宿題の自由研究が大っ嫌いだった――子どものころのそんな思い出をつづった漫画「失敗のその先に」が考えさせられる内容となっています。研究に打ち込める人と、そうでない人の違いは?
作者のちえむさんは自由研究が大嫌いでした。「なんでもいい」「好きなことを調べたらいい」というわりに、どうしたらいいのかは聞いても教えてもらえなかったからです。
自由研究は知りたいことについて「結論が出るまで仮説と検証を繰り返す」こと。その気の長い工程に耐えられそうにないと思ったちえむさんは、科学本に書いてあることを写して済ませようと決めます。
一方で、友達はふと庭木を見て気になった「木の葉っぱの付き方の法則」を見いだそうと、朝から夕方まで葉っぱを数えていました。それを聞いて驚き、「私には無理!」と心の中で悲鳴をあげるちえむさん。
ちえむさんが自由研究のテーマに選んだのは「雲」。友達に「雲好きなんだな」と言われて、本を写すだけだとしても、どうせ調べるなら雲が面白いと思ったからだと気付きます。
「興味があるから、不思議だから、もっと知りたいから、それが研究につながるのか――」
しかしそれ以上の興味は湧かなかったため、ちえむさんは本を写して自由研究を提出しました。他方、葉っぱを数えていた友達はフィボナッチ数列にたどり着いたといいます。
雲に興味はあったけれども研究には打ち込めなかったちえむさんと、葉っぱの研究に没頭した友達。「研究に打ち込める人がいるのになぜ私はそうじゃないのか。好きだから研究に結びつくのか? もっと違うモチベーションがあるのか? いまだに謎は尽きません」――ちえむさんは今もなお疑問を抱えています。
ちえむさんから作品に寄せてコメントをいただきました。
「マンガの中では私自身は研究に興味を持てないままですが、それでも、社会が研究職の大事さにもっと目を向けてもらいたいと思っています。
大学や企業の研究職は早い段階での実験成果や成功を求められ、そのために結果が出ないものには予算が削られがちであると聞いたことがありまして。しかし研究というものは漫画でも描いた通り、失敗をそれこそ年単位で何度も何度も繰り返すからこそ最後に成果にたどり着くもので、むしろ失敗結果が次の研究のためのデータであったりします。
マンガの最後、友達が大人になって研究職に打ち込んでいるように、彼のような研究職の人が、一見無駄で単調な研究の先の発見を求めて、のびのびと研究に打ち込める社会であってほしいという願いがあります」
夏休みで自由研究と向き合う子どもも多い時期。何が好きなのか、何に興味があるのか、何に没頭できるのか、じっくり考える機会となりそうです。
作品提供:ちえむさん
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