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先生から「見放された」と感じた学生時代
——1年生から3年生までの作品は、大学の課題で描かれたものですか? いずれの作品も素人目に見ればお上手に思えますが、現在の湊谷さんご本人からすると少し恥ずかしい箇所などあるのでしょうか……?
湊谷さん: はい。すべて課題で描いたものになります。
1年生のデッサン作品は一番最初の授業で描いたものです。デッサンに関しては予備校に通っていたわけではないため、練習もほとんどできておらず、あまりうまいとは言えないレベルだと思っています。
お見せすることが少し恥ずかしいと思いながらも、その時精一杯頑張った、楽しくも悩みながら書いた思い出の作品です。
2年生の百合の絵は初めて描いた日本画です。百合を模写して、初めて岩絵の具を使って……。絵の具を置くように描くと表現したらいいのでしょうか、とにかくきらきらした岩絵の具を使って初めて描いて、模写もうまくいき、個人的にとても気に入っている作品です。完成したときは、とても、とてもうれしかったことを覚えています。
3年生の絵はテンペラ(※絵画技法の名前)の授業で描いた作品です。水族館で魚をたくさん見て、種類はわからなかったのですがきれいに泳ぐ魚を見つけて、模写して描きました。木の板に、油絵具と卵を使ったテンペラという技法で光を描きこんでいきました。
こちらも精一杯頑張り描いた、自分のお気に入りの作品です。ただ、このころはこのまま絵を描き続けていて良いのか、就活の悩みなどもあり暗い絵を描いているように見えますね。
もともと高校生の時から魚の絵を描くことが好きだったので、最後まで描き抜けられた作品です。
もちろん全作品に共通して言えることですが、当時はほかの学生と比べられたり、もっとうまく絵が描けるようになりたいと悔しくて涙を流したりすることがたくさんありました。
現在は油絵や岩絵の具での日本画制作、テンペラで作品を描くといった機会が全然ないため、5年たった今ではたくさん画材に触れられたことが役立っていますしとてもいい思い出です。
——現在の作風にたどり着いたきっかけはありましたか? 以前の投稿で「絵描くの下手すぎてつらいムリムリ!」と思っていたと書かれていたので、ここにたどり着くまでに美大生ならではの葛藤などもあったのかなと思いまして……
湊谷さん: 大学の先生に「ヘタだね」って言われたことですかね……。そのあと先生方からは見放されている感じになり、心底落ち込んで、自暴自棄になった時期がありました。その結果、周りとの画力の差が大きく開いてしまっていました。ちょうどテンペラの魚の絵のときです。帰り道、雪が降る中、ぼーっと歩いてつらかったことを覚えています。
一方で、それでもゆるいキャラだけは何となく描き続けていました。メロンソーダじんべえざめや、もめんなどのキャラクターを生み出してXに投稿したとき、ステキなコメントをたくさんいただいたことを覚えています。とても勇気をもらったことも覚えています。
人物を描くことは好きではありましたが、あまり得意ではないし、ヘタだと思われるならゆるい絵で戦おうと思いました。「もしこれが逃げの道であっても描き続けたら何かある、起こしてみせる」と思いました。背水の陣のような形でした。
もともとゆるい絵が大好きで幼少期から描いてはいたため、最後の卒業制作は、むりつむりのようなゆるいイラストに原点回帰した形です。それも含め成長と思っていただければと思います。
好きなものを伸ばすことが大事だと気付いた瞬間
——卒業制作の作品はクラウドファンディングが成功され、後には出版までいたりましたが、当時の心境をあらためて教えてください
湊谷さん: まず、制作時間約22時間で『むりつむり』の絵本は完成しました。
というのも、年末にJRで札幌から帯広の実家に帰るとき、ほっと一息つけたのか「絵本描いてみたい!」とふと思いたったのです。なぜかそのままポエムを数分でスマホに打ち込み、ストーリーは完成しました。
年明け3日後に札幌に戻り、絵本の製本会社様に「卒業制作に間に合わせてほしい、どのくらい期間はあるのか」と確認の電話をしました。「1~2日以内に入稿してもらわないと無理です」と言われました。
そのときは絵自体はラフも構想も何もなく、白紙の状態でした。
そこからすぐに家に帰って、寝ずにむりつむりと勇気野菜のストーリーに合わせたカラーイラスト全てを22時間で制作、入稿しました。
絵本の制作会社様にはあのとき本当にご迷惑をお掛けして申し訳ないことをしたと思っています。本当にありがとうございました……!!
完成した絵本を手に取った瞬間、これだと思いました。
その後この絵本はみんなにどういった反応をいただけるのだろうとクラウドファンディングをしました。出版のお話をいただけるとは思っていなかったので、当時は驚きました。
——該当投稿がバズったときの心境を教えてください。特に印象に残っているコメントは何かありますか?
湊谷さん: 「成長したね」と多くコメントをいただけたことでしょうか……。原点回帰して描いたむりつむりにみなさん驚いていたかと思うのですが、「私もこれでいいんだ……」と驚いておりました。
自分の好きなもの……というよりできることになるんですかね。自分に合うもの、好きなもの、できることを伸ばして描き続けること、大事だなあと思いました。
描き続けた先に、まさか『週刊コロコロコミック』で連載して、単行本が出る日が来るとは。しかも大学時代から描き続けてきたキャラクターたちも描けたので、とても、とても良い経験になりました。
もしよろしければ、また成長した先の私の作品もぜひご覧ください。
ほんわかタッチの漫画作品を週刊コロコロコミックで連載中
湊谷さんは現在、イラストレーターとして幅広く活動しています。2025年1月には書籍『最高にオモかわいい ほぼねことねこ図鑑』が刊行され、週刊コロコロコミックで現在連載中の『へんてこいきもの』は単行本1巻が発売中。Google Japanが開催した「Chromeイラストコンテスト」で大賞を受賞するなど、さまざまな実績を上げています。
画像提供:湊谷鈴(@siratamairipafe)さん