ねとらぼ

【連載:サラリーマン、プリキュアを語る】ヒープリは「自分自身を大切にしても良いこと」「生きることは戦うこと」を描いた作品でした。

生きることは戦うこと

 またヒープリでは終盤、「生きることは戦うこと」という命題も示されました。

 物語のラスト、同作のラスボス「キングビョーゲン」はこう語ります。

 「生きるということは、戦うこと。戦いに勝った者だけが、生きることを許される」

 その言葉をのどかは静かに肯定し「私もそう思う」と呼応するのです。

キングビョーゲン「生きるということは、戦うこと。戦いに勝った者だけが、生きることを許される。その勝者が我一人であったというだけだ」

のどか「生きることは戦うこと……。そうだね。私もそう思う」

『ヒーリングっどプリキュア』第42話「のどかの選択!守らなきゃいけないもの」 花寺のどかのセリフより

「負けないために戦い続ける」と宣言する花寺のどか

 そして、

「勝つためじゃなく、負けないために戦い続ける」

「見下して、虐げ、奪ってくる存在から、これ以上悲しむ人が増えない様に、今まで以上に戦う」

と宣言するのです。

 「私達、いつも何かと戦ってる。戦いながら生きてる。あなたの言う通り」
 「だから私は、戦い続ける」
 「今までと同じ、ううん、今まで以上に戦い続ける」
 「勝つためじゃない。負けないために。私が健やかに生きるために」
 「大好きな人たちが健やかに生きられるように」
 「他のすべてを見下して、虐げて、奪ってくる。あなたみたいな存在のせいで、悲しむ人が増えないように!」

『ヒーリングっどプリキュア』第42話「のどかの選択!守らなきゃいけないもの」 花寺のどかのセリフより

 「シリーズで1番優しいプリキュアにしたい」として始まったヒープリは、「優しくあるために、戦い続ける」という地点に着地しました。

 しかし、戦うといってものどかが戦い続けるのは「自分を傷つけてくる存在」です。

 「負けないために戦う」というのは誰か打ち倒すためではなく「自分の領域を守るため」に戦う、ということ。

 描かれたのは「自分と大切な人を脅かすものには、NOを突き付ける勇気」であり、決して「相手が嫌だから」「気に入らないから」で戦うことではないのです。

「生きるために戦い続ける」
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人間もビョーゲンズと同じである

 さらに最終回では「人間もまたビョーゲンズと同じように、地球を傷つける存在になりうる」という問いも投げかけられました。

 自然を破壊し、他者を傷つけ、命を脅かす。それが行き過ぎた先には人間もヒーリングガーデンにより滅ぼされてしまう、ということが示されます。

 それでもヒーリングガーデンの主テアティーヌ様は「人間には未来を変える力もあると信じたい」と語ります。

 プリキュアの、そして私たち一人ひとりの選択に、地球の未来が委ねられていることを明示し、物語は幕を閉じたのです。

「人間もビョーゲンズと同じである」という問いも投げかけられた
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コロナ禍が落ち着きをみせた今だからこそ

 2025年、新型コロナの猛威はひとまず落ち着きをみせ、街には以前のような日常が戻ってきています。マスクを外す人も増え、外食も盛況、イベントも活気を取り戻しています。

 『ヒーリングっどプリキュア』の4人が救った世界が現実のものとなろうとしています。

 しかし社会では、強い言葉で他人を否定したり、違いを許さない空気も広がったりと「排外主義」的な考えもあふれはじめています。

 そんな時代だからこそ、他人を攻撃するためではなく「自分と大切な人の健やかさを守るために戦い続ける」という、ヒープリが示した価値観をいま一度思い出したいのです。

 ヒーリングガーデンにより人類が滅ぼされないために。

健やかさを守るために戦い続ける

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