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「いま日本で一番ヤバい害獣」を聞かれたら、なんと答えますか? その回答が変わるかもしれない、有害鳥獣駆除の様子を収めた動画がYouTubeに投稿されました。動画は「想像以上に深刻だと分かった」「もっと取り上げてほしい」と反響を呼び、記事執筆時点で44万回以上再生されています。
動画を投稿したのは、山の幸や海の幸を日本各地で採集して食べることを趣味としている茸本朗(たけもと・あきら)さんのYouTubeチャンネル「野食ハンター茸本朗ch」。以前には、潮干狩りで見つけた真珠貝の中身を取り出して話題になりました。
神様の使いとされたり、さまざまなキャラクターになったりと、日本人にとって身近な野生動物「シカ」。しかし、現状をよく知るハンターさんたちは「日本はシカのせいで滅ぶかもしれない」と警鐘を鳴らしているそうです。その意味を知るべく、茸本さんはシカの猟に同行させてもらいます。
シカのせいで日本が滅ぶ?
この日は三重県の山に来ました。これまでもさまざまな生き物をハントするところを見せてくれたハンター・シーキチンさんに同行し、有害鳥獣駆除を行う様子を見学させてもらうとのこと。ターゲットは、シーキチンさんが「野生生物の中で一番恐ろしいのではないかと思っている動物」なのだといいます。
「日本に生息する動物の中で、一番恐ろしい動物は?」と聞かれ、茸本さんは「クマ」と答えました。確かにクマは人間を直接死傷させられる力を持っていますが、シーキチンさんが一番恐ろしいと思っている動物はシカなのだとか。
シカは草食動物であり、人間を食べることはありません。しかし、さまざまな問題がある非常に危険な生き物でもあるのだといいます。実際に現場を回りながら、その危険性を見せてくれるとのこと。シーキチンさんいわく、一度現場を見れば最悪人が死んでしまう可能性があるというシカのヤバさがよく分かるとのことですが……?
わなを見に行く
早速シカのヤバさを確かめるため、シーキチンさんが前日に仕掛けたわなを見に行くことにします。すると、死んでしまってはいたものの1個目のわなにシカがかかっており、続く2個目のわなには大暴れするシカの姿がありました。
わなを16個仕掛けているとのことですが、この調子ではかなりの数のシカがかかっていそうです。シーキチンさんは、茸本さんに対して「きょう何頭持って帰ってもらえます?」と尋ねます。まさかこれほど大量に捕れると思っていなかった茸本さんは思わず口ごもってしまい、「少しいただければと思います」と返すしかありませんでした。
その後、シカがかかっていたくくりわなを片付けたシーキチンさんは、おもむろに穴を掘り始めます。きょう捕ったシカは食肉に加工したり販売したりはせず、自家消費分だけ持ち帰って残りは埋設処分するとのこと。現場に埋設することは、集落の人々に合意をいただいているそうです。
食肉にしない理由の1つ目は食べ切れないくらい捕れること。2つ目は食肉として販売するためには止め刺し(とどめを刺すこと)をした後、規定時間以内に処理施設に運ばなければならないといった基準が定められていることを挙げました。きょう仕掛けてあるわなを全て見回るころには、基準をオーバーしてしまうのだとか。
シカを食肉にしようと思うと、1頭捕ったら締めて山を下り、施設に持ち込んで山に戻って1頭捕って……という形になり、とても間に合わない上に駆除が進みません。全力で駆除をしようと思ったら、食肉にできないのが現実なのだそうです。
わなを回りつつ、シカは1年で1.2倍に増えるといわれていると話すシーキチンさん。1000頭のシカが1200頭に、2000頭のシカが2400頭に増えてしまったら、1日1頭捕っても全く間に合わないことが分かりますね。
シカのヤバさが明らかに
8個目のわなを見に行くと、そこには5頭目のシカがいました。どれだけのシカがいるのだろうと驚きつつ進んでいくと、シーキチンさんが「マツカゼソウ」というシカが食べない「シカ不嗜好性植物」と呼ばれる植物を見せてくれます。
シカは食べられる植物を食い尽くすため、山にはシカが食べない植物だけが残るそうです。この場所は植物がたくさん生えているように見えますが、生態系的にはよくない状況なのですね。
さらに、シカがリョウブの木の樹皮をはぎ、食べた形跡を発見しました。山肌を見てみると、シカの首が届く高さに全く緑がありません。一見すると豊かな林のように見えますが、よく見てみると地面には何も生えていないことが分かります。
本来山の土壌は木や草の根が守ってくれるため、それほど流出することはありません。しかし、シカがそれらを食べてしまうと山の地肌がスカスカになり、雨で土壌が流れ、土砂災害などを引き起こします。シカが私たちの命を脅かすと話していたのは、このことだったのですね。
この山をこのままにしておくと、新しい木が生えてこないまま古い木がどんどん古くなり、やがてはげ山になってしまうと話すシーキチンさん。仮に花粉症の原因となるスギやヒノキなど人工林にある木を切って放置しても、稚樹をシカが食べてしまうため、もとの雑木林に戻ることはないのだそうです。シカが直接私たちを食べることありませんが、日本の山をどんどん貧弱にしている一因なのですね。
しかし、シカは外来生物ではなく在来生物です。そんなシカがなぜ私たちに牙をむくのでしょうか。シーキチンさんはさまざまな要因があるとしつつ、山から人間が撤退してシカの生息地が拡大していること、シカと人間の住む場所の境界線が明確化してしまったことが、その要因だと考えているそうです。
また、かつて日本には「ニホンオオカミ」というシカの捕食者がいましたが、明治時代に絶滅してしまっています。断言はできないものの、それもまた一つの要因になっているのかもしれません。
シカはエサがあれば際限なく増えるため、増えたら増えただけ食べ物が足りなくなり、里のほうにはみ出してきてしまいます。そんな状況の中でシカの数を減らすという役割を、シーキチンさんをはじめとしたハンターさんが担ってくれているのですね。
その後もわなを見回っていくと、次はまだ若いシカがかかっていました。止め刺しをしたシカをよく見てみると、その体にはマダニがくっついています。マダニは直接吸血するという被害はもちろん、死亡率が3割といわれる恐ろしい病気を媒介することで知られています。その恐ろしい病気を持ち込むマダニがシカとともに里に下りてくると考えると、なんとも恐ろしいですね。
ハンターという仕事について
ハンターという仕事について、命を奪うということから普通の人にはできない特殊技能のようなところがあると話すシーキチンさん。獲物となる動物に対しては敬意というより、いい意味での畏れ、畏怖を持って対峙(たいじ)しているそうです。
なお、シーキチンさんが行っている有害鳥獣駆除はボランティア活動ではなく、市町村から駆除した頭数分の報奨金が出るそうです。しかし、ハンターは下準備や経験値、わなや銃に関する技術はもちろんのこと、根回しや地域住民との信頼関係などがものをいう世界であり、新規参入してすぐに成果を得るのは難しいのが現状なのだといいます。
獣害は農家の問題だと思われがちですが、実際の有害鳥獣駆除は日本人全員の命と生活を守るために行っているという面が一番大きいのだそうです。畑を荒らすイノシシやヒグマの人的被害は分かりやすいですが、最も私たちに人件費や労力などを費やさせているのはシカだと思っているのだとか。
ここで、シカが侵入できないように高い柵を張ってある場所とシカがいる場所を見比べてみるとその差は一目瞭然。シカの被害を受けていない山肌には背の低い緑がたくさん生え、太くて立派な木も生えていました。シカという生き物は、これだけ環境を変えてしまう力を持っているのですね。
その後もわなを見回っていき、最後のわなには9頭目のシカがかかっていました。今回は16分の9というすさまじい成果ですが、シカがたくさんいるからこそこれだけ捕れると考えると、手放しで喜べないのがなんとも複雑なところですね。
シーキチンさんは最後に、狩猟に興味があるけれど実際に狩猟するまではこぎつけられない人も多いと思うと、また実際に狩猟をする人と無関心の間に「理解してくれる人たちの層」が増えてきてほしいと話します。理解してくれる人の層が増えれば、それだけハンターさんも仕事をしやすくなるため、ぜひ現状を知って理解してほしいと話すシーキチンさんなのでした。
シカの肉を調理する
帰宅した茸本さんは、いただいたシカ肉を調理することにします。「普段絶対に手に入らないような部位を調理してみたい」とシーキチンさんに相談したところ、シカの乳腺をいただいたのだとか。
わなにかかったシカのほとんどはメスで、授乳中もしくは授乳後すぐと思われる個体が多かったそうです。お母さんシカを狩ると聞くとつらい気持ちになる人がいそうですが、駆除という意味では最も効果的なタイミングでもあるのがなんとも複雑ですね。
なお、仕掛けた16個のわなのうち、まだシカがかかっていないわなはそのままにしておいたそうです。そして全てのわなを回収した結果、なんと11頭ものシカを捕獲しました。
現場を見ながらシカの影響について話してきましたが、長崎・対馬では実際にシカの影響による土砂崩れが起きているとのこと。本州にはホンドシカ、北海道にはエゾシカが生息していることを考えると、今後日本の里山は全て同じような災害が起きるリスクがあることが分かります。
シカによって、きょうあすにでも人の命が奪われる可能性がある。これは今そこにある危機であること、そんな状況まできていること、とにかくシカがヤバい生き物であること。そして日本がシカに滅ぼされかけていることを知ってほしいと話す茸本さんなのでした。
シカについて話しながらさばいていた乳腺は、硬いレバーのような感触でチーズのような乳臭さがあったそうです。そこで、バター、ニンニク、焼き肉のたれで炒めて「ホンドシカの乳腺のバター焼き肉」にしたところ、とてもおいしかったそうですよ。なお、野生のシカを食べる際は寄生虫や感染症、特にE型肝炎のリスクがあるため、しっかりと火を通してくださいね。
「気付いたら見入ってしまってた」「本当にヤバい」と反響
この動画のコメント欄には「気付いたら見入ってしまってた」「内容に感動して震えました」「植生の違いを見て想像以上に深刻な話だということが分かりました」「フェンスありなしでの差でかなり実感湧きました」「山の地面がスカスカすぎてびっくりしました」「これはもっと取り上げてほしいです」「かなり深刻だなと感じました」「シカは本当にヤバい」といった声が寄せられています。
茸本さんは、この他にも全国各地のマニアックな食材を食べる様子をYouTubeチャンネル「野食ハンター茸本朗ch」で公開中です。また、X(@tetsuto_w)でも情報を発信しています。
「野食ハンター茸本朗ch」動画まとめ
動画提供:YouTubeチャンネル「野食ハンター茸本朗ch」











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