森を8人もの人間が走り回るわけで、撮影はとても難しかったはずなんですが、カメラは登場人物ひとりひとりをビシッと捉えます。これがたまらなく気持ちいい。かなりセンスのある監督だと思います。
ただし物語としてはかなり薄味。揉めながら逃げまどう参加者を延々と見せられるだけなので、どんでん返しや意外な展開を期待する人にはつまらないB級映画と評価されてしまうかもしれません。
個人的にはなかなかお気に入りの作品です。お話はいったん無視していただいて、森を舞台にしたアグレッシブな映像表現を楽しんでください。
「ヒューマン・レース」

わけも分からず集められた80人の老若男女が、死のマラソンレースに参加させられてしまう……。
デスゲームと言えばボロい山小屋や地下帝国で行われるイメージですが、本作の舞台はなんとマラソン。ただでさえ遠慮したいハードな競技なのに、負けたら死ぬという設定まで追加された地獄のレースです。
このゲーム、2週遅れになった瞬間死ぬというメインルールに加え、芝生を踏んだら即死というルールも存在するのです。これにより、ライバルをコースアウトさせて減らしていく性格の悪い奴が大活躍。「これぞデスゲーム!」という面白みが生まれています。
きっと誰しも「一緒に走ろう」と約束した友達に置いて行かれた苦い記憶や、横断歩道の白い所だけを踏んで帰った思い出があるのではないでしょうか。そんな子どもの無邪気さがそのままデスゲームになったような趣があります。あとオチやばいんで絶対見てください。
「ザ・スリル」

子どもが生まれたばかりなのに会社を解雇されてしまった主人公・クレイグは、地元のバーで旧友ヴィンスに再会する。ヴィンスの優しさに救われながら酒を交わしていると、店にいた中年男性が2人にゲームを提案してくる。「このテキーラを飲み干せたら50ドルやろう」と……。
要求はエスカレートしていき、最後には……という、まあよくあると言えばよくあるお話。個性的なのは、そんな欲に目がくらんだ人間の姿をコメディとして描いている点でしょうか。誘拐も監禁もされるわけではなく、帰ろうと思えば帰れるのに金持ちの道楽に踊らされてしまう男の姿は悲しくも滑稽で、徐々に吊り上がっていく報酬とリスクの塩梅(あんばい)もゲームとしてしっかり楽しめます。B級スリラーとして一級品の出来栄えで、誰が見てもある程度は楽しめるのではないでしょうか。
「〇〇を食え」など、思わず目を背けたくなるような下品な描写もめじろ押し。お金持ちの友達がいたら、どんな反応をするか一緒に鑑賞してみましょう。
「フューリーズ 復讐の女神」

何者かに拉致され、人里離れた森で目を覚ました女子高生・ケイラ。一緒にいたはずの親友・マディを探そうと森を歩き回ると、そこには自分と同じように拉致された女性たち、そしてマスクを被った殺人鬼が闊歩(かっぽ)していた…
殺人鬼たちから逃げ惑う至極単純なスラッシャー映画かと思いきや、徐々に巧妙なデスゲームであることが分かっていく本作。そのルールが判明する部分は、映画でも盛り上がる場面なので、ここでは伏せておきます。とにかく素晴らしいアイデアです。
それでいてスラッシャー映画としての魅力も健在。鮮やかなグロ描写の数々は、素晴らしいアイデアを抜きにしても見応えのあるスプラッターホラーになっていたといえるでしょう。
楽しいスラッシャーと楽しいデスゲームを組み合わせたお得な作品。ぶっちゃけアイデアありきで、映画自体は割と稚拙だったりするんですが、今の時代、新鮮なスプラッタ―映画はなかなか現れませんからね。それだけで価値のある作品だと思います。あと主演の女の子(エアリー・ドッズ)がマジで可愛かったです。それで僕の評価が上がっている可能性もあるので気を付けてください。
「レディ・オア・ノット」

大富豪のアレックスと結婚するにあたり、彼の実家にやってきたグレイス。その世界有数の富豪一家には、生と死を賭けた恐ろしいしきたりが定められていた……。
それは花嫁の命を賭けたかくれんぼ……というか、もはや鬼ごっこです。その家に嫁いだ(よろしくない表現ですがそういう設定なので許してください!)女性は、なぜか結婚初夜に殺されなければならないのです。あまりに荒唐無稽な設定に驚いてしまいますが、コメディー仕立てにすることで開き直っている様子。開き直られちゃあ受け入れるしかありません。
しかし本作、そのバカみたいな設定が生み出した、とんでもない傑作なのです。
広いお屋敷を舞台にリアル鬼ごっこを繰り広げるというストイックさが素晴らしい。新郎のアレックスも花嫁に死んでほしいわけではなく、狂った設定の上で描かれる葛藤も面白い。くだらないしきたりに飽き飽きしている鬼側の心情もうまく物語にマッチして、非常に見応えのあるスプラッターコメディに仕上がっています。
R-15指定ということで、頻出する残酷描写も見どころのひとつ。予想の斜め上を行く衝撃的なラストも相まって、これは自信を持ってオススメできる作品です。「かくれんぼにボウガン持ち込むだけでこんなにスリリングになるんだ!」と感心してしまいました。実際にやっちゃだめですが。
家にこもって過ごす時間が増えた分、日常に刺激を求めている人も多いのではないでしょうか。「じゃあデスゲームをしよう!」と言いたいわけではなく、そんなときは映画を観ましょう。今回紹介した映画を見れば生きててよかった〜と何もない日常を幸せに感じられること請け合いです。
<城戸>
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