ペットボトルのキャップに水道水を勢いよく当てると、跳ねた水の膜がドーム状に広がるという現象。この「水のドーム」に指で触れると、なぜかドームが一回り大きくなる――不思議な実験動画が「なぜ大きくなるんだろう」とTwtiterで注目を集めています。ねとらぼでは近畿大学の鈴木直弥教授に見解を聞きました。
動画を投稿したのはTwitterユーザーのWataru Oshima(@libayl049)さん。お子さんが偶然発見した現象とのことで、仕組みを聞かれて答えられなかったことから、ネット上で知見を求めたところ、5万件を超えるリツイートと20万件以上のいいねを集める大きな反響がありました。

ペットボトルのキャップ部分に当たった水道水がドーム状に広がる(動画提供:Wataru Oshimaさん)


Twitter上ではさまざまな意見が寄せられ、中でも「指で触れると内側の空気が増えるので広がる」「コアンダ効果※で水が指に引きつけられる」といった説が多くのリツイートを集めていました。
※コアンダ効果:空気や水といった流体の噴流が壁に沿って流れる現象
指で触れると「表面張力のバランス」が崩れる
実際のところ、これはどのような仕組みなのでしょうか。近畿大学 理工学部 機械工学科の鈴木教授は取材に対し「実験をしたわけではなく、あくまで動画を見た上での見解ではありますが」と前置きした上で、「慣性力と重力と表面張力のバランスの問題かと思います」と語りました。
まず、水がドーム状になる仕組みについては、日本機械学会 流体工学部門が公式サイト上で、ペットボトルと水道水を使った同様の実験で「慣性」と「表面張力」によるものだと解説しています。
- キャップに当たった水はキャップの上面に沿って拡がり、そのまま放射状に流出します。これは慣性のはたらきによるものです。
- 一方、水にはたらく表面張力は膜の表面積を小さくしようとするはたらきがありますので、流量を少なくするとドームは下の方でしぼられて球のような形に近づきます。流量が多いと慣性のはたらきが強くなってドームが大きくなり、流量が少ないと表面張力のはたらきが強くなってドームが小さくなります。
これに対し、鈴木教授は水のドームが広がる仕組みについて「なるべく簡単に考えると、指を入れることで指が邪魔をして、表面張力が弱まってドームが広がっているのかと思います」と説明。
鈴木教授 水がペットボトルのキャップに当たると、その形状に依存して慣性によって広がりますが、表面張力によって広がらないようにする力も働きます。指を入れると表面張力の力が阻害されることで、その場所での慣性、表面張力、重力のバランスが崩れ、ドームが広がると考えられます。
日本機械学会の実験動画に、水の流量を変えて実験している動画もあります。流量を変えると慣性力が卓越していくので膨らんだりする。これを見るとやはり慣性、表面張力、重力のバランスによるものだと分かるかと思います。
また、前述のドーム内の空気の増減が関係しているのではないかとする説については「ドームの中と外で空気の圧力はそんなに変わらないと思われることから、関係ない可能性が高いです」と述べ、コアンダ効果が作用している可能性についても低いのではないかとしました。
ちなみにTwitter上ではストローで直接息を吹き込んだり、吸ったりする別途要因を加えることでドームのサイズを変えることができる、という実験も行われていました
【追記】日本機械学会が新しい実験動画を公開(8月1日)
日本機械学会 流体工学部門は8月1日、本件に関連する新しい実験動画付きの解説記事を8本、サイト上で公開しました。実験では「ドーム内の圧力」や「コアンダ効果」の影響も検証。その上で、ドームが大きくなった理由についてやはり表面張力のはたらきが弱まったためだと結論づけており、ねとらぼ上の記事で紹介した仮説を裏付ける内容にもなっています。
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