「オタク仲間と一緒にルームシェア(シェアハウス)してみたい……!」と夢見たことがあるオタクは多いのではないでしょうか。それを実行に移した“先輩”の記録が読めるのが『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎)です。

著者は藤谷千明さん。共著・執筆に『すべての道はV系へ通ず。』『水玉自伝 アーバンギャルド・クロニクル』『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』などがある、V系(ビジュアル系)や「HiGH&LOW」に詳しいオタクの女性です。
藤谷さんは現在39歳。2018年の秋に「体」「生活」「部屋」「お金」「寂しさ」といった種々の不安が襲いかかり、「自分は1人暮らしに向いていない」という現実を実感。さまざまな選択肢を検討した結果、友人にこのメッセージを送ります――「ねえねえ、オタクルームシェアしない?」。
本書では、メン募(住民募集)、物件探し、審査チャレンジ、契約、実際の生活……と、オタク女子4人がルームシェアに至るまでとそれからの日々を追っています。「これまでずっとハンドルネームで呼び合ってきたので契約時に初めて本名を知る」「推しバンド解散の日にみんなで集まって悼む」というオタクあるあるが楽しく、オタクと住むの、メッチャ楽しそうやん……と夢が膨らんできます。
一方で、サラリとした読み口の中に考えさせられる部分がたくさんあるのも本書の魅力。「フリーランスだと審査に通りにくい」「賃貸契約では4人それぞれが契約者になるのは推奨されない(その結果、家賃補助などの福利厚生申請が煩雑になることも)」というところには、社会的な信用や後ろ盾が少ない状態から立て直すことの難しさを感じます。(収入の不安などで)固定費を減らしたい→そのために誰かと一緒に住みたい→自分か家族の安定収入が必要→……社会、キビシイ!
最後の章では「人生の転機が他メンに訪れたらどうするのか」「一生一緒に暮らせるか」という問いに触れられています。これはおそらく、大人になってからシェアハウスをやろうと思う人はみな抱く問いでしょう。ただし、恋人だって結婚だって一生一緒に暮らすとは限らないし、この不安は「他人と一緒に暮らす」こと自体が持っている避けられないものなのかも。本書でどのように“答えて”いるかはここではネタバレしません。
確かに言えることは、“先輩”たちの暮らしの記録が、“後輩”たちの「やっていこう」という希望になっているということ。ちなみに帯のコメントは阿佐ヶ谷姉妹。阿佐ヶ谷姉妹(※血縁関係なし、女芸人コンビ)は6年間六畳一間で同居し、現在は同じアパートでそれぞれ部屋を借りて“お隣暮らし”をしています。
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