またしてもお久しぶりになってしまいました、怪しい隣人です。ゴールデンウイーク中は「モンスターハンターライズ」を購入してすっかりモバクソかいわいから遠ざかっていました。そんな中ちょっと気になったゲームがありました。そのゲームとは、bilibiliが送る新作「ブラック・サージナイト」(iOS / Android)です。

「ブラック・サージナイト」タイトル画面
ライター:怪しい隣人

出来の良くないソーシャルゲームを勝手に「モバクソゲー」と名付けて収集、記録、紹介しています。モバクソ死亡リストは500件を超えました。年々ソーシャルゲームが複雑になり、ダメさを判定するのに時間がかかるのが最近の悩みです。本業はインフラエンジニア。そのためソーシャルゲームの臨時メンテは祭り半分胃痛半分な気分です。
「悪堕ち」側に立ったストーリー
bilibiliといえば動画サイトという印象が強いのですが、中国ではゲームの運営も行っており、昨今日本国内でもゲームを配信していたりします。そんな彼らが送り出してきたのは艦船擬人化もの。最近Twitterでやたらとプロモが表示されており「何本目だこの手のゲーム」と思っていました。実際現在運用中の艦船擬人化ものは元祖である「艦隊これくしょん-艦これ-」をはじめとして「戦艦少女R」「アズールレーン」というメジャーどころはともかく、2017年から2019年の間にリリースされた作品はことごとくサービス終了しています。例外的に昨年(2020年)始まっている「蒼藍の誓い ブルーオース」はまだ生き残っているようですが。

艦船擬人化ゲームの一覧。艦船のみを取り上げているゲームに限定しています
そんな中この「ブラック・サージナイト」はいわゆる「闇堕ち」「悪堕ち」とでもいうべきキャラクターたちを用意しているというのが売り文句の1つ。ただし「敵を倒すと仲間をドロップする」というシステムの理屈付けとして「敵は味方側の存在のなれのはて」のような設定がついているゲームは多いのです。
「アビス・ホライズン」ではそれが「鬼姫」と呼ばれる敵であり、スキンの販売という形で味方になった仲間を敵だった当時の姿でプレイすることができました。また少し違いますが「アズールレーン」にも「META」という形で「敵側に回った別バージョン」のようなKAN-SENが実装されていたりします。既に先行作品がこのような工夫をしていた中「ブラック・サージナイト」はさらに一歩踏み込み「悪堕ちした姿が本来の姿である」といわんばかりのストーリーや設定が用意されているとのこと。期待に満ちてゲームをプレイしていたのですが、ときがたつにつれ徐々に微妙な気分になっていきました。
ゲームを開始するとまずムービーで世界設定が説明されます。船が動けなくなった世界で、海で戦うために生み出されたドールという存在。それらの中に意思を持つものが生まれてきましたが、人間たちはそれを嫌い廃棄するようになりました。廃棄を拒否したドールたちは徒党を組み、生存のために人間と戦うようになります。そんなドールたちを指揮するために呼ばれたのが主人公です。チュートリアルの中では「アビスドール」と呼ばれる存在についても語られるのですが、それはドールが進化した姿とのこと。このアビスドールがいわゆる悪堕ち的なデザインとなっています。また、シナリオ中でも現在の人類が普通にドールやアビスドールを処刑していることは語られ、ドールたちをせん滅しようとする人類に立ち向かう戦いなのだ、というのは分かりやすく描かれています。ただ、なぜ主人公が選ばれたのか、なぜ主人公がそんなドールたちに味方するのかはストーリー上では明確になっていません。

OPで語られるドールたちの不幸

これがドール状態

これがアビスドール状態

人間がドールにえげつないことをしている事が分かるストーリー

主人公は男女から選べますがストーリーに影響はありません
ふつふつと不満が募ってくるゲーム部分
一方ゲーム部分はガチャを引いてドールを集めて敵と戦って素材を集めてレベルを上げて、という流れで特筆すべきものはありません。戦闘もオートモードがあり基本的には見ているだけです。非オートにしてもスキルをタップするタイミングぐらいなのですが。艦種の違いもザックリしたもので「バリアや強化があるタンク役の重巡」「味方にバフを掛ける軽空母」以外は何の違いがあるのかよく分かりません。関連のある艦同士を並べるとバフがかかったりするのですが、あまり工夫のしどころがないように思います。
そんな単調な戦闘をクリアしてマップを広げていくとストーリーが読めるのですが、ストーリーを読める戦闘は不定期に発生するため、毎回戦闘をクリアするごとになにかテキストが読めるわけではないとのです。テキストを読み返すための図鑑のようなものも存在しておらず、ストーリーが売りの一つなのでは? とだんだん不満が募ってきました。

戦闘画面です

編成画面です
もう1つの売りと思われるドールたちのデザインについてですが、こちらは良好。悪堕ち後の姿=アビスドールへの進化についても一人はチュートリアルで見せてくれますがなかなか良い感じです。実際に悪堕ち化させるための素材を入手するための領域へ到達できるのはレベル20になってからなのですが、行動で消費するエネルギーは序盤あきれるほどあり、オート戦闘を繰り返すことでレベル上げは容易かとは思います。ただ、悪堕ち用の素材のドロップは大変渋く、今まで報酬でもらった分も含めてSRを1回悪堕ち化するまでに20レベルから27レベルまで素材周回をしていました。
さらに驚いたのはその後で、キャラクターをアビスドール化させたと思った瞬間に「よかったらレビューしてね?」というダイアログが出てきて「ハァ?」と声が出てしまいました。普通この手のゲームではこういう「キャラクターの進化」というの一種の華なのではないでしょうか。さあ進化したぞ、というグラフィックを堪能しようとした瞬間に「レビューしてください」といわれても「後で」以外の選択肢が選べません。ここでゲームに対する印象とテンションがかなり下がりました。

覚醒画像を見る直前にダイアログが割り込んできます
メイン画面の見た目がどこかで見たような感じなのも気になるところです。並べてみると全然違うのですが、各ボタンをナナメに配置したレイアウトが原因なのだろうなと思います。ただ、アークナイツに比べてブラック・サージナイトは大変分かりにくい。ぱっと見どの機能がどのボタンに割り振られているのかさっぱり分かりません。画面左側にずらりとボタンが並んでいるのですが、そのボタンが何なのか説明が一切ありません。それに限らずゲーム全体でも「これをやりたいがそのときはどのボタンを押せばいいのか」というのが大変分かりづらく、「取りあえず押して何が起こるか見てみよう……」という作りになっています。

アークナイツのメイン画面

ブラック・サージナイトのメイン画面
「悪堕ちが好き」と「悪役が好き」は違う
今後ゲームを継続するかどうかですが、個人的にはかなり微妙なところです。システムの微妙さが大きいのですが、加えてストーリーの薄さも気になっています。ダークな世界観が売りなのはよいのですが、やはり「人類から迫害されるドールたち」に肩入れするにはもう少しバックグラウンドが必要かと思います。具体的には迫害の歴史の積み重ねが足りないのです。突然かわいそうな子たちなので助けてあげてといわれても、となってしまいます。
25日からイベントが始まり、こちらはストーリーの読み返しができたりとちょっと進歩したところもあるのですが、ストーリー自体は漠然としたものです。恐らく自分たちの基地に逃げてくる前のドールの話なのでしょうが、出てくるドールには感情があるように見えて「感情があるドールの処分とは……」みたいな気分になっています。この辺りはゲームが継続することでストーリーやキャラの描写が重みを増し、解決される可能性が高いことではあるのですが。

イベントストーリーは回想ボタンで読み返せます
最後になりますが、ごくごく個人的な好みについて。「悪堕ちが好き」と「悪役が好き」というのは違うのだなとこのゲームをプレイしていて再認識しました。このゲームのドールたちは人間に追われる側であり被害者なのです。被害者が迫害に対抗しようとする話の場合、果たしてどちらが悪なのでしょうか。むしろ人間が悪の側なのだとしたら私はむしろ「感情が芽生えたドールは恐怖を感じるのかな?」と実験をする側に回りたい。世間のみなさんから「あの外道許せねえ」と言われる側に回りたい。そんなことを考えさせられたゲームでもありました。
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