高知県黒潮町で「津波の発生時に子どもたちが自らの命を優先せず、避難をためらう高齢者を避難へ向かわせる」という内容の避難訓練をしているとして、情報番組「四国らしんばん」(NHK)の放送内容が物議を醸しています。黒潮町はTwitter上でNHKの放送について見解を公表しました。
問題の発端となったのは、番組を制作したNHK松山放送局が3月10日、インターネット上で公開した「わたしたちが主役!地域防災を支える高知の子どもたち」という記事。NHKで同日に放送された「四国らしんばん」の「スペシャル『南海トラフ巨大地震 “若いチカラ”が命を救う』」と題した番組をもとにする内容でした。

画像は該当記事より
記事内では、南海トラフ巨大地震に備える高知県の若者たちの取り組みを紹介。避難訓練について子どもたちが避難をためらう高齢者の自宅に出向き、避難へ向かわせるという内容が含まれていました。Twitter上では、子どもたちが自らの命より高齢者の避難を優先させる内容として、「信じられん。間に合わず死んでも、誰も責任取ってくれないですよ」「86歳の老人を1人助けるために子ども3人が犠牲になる未来しかみえない」など問題視する声が相次いでいました。

画像は該当記事より(※記述は公開当時のもの)
その後、Twitter上での批判の声を受け、該当記事は「公開当初の記事で避難訓練の趣旨が不明確だった」として、3月12日には加筆・修正されています。また、最後には、避難訓練の監修を務める京都大学防災研究所巨大災害研究センターの中野元太助教による、「今回の訓練は、避難をあきらめる高齢者の意識を変えることを一番の目的に行っています。実際に地震が発生し、津波が来た場合には『津波てんでんこ』にあるように、子どもたちも自分の命は自分で守るために、真っ先に避難するよう指導しています」という言葉も加えられました。
黒潮町「高齢者を優先する印象を与えたのは大変残念」
黒潮町は批判の声を受け、NHKの放送内容について、「放送が『災害発生時に子どもたちが高齢者宅を訪問し、共に避難する』という印象を視聴者の方にあたえたことは、黒潮町としては、大変残念な結果です」とコメント。
黒潮町によると、NHK松山放送局の趣旨としては「避難をあきらめていた」人に対して、子どもたちが避難訓練に誘って訓練することで、避難できることを実感し、「避難をあきらめない」という意識に変わっていく様子を視聴者に伝えたかったとのこと。
黒潮町は町内の小・中学校で採用している「黒潮町津波防災教育プログラム」に触れ、「第一に『自らの命は自らで守る』という防災に対する主体性を育む教育を行っており、“率先避難者” になることを強く指導しております。黒潮町では、今後も『災害から生き抜く力』を育む教育を継続してまいります」と述べています。
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