職人さんの動きと細やかさって、見ているだけで心地よいですよね。
Twitterで公開されている坂上暁仁(@sakakky1090)さんの漫画「江戸の町で、桶職人がただひたすらに桶をつくる話」も、読んでいるうちになんだか気持ちが落ち着いて、自分が無になるほどの瞬間を感じさせてくれる作品なんです。

江戸の町で、桶職人がただひたすらに桶をつくる話
時は江戸時代。神田に住む桶職人の女性のお話。
店の軒中で、桶づくりの仕事に没頭する彼女。両手鉋で木を削り、それが合わさる面の角度を、慎重に測っています。彼女が作っているのは、江戸の庶民が日常的に使う桶。店の軒先には、出来上がった商品が積まれています。

桶づくりのための材木の買い付けも職人の大事な仕事。用途に応じた素材を選ぶこだわりとうんちくが、職人としての経験と腕の証。
良い素材を仕入れたら、本格的に桶作りに入るための支度をして、仕事を始める。惚れ惚れする仕草。彼女が道具を使う音だけが響きます。


黙々と仕事を進める彼女のところに、近所の住人や行商人が壊れた桶を持ち、修理を頼みに訪れます。行商人の桶を見るなり、
「お前その桶、そのへんにほったらかしたろ」
図星をつかれ困惑顔の行商人に、一言。
「水につけておきな。それでなおる」

桶を知り、素材を知る職人だからこその一言。木の特性を知り尽くしての助言です。
「要は使い方だよ。大事につかえば、百年だって使える」
店先に集まってきた人たちの桶も、かたっぱしから修繕してしまう彼女。まさに江戸っ子ならではの切符の良さ。その手により、目の前の桶が生き返る。

日も沈み、仕事を終え、木のお猪口で酒を飲む。そのお猪口は、材木問屋で彼女が語ったように、杉の木で作ったものなのでしょう。ただまっすぐに、木と向き合い、桶を作るだけの彼女の一日。
「今夜は心地よく寝られそうだ」
彼女だけでなく、読んでいるほうも今日はよく眠れそうです。
いわゆる「粋」な彼女の職人っぷりに、「ひたすらかっこいいです」「とにかく綺麗で空気感が好きです。。。。」と、多くの「いいね」が寄せられているだけでなく、江戸の風景や桶づくりの描写、温かみを感じる木の質感など、絵の上手さ、描き込みにも「センがけの時に胸に当てる木や、桶での木目の方向に得心しました」「最後のコマを読んだ時、鼻の奥いっぱいに材木と木桶の匂いが広がった」などの感想も。
多くの注目を集めたこの作品は、『コミック乱』(リイド社)2020年12月号に掲載されたもの。坂上暁仁さんは同人誌「すいかとかのたね」(@suikatokanotane)でも作品を発表中。同人誌の購入や、やはり江戸時代が舞台の『火消しの鳶』の試し読みや購入などが、「すいかとかのたね」ショップから可能です。
※作品提供:坂上暁仁(@sakakky1090)さん
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