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九州大学農学部の昆虫学教室で薬品の棚卸しが行われた際に、340年前の壺(つぼ)が披露されました。教室では「虫が入っている」と伝わる「毒劇物扱い」の品とのことで、Twitterでは「蠱毒(こどく)を作っていたようにしか見えない」「特級呪物?」と話題を呼んでいます。
※「オオルリハムシ」の記述は記憶違いで、のちに「オオサルハムシ」と判明


いかにも得体の知れない何かを封印していそうなムードを醸す壺は、同教室で助教を務める三田敏治(@buruninja)さんが、例年の棚卸しの際にTwitterへ投稿したもの。口を覆う古びた和紙には「天和三年」と記されています。文字通りに捉えれば、書かれたのは340年前の1683年。江戸幕府5代将軍、徳川綱吉の治世です。
教室にも詳細を知る人はすでにいないというこの年代物は、「江戸時代の物が保管され続けてるのすごい」「ゾクゾクする」「ホラー映画の導入にしか思えない」と話題に。そんななか、生物の陶器を手掛ける工房うむき(@kobo_umuki)さんから、1982年刊行の『薬用昆虫の文化誌』に壺の由来に関する記述があるとの指摘がありました。
同書によると、この史料は個人から九州大学へ寄贈されたもの。もともとは毒虫として知られるハンミョウ入りの壺と対になっていたものだそうで、これもまた毒物の研究用に虫を入れていたものかもしれません。ただし工房うむきさんは、封の紙は天和3年の品としても、壺自体は後世に交換されたものではないかとみています。
これを受けて、三田さんがあらためて壺の内容を確認したところ、中に入っていたという「オオサルハムシ」は、別の標本瓶に移されていました。これは壺自体が貴重品だったため、中身だけ資料用に取り出され、再び封印されたものとみられます。



ただ、このオオサルハムシが江戸時代に採取されたものとは限りません。また、封印されていて確認できないものの、壺の中にはまだ何か粗い粉らしきものが入っているといいます。その正体が明かされるときは来るのか、編集部は三田さんに詳しい話を聞きました。
―― 壺はどのように保管されていたのでしょうか
三田敏治さん: 2018年に九州大学農学部は箱崎キャンパスから伊都キャンパスへ移転しているのですが、移転前は金庫に納められていました。現在は毒劇物とともに鍵のかかる保管庫で管理しています。ハムシの瓶も同様です。
―― こうした年代物の保管物はほかにもありますか
三田敏治さん: 基本的には昆虫標本を管理している研究室ですので、壺状の収蔵物はこれ1点です。キャンパス移転前は「和漢三才図会」という江戸時代の百科事典などもありましたが、移転先では貴重書を安全に管理する場所が確保できず、悩んだ末に理系図書館に引き取ってもらいました。
―― 三田さんは壺について、いつごろにどなたから聞いたのでしょうか
三田敏治さん: 箱崎キャンパス当時、お世話になっていた技官のかたからうかがったと記憶しています。教授たちは詳細をまったく知らなかったということなので、何代も前の教授が入手されたと考えています。このあたりは確かめればどの程度の範囲のかたが存在を知っていたのか分かることではありますが、今のところ特段掘り下げて調べてはいません。
―― 今後調査・鑑定してみる予定はありますか
三田敏治さん: 工房うむきさんが言われていたように壺の由来も重要ですし、壺の中に何かが入っていることは確かなので、そのあたりはぜひ調べてみたいですね。昆虫はグループごとにその道のスペシャリストがいますので、中身に応じて専門家に見ていただければと思います。現時点ではっきりしたことは言えませんが、実は同類の薬壺や、その中に納められていたであろう昆虫について、複数の情報をいただいています。
画像提供:三田敏治(@buruninja)さん
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