公開からわずか3日で観客動員数64万人、興行収入9.9億円を突破する大ヒットを遂げている「シン・ウルトラマン」。その企画・脚本を務めたのは、ご存じ「エヴァンゲリオン」シリーズ監督の庵野秀明。SNS上では両作の共通点や、「ウルトラマン」の「エヴァ」への影響の再発見について盛んに論じられている。

(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ
筆者も「シン・ウルトラマン」のキャラクターを「エヴァ」になぞらえることで、より深く人物像が捉えられることが分かってきた。なんなら、「エヴァ」のフィルターを通すことで「シン・ウルトラマン=百合」という回答がおのずと立ち上がってきたばかりか、「シン・ウルトラマン」において批判が続出したシーンの誕生理由まで解明できてしまったのだ。その理由を記していこう。
※以下、決定的なサプライズ要素は避けていますが、「シン・ウルトラマン」の一部ネタバレに触れています。
ウルトラマン=綾波レイ説
「シン・ウルトラマン」で斎藤工演じるウルトラマンこと神永新二は、社交性がなく感情の表出に乏しい存在として描かれている。人の姿形をしているが実は人ならざる存在であり、だからこその孤独を深めていることも含め、綾波レイらしさが存分にあるキャラクターと言えるではないか。
もちろんウルトラマンと同化する前の神永は人間の男性であり、キャラ名やシャツの着こなしから碇シンジに重ね合わせる方もいるだろう。だがシンジは内向的であっても社交性がないわけではないし、ウルトラマンの種族も(ウルトラの母はいるが)ジェンダーをあまり感じさせない存在であるので、やはりより近いのは綾波レイだと思うのだ。
本作の批判的な意見に「ウルトラマンが人間および禍特対のメンバーを好きになる描写が不足している」ことがあるが、その“好き”を「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」における綾波レイの「碇君と一緒にいるとポカポカする。私も碇君にポカポカしてほしい」に近いものと考えれば納得がいく。
好きという感情をうまく言語化できない、そもそも好きになる理由も、それが好きという感情なのかもどうかも分からない、だけど幸せになってほしいし、何かをしてあげたい。劇中のウルトラマンが人間および禍特対のメンバーに抱いていたのは、実はそのような「ポカポカ」な感情だったのではないか。「好きかどうかも分からない」「でも気になるし、守ってあげたい」もまた、百合作品ではよく見かける関係性だ。尊い、尊いではないか。
また、ウルトラマン=渚カヲルと捉える向きもSNS上で散見される。彼もまた綾波に似た出自でありながら、人間である碇シンジに巨大感情をぶつけ、そして導く存在であるので、本作がBL的な側面を備えていると言っても過言ではない。拡大解釈、私の好きな言葉です。
浅見=アスカ+ミサト説
長澤まさみ演じる浅見弘子は、「エヴァ」で言うところのアスカに近い印象も持つ。声を荒げて命令する高飛車な印象はもちろん、自身の意図に反してバディを組ませられる過程も似ている。
実際の本編ではほとんどバディ関係を築けておらず、「瞬間、心、重ねて」的な訓練シーンもほぼなかったのは残念だが、シンジ以上に心を開きにくい綾波レイとバディを組むとなれば、一本の映画で打ち解けるには時間が足りなかったのだと納得もできる。
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