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皆さんは「マルーンの疾風(かぜ)」と呼ばれる電車をご存じでしょうか。大阪、京都、兵庫を結ぶ阪急電車はマルーンカラーの美しい車体色が特徴。関西の人はもちろん、ファンは全国にいて、1981(昭和56)年から毎年「マルーンの疾風(かぜ)」という阪急電車の車体が主役の公式カレンダーが発売されているほどです。

阪急電車で走行している車体は全てこのマルーンカラー。1910(明治43)年の開業時に運行された1形車両から変わることなく続いているというのだから驚きです。そして、走る電車はいつ見てもツヤツヤでキレイです。汚れが目立ちやすい濃いめの色調なので、約5日に1度は洗車してこの美しさを保っています。
なぜマルーンカラーの阪急電車は「いつもきれい」なのか。以前、阪急電鉄の平井車庫でその理由を聞きました(関連記事)が、今回はさらにじっくりと「裏」まで。阪急電鉄正雀車庫・工場で「マルーンカラーの阪急電車が愛される秘密」を覗いてきました。

「マルーンちゃうやん!」え? こんな色もあったの? 「白い」阪急電車を発見!
今回行われた正雀車庫プレス向け見学会は、「阪急電車のデザイン」が2022年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞したことを記念して行われました。評価理由は、開業以来継承されてきた「マルーンカラー」と品の良い車両の内装。学生時代から社会人、そしてフリーランスライターとなった今もずっと愛用している「阪急ヘビーユーザー」の筆者も自身が普段使う電車が認められ、とても誇らしい気持ちです。

工場に入ってまず目に付いたのは、え? まさかの「白い」阪急電車? 「えっ、マルーンちゃうやん!」となって絶句してしまいました。白い車両なんてあったの……?
阪急電車のマルーンカラーは、国が定める4年、8年ごとの定期検査(重要部検査、全般検査)のたびに「塗装を全てはがして、塗り替える」のだそうです。正雀工場はそんな大規模検査を行う場所です。
大規模検査で車両の全機器類を取り外し、全般にわたり細部まで検査と整備を行います。一両あたり約7日掛けて行うそうです。そして、色も全塗り替え。手作業で前の塗装をはがし、小キズや凹凸があればもれなくパテで埋めて、サンディングして、表面をビシッと滑らかに補修します。この下地処理を手間を掛けて丁寧に行う理由はもちろん、再塗装するマルーンカラーの美しさのため。この白(というか、薄いピンク)は、マルーンカラーを塗る前の下地処理時の色でした。よかった(?)。

部品が外され、台抜きされ、クレーンゲームのように釣り上げられる大きな車体。そこには「禁じられた遊び」のメロディーが流れ、何だか哀愁がただよっていました。ほかにもルパン三世やインディー・ジョーンズのテーマも流れます。これは、「今どの機械が稼働しているのか」を現場作業者が感覚的に分かりやすくする安全作業のための工夫と取り組みでした。へぇぇ。

阪急電車のマルーンカラーは、「基準板」を用いて色調が変わらないよう入念な検査を経て塗られます。その基準版も、経年による色あせを防ぐため2年に1度塗り替えます。ブレない……! 使う塗料は耐候性に優れるウレタン塗料。洗車機へ入れるような感じで動かしながら塗料を吹き付けます。約24時間かけて自然乾燥したら完了です。

塗装を終えたら再度クレーンで運ばれ、別工程で点検を終えた台車とドッキング。電気系統をつないで動作試験をし、8両そろえば試運転となります。
塗装したての車両はやっぱり輝き方が違いますね! 駅で、見るからに「よりピッカピカ」な車両に出会ったときは「新車か工場から出たてかのどちらかですね」とのことですよ。


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