コロナ禍に生きる子どもたちへ伝えたいことがあった。
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うえの 「オラの心はエリートだゾ」にあった風間くんの言葉は、映画の初めの方の脚本にはなかったんですよ。「臼井儀人先生のセリフだし、簡単に入れていいのかな」と思ってもいたのですが、2稿3稿と重ねていくうちに、「このセリフこそが風間くんの言うことなんだ」と確信が持てるようになりました。

(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2021
高橋 稿を重ねたことで、原作の言葉がピッタリとハマるようになった感じですね。その言葉を入れても違和感がない、より深い内容になったと思います。
――「学園もの」のジャンルにしたことで、しんのすけと風間くんのお互いの気持ちがより際立っていたと思います。
高橋 実は、企画の初めの方では、カスカベ防衛隊ではなくて、ひろしとみさえがしんのすけと一緒に風間くんをお助けするために学園に入学する話だったんですよ。でも、プロデューサー陣から「やっぱり子どもたちの話にしよう」という話があり、僕も学園ものにするのだったら、風間くんは絶対に必要だろう、この2人の関係性は絶対に描かないといけないだろうと思って、今の形になりました。

(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2021
うえの 学園もので、風間くんの心情が揺れる話はやりたいと思っていました。しんのすけと風間くんの感情のぶつかり合いを描ければと。しんのすけがちゃんとケンカできる相手といえば、ネネちゃんやボーちゃんやマサオくんではなく、やっぱり風間くんなんですよね。
――そんなしんのすけが風間くんとケンカするきっかけが、みさえがダメダメだと言われてしまったから、というのも良かったです。
高橋 それこそ、テレビでもそんなに見たことがない、しんのすけと風間くんの本気のケンカのきっかけが作れるかなと思ったんです。大人になっても、親の悪口を言われたら怒っちゃいますよね。
「オトナ帝国の逆襲」を意識しなかった理由
――「クレヨンしんちゃん」という作品に対しての愛情と理解度も素晴らしかったと思います。お2人の「クレヨンしんちゃん」への思い入れや、大好きなところを教えてください。
高橋 僕は制作進行の頃からしんちゃんに関わっていて、キャリアの半分以上はクレヨンしんちゃんにかかりっきりだったので、もはや「血肉」になっている、他の作品のことが分からないという感じなんですよ。特に意識してここが好きだと考えることは少ないのですが、いちばんはやっぱりギャグ作品であること、お客さんに笑ってもらえる作品ということが好きですね。
うえの 私もそうですね。「お尻を出していて平和」という、しんちゃんの世界がずっと続いてほしいなって思います。

(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2021
――「オトナ帝国の逆襲」をほうふつとさせる、そして「アンサー」を投げかけたような内容でもあると、個人的には感じました。そうしたことは意識されていましたか。
高橋 それは意識していなかったです。僕らももちろん「オトナ帝国の逆襲」は名作だと思いますし、原恵一さんの思想と作家性が爆発して生まれたような作品ですから、それを追いかけても芯のないものになると思っていました。だから「違う山に登っている」というか「あっちの山はすごく高いけど、こっちはこっちの山の魅力がある」んだという気持ちで作っています。
うえの 私も全く意識していなかったです。でも、青春と同じく映画の答えもひとつじゃないと思うので、自由にそれぞれの答えを見つけていただければと(笑)。
――個人的に、いつまでも「大人帝国の逆襲」と「アッパレ!戦国大合戦」との比較で劇場版「クレヨンしんちゃん」シリーズが語られてしまうことを窮屈に感じていましたし、作り手の方がそちらと関係なく「良い作品を作る」ことに注力されていることは素晴らしいと思います。
高橋 劇場版の「クレヨンしんちゃん」はどの作品も個性があって、作り手の遊び心や譲れない意地のようなものが見えます。そんな作品群のおかげでこちらも気負いなく作ることができるのだと思います。