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地元民もおそれ敬うといわれる名古屋の天険(?)、「喫茶マウンテン」の“甘〜いスパゲティ”に挑む女子高生の漫画が、おかしくも胸焼けを誘います。これ、実在する喫茶店の話なんだぜ?

同作は愛知出身の漫画家、安藤正基(@aichidoughnut)さんが手掛けるご当地漫画『八十亀ちゃんかんさつにっき』の一節。名古屋出身の八十亀最中(やとがめもなか)と岐阜出身の只草舞衣(ただくさまい)が、東京から越してきた陣繁華(じんとしか)を「喫茶マウンテン」への“登山”に誘うエピソードです。

マウンテンは名古屋市昭和区にある、創業50年超えの老舗。300以上のメニュー点数もさることながら、何よりも一部の“攻めすぎた料理”で知られています。
名古屋の文化に暗い繁華は、「登山」と聞かされてついていってみれば、案内されたのが喫茶店で面食らうことに。そのうえ、店から出てきた客が、雪山遭難から生還したかのように泣きじゃくっていて、いったい中はどんな地獄なのかと混乱させられます。

それでも中は普通の喫茶店だったことに安心するも、同席の2人は顔を曇らせて乾いた笑いを立てていて、緊張感は変わらず。彼女らはただ淡々と、膨大なメニューから、「甘口バナナスパ」「甘口メロンスパ」「しるこスパ」など、特異なワードが並ぶ一角を勧めてきます。

繁華は言われるがままに「甘口抹茶小倉スパ」を注文。すると、八十亀は「ここからが『登山』の始まりだでよ……」と、決死の覚悟を決めたかのように重たく口を開きます。ただごはん食べるだけだよね?

運ばれてきた料理の個性あふれるビジュアルに、繁華はようやく「登山」のなんたるかを理解しました。抹茶が練り込まれた濃緑色の麺に、生クリームとフルーツ、あんこが盛られた一皿は、確かにまるで天険の要害。一口運べば温かな甘い香りが鼻腔をくすぐり、「意外と美味……いや、やっぱまず……」と、不可思議な感覚が脳を貫きます。

同行の2人は、ともに甘々パスタを食しつつ、「食べているうちに『食事とは何か?』を問うことになるほどの過酷さに、人々はマウンテン行きを『登山』、完食を『登頂』と呼ぶ」「その味と量を前に食べ切れず残すことを『遭難』と呼ぶ」などと、淡々と解説。「生半可な気持ちで誘うのは名古屋人も極力避ける」「友情を壊しかねないから」などと、食事の話とは思えない、恐ろしい話が延々と続きます。

ただ、そんなにもハードルの高い店に誘ってくれたということは、2人からの信頼の証では? ――感じ入った繁華は、これを乗り越えたときに自分は彼女たちと友達になれるのだと信じて、甘くて重い山の登頂を目指すのでした。

漫画はマウンテンを知る読者の共感を呼び、「登頂しましたがしばらく気持ち悪くて動けませんでした」「マウンテンは『鍋スパ』のボリュームもすごい」「コメダといいマウンテンといい、名古屋には日本人のイチョウの限界へ挑戦させようとする何かがある」などと話題となりました。このエピソードの全容は『八十亀ちゃんかんさつにっき』の12巻に収録。表紙にあの抹茶色の山がそびえ立っています。
作品提供:安藤正基(@aichidoughnut)さん
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