同じ敷地に建てた4軒の家に4世代4世帯が暮らすカナダの家族の動画がYouTubeに投稿されました。住宅難にあえぐカナダにおけるモデルケースとしても注目を集め、記事執筆時点で117万回以上再生され、2万9000いいねを集めています。

4 generations, 4 homes, 1 lot: Vancouver family builds own private neighborhood
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若い世代が直面する住宅難の解決策

 動画を投稿したのは、自給自足の暮らしやユニークな家などを紹介するYouTubeチャンネル「Kirsten Dirksen」。今回は住宅価格の上昇が続くカナダで、4世代4世帯が暮らす自分たちだけの“住宅街”を作った家族を紹介します。

 バンクーバー郊外の街・デルタに住むヒギンズ夫妻は、息子や娘たちが住宅難に苦しまないよう、それまで住んでいた家を取り壊し、同じ敷地に実質4軒となる2軒の2世帯住居を建てることを思いつきました。

4軒の家の全体
4世代4世帯が暮らす4軒の家の全体

 幅20メートル、奥行き30メートルの土地に4軒の家を建てる上で必要だったのは市当局の許可と近隣住人の理解でした。もともとこの住宅街は一軒家用のエリアだったので、転売目的ではないことをまず説明する必要があったのです。

 また、道路に面する屋根に傾斜を付けて低くすることで、周囲の家と比べて異質な印象を与えないよう設計を工夫。その結果、2016年に夫妻は市当局の承認を得ることができました。事実上の自分たちだけの“住宅街”を作れることになったのです。

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土地と家の名義、住宅ローンは別々

 現在、敷地内には左右に分かれて2世帯住居が2つ。左右は境界壁で隔たられ、さらに、各2世帯住居は道路から見て手前側と奥側に分かれています。これは構造上一体となっていますが、内部は完全に分かれており玄関も別々です。この4軒の名義は土地も含めてそれぞれ異なっており、住宅ローンも別に組まれています。

 手前側の家は左右とも77平方メートル(23坪)で、奥側の家はそれぞれ106平方メートル(32坪)の広さ。唯一の共有物は真ん中の境界壁だけなので、将来的に4軒のうちのいずれかが不要になったときも、それだけ売却できます。

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家族が集まってくるヒギンズ夫婦の家

 動画ではそれぞれの家の中も紹介されています。まず向かって右側の奥がヒギンズ夫妻の家です。ここには息子ジェームズの妻の妹にあたる女性も一緒に住んでいます。

 コンパクトな家は1階がリビングダイニングキッチンとなっており、4件の家族全員が集まってビュッフェ形式で思い思いに食事を楽しむこともあるそうです。この部屋には、夫の仕事机もあります。

ヒギンズ夫妻の家
家族が集まってビュッフェ形式の食事を楽しむ場にも

 地下には妻の仕事部屋兼ゲストルームがあり、2階にはバスルームと洗濯室、夫婦の寝室と同居女性の部屋があります。

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おばあちゃんとひ孫たちの触れ合いが増えた

 次に道路側の家には、高齢で聴覚障害のある妻の母親が住んでいます。ここは末娘が所有し、妻の母親に貸している形になっているそうです。末娘夫婦はマンションの部屋を所有しており、現在はそちらに住んでいます。

 この家の1階はリビングダイニングキッチンと寝室があり、2階にも部屋があります。将来的には末娘夫婦がこの家に住む予定。

高齢の母の家
設備が充実してキッチンを備える高齢の母が住む家

 ヒギンズ夫妻の家とは完全に別の家になっているとはいえ隣接しているので、妻は「母は、いつでも私が立ち寄れるのでとても喜んでいる」と語っています。母親からみてひ孫にあたる2人の小さな男の子たちも同じ敷地に住んでいるので、触れ合いの機会が多くなったそうです。

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「独立性があるが孤立していない」

 向かって左側の奥は息子のジェームズと妻ケイトリン、2人の幼い息子たちが住んでいます。ジェームズは4世帯が住むこの形式について、「4つの壁は十分にお互いを分けていてプライバシーが十分にあるので独立性が保たれている。それと同時に孤立していない」と評しました。

 この家は1階にリビングダイニングキッチン、地下にはリビングルームと夫の仕事デスクと洗濯機、2階には夫婦のベッドルームと子どもたちのベッドルームがあります。子どもたちのベッドルームの狭さと収納スペースが少ないのが気にかかっているのだとか。

ジェームズ&ケイトリン夫妻の家
コンパクトながらステキなリビングダイニングキッチン

 なお、奥側の家にはどちらにも裏庭があり、境界壁に設置された扉から2人の息子たちが自由に行き来しています。

バンクーバーの地下室暮らしを脱してステキな家へ

 最後に、向かって左側の手前は独身の息子パトリックの家です。テレビ関係の仕事をしている彼は以前、バンクーバーで6年半、地下の部屋に住んでいたとのこと。現在は自宅で仕事することが多く、吹き抜けのリビングダイニングキッチンにカメラ機材を起き、2階の編集室で編集作業をしているそうです。

パトリックの家
訪ねてきたおいっ子の話し相手をするパトリック

 「以前よりぜいたくな暮らしをしている」という彼は、よく祖母の家を訪れており、「これまでで一番、祖母のことを知るようになった」と感慨深く語りました。

「住宅危機だけでなく“孤独危機”の解決にも」

 住宅難に対処するため家族が力を合わせる居住スタイルに、「住宅危機だけでなく“孤独危機”の解決にも役立つね」「これは夢のようなシナリオだよ。子どもたちは大人になったとき、このことを本当に感謝するだろう」「4世代が一緒に暮らしているだけでなく、別々に暮らしているなんて、なんて幸せなことでしょう」「これは子どもたちに住宅所有の機会を与えるだけではなく、家族を結び付けるものです」といった反応が寄せられています。

ユニークな家

※画像は「Kirsten Dirksen」のYouTubeチャンネルより引用