ねとらぼ
2025/07/12 18:30(公開)

アニメ「アポカリプスホテル」 CygamesPictures代表・竹中信広、脚本家・村越繁ロングインタビュー ヤチヨの暴力にもロジックがある

 オリジナルTVアニメ「アポカリプスホテル」が6月24日深夜放送の第12話で最終回を迎えた。「勇気爆発バーンブレイバーン」に続くCygamesPicturesのオリジナルTVアニメとなる本作。最終話の放送直前に実施した、CygamesPictures代表の竹中信広さん、脚本家の村越繁さんへのインタビューをお届けしよう。

※本インタビューは第10話までのネタバレを含みます。

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ジャンルの切り替わりは意図せず、あくまで軸に置いていたのは「ホテルもの」

──「アポカリプスホテル」、めちゃくちゃ面白いです! 9歳と8歳の甥っ子と、4歳の姪っ子もすごく楽しく見てるんですよ。 4歳の子は「ポン子かわいい!」と彼女のことが特に気に入っているようで、下の甥っ子はそのポン子が第4話でチェーンソーを構えた時に「やべぇカッコいい!」と興奮気味だったりしました。

竹中信広(以下、竹中) それは良かったです。ただ、第10話は教育上、あまり良くないんじゃないかという大きな懸念がありますが(笑)。

──第10話放送後、Xで「アポカリプスホテル」の感想を検索すると「倫理観」というワードがたくさん並んでいましたから(笑)。

村越繁(以下、村越) そのことも含めて話題にしていただいいたのはありがたいことだと思います(笑)。

──その第10話のお話も後ほど伺うとして、各話が本当にバラエティ豊かで面白いです。ヤチヨ役の白砂沙帆さんはXで「王道ホテルアニメ」とおっしゃっているのですが、いち視聴者としては「あれ? 今なんのアニメを観ていたんだっけ?」と思う場面も多々ありました(笑)。特に第4話で「トレマーズ」オマージュのモンスターパニックものが展開されてからは、各話でジャンルが切り替わっていくような印象を抱きました。その点は意識されていたのでしょうか。

村越  映像や演出がとにかく力強い作品ですから、そういう印象を抱かれるのもわかります。ですがシナリオ作成時は、ジャンルを変えていくことを意図していたわけではないんです。それよりも「『ホテルもの』として何が起こるのか」ということを基点として、エピソードの1つ1つを竹中さんと、脚本家の和田崇太郎さんと一緒にお話しさせていただいた形ですね。

──なるほど、確かに各話ごとに「ホテルあるある」というか、「ホテルの仕事ってこうなんだろうな」と思う部分もありますね。たとえば第1話では「シャンプーハットがない」という「アメニティの不備」をコメディーにしていたりしますし、その後も宇宙人のおもてなしが物語の主軸で、さらにはポン子がホテル従業員として成長していったりと、「ホテルもの」としての「芯」は外していない印象でした。それでも、第6話がバトルアクションになったりもするのですが(笑)。

竹中  でも、その第6話も、あくまで物語の軸は「ハルマゲさんというお客をおもてなしする」物語ですよ。僕らとしては、「王道ホテルアニメ」から、まったくズレているとは思っていません。

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チェンソーの「サンライズ立ち」、声優と挿入歌での「夫婦共演」は意識していた?

──本当におっしゃる通りですね。第4話も「トレマーズ」的なモンスターパニックものではありますが、やはりホテルの「食料の調達」と「新メニューの開発」という軸がありました。

竹中 そうですね。「終末ものとしてやれること」と「ホテルものでできること」を ざっくりと考えて、「この要素とこの要素を組み合わせたらお話ができそうだよね」みたいな作り方ではあったんです。

村越  まさにそうでした。 基本的には「ホテルという舞台でキャラクターが成長する」ことを意識していましたし、そこからメニューの開発であるとか、温泉を掘り起こしたりだとか、ワインを作るといった、「ホテル名物」みたいなアイデアをみんなで出していましたね。

竹中 でもやはり、脚本に書いたこと以上のことを、監督やアニメのスタッフが表現してくれましたね。第4話の脚本では、ポン子は「チェーンソーを持っている」くらいのことしか書いていなかったのですが、あのような感じになるとは思っていなかったですから。

──そのポン子のチェーンソーの持ち方や構図が、いわゆる「サンライズ立ち」として話題になっていましたね。

竹中 それはおそらく絵コンテの段階ですでにあったもので、最終的には春藤佳奈監督が調整して、あの演出になりましたね。やはりスタッフの皆さんに、良い意味でいろいろと遊んでいただいたからこその内容にもなっています。

──第6話では、ハルマゲ役の山路和弘さんと、挿入歌を歌った朴ロ美(ロは王へんに路)さんの「夫婦共演」が話題になっていましたね。そちらも意識したキャスティングだったのでしょうか。

竹中  実は、初めはおふたりがご夫婦ということをまったく意識してなかったんですよ。ハルマゲ役の山路和弘さんが早めに決まっていて、曲を誰に歌ってもらうかっていうところで、音響制作の岡田拓郎さんから「朴ロ美さんがいいんじゃないか」という話が出て、イメージぴったりだったのでオファーをさせていただきました。僕は後で岡田さんに言われて「ご夫婦じゃないか!」と気づきましたね。

──キャスティングも豪華かつみんな素晴らしいハマり役ですし、さらに作画も超ハイクオリティーですよね。特にオープニングのダンスが素晴らしいです。「2人で踊るダンスを1人で踊っているみたい」という意見も見かけていて、その「寂しさ」込みの演出だと思ったのですが、いかがでしょうか。

竹中  オープニングは基本的にaikoさんの「skirt」を聞いた春藤監督から、実際に「2人で踊っているダンスを1人で踊ってる形にしたい」という提案があって、そのアイデアをもとに振り付けを先にお願いして、ダンスの動きをベースに監督がコンテを描いて、そのコンテに合わせてまた動きをカットに合わせて作画参考用の動画を撮影する、という手順を踏んでいました。あの仕上がりになったのは、監督のセンスです。

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