“日本最強のヤゴ”を捕獲し、10カ月にわたって育ててみた結果が「感動しちゃいました」「神秘的」とYouTubeで話題です。動画は記事執筆時点で20万回以上再生されています。

日本最強のヤゴを10ヶ月間育ててみた結果…

 動画を投稿したのは、昆虫採集YouTuberのむし岡だいきさん。昆虫が嫌いな人・興味がない人にこそ興味を持ってほしいという思いから、昆虫採取や飼育を楽しむ様子を自身のYouTubeチャンネル「むし岡だいき」で公開しています。

 以前には驚くほど巨大な幼虫を卵から育てて話題になりましたが、今回は日本最強のヤゴを捕獲し、成虫になるまで育てる様子を見せてくれるようです。

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オニヤンマのヤゴを探す

 2024年7月。日本最強のトンボ「オニヤンマ」のヤゴを捕獲・飼育して成虫にするべく、山に来ていたむし岡さん。実はこれまでさまざまな昆虫を捕獲・飼育してきましたが、オニヤンマのヤゴは捕まえたことがないのだとか。オニヤンマのヤゴは山の中の緩やかな小川やため池の砂地に潜っているといわれているので、この日はその辺りを探してみようと思っているそうです。

 オニヤンマのヤゴについて話しつつ歩いていると、いい感じの小川を発見。網を使ってガサガサをしてみると、小さいけれどヤンマっぽいヤゴと、「ヘビトンボ」の仲間を発見できました。

まずは小さなヤゴを発見しました

 別の場所へ移動し、山際を流れているいかにもオニヤンマがいそうな小川でガサガサをしてみることにします。網の中にサワガニと小さなヤゴが入り、オニヤンマのヤゴかもと話しながら網の中を探り続けると……ついに頭が大きくておしりがとがっているオニヤンマのヤゴを発見しました。

 むし岡さんによるとオニヤンマのヤゴが成虫になるには、2~4年かかるといわれているそうです。しかしエサをしっかり与えれば、1年以内に羽化するのではないかと考えているとのこと。捕獲したヤゴは小さいけれどいったん確保しておき、もっと大きなヤゴが採取できたらリリースすることにします。

オニヤンマのヤゴを発見しました!

 先ほどは落ち葉や泥が堆積している根際を狙った気がしますが、興奮しすぎてどこをすくったか忘れてしまったと話しつつ、2匹目のオニヤンマのヤゴを発見しました。昆虫採集をしている中で「読みが当たる瞬間」はとってもうれしいそうですよ。

 1、2時間ほどガサガサを続けていると、オニヤンマだと思われるヤゴを20~30匹ほど発見できたそうです。ただし、飼育に時間がかかるため小さい個体はリリースし、体が大きな3匹だけを持ち帰ることにしました。

小さな個体はリリースし、3匹だけ持ち帰ることに
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飼育環境を作る

 帰宅後、ヤゴの飼育環境を整えていきます。ヤゴ飼育の専門サイトの情報によると、オニヤンマのような流水性のヤゴの飼育にはエアレーション、魚を飼育するときに使ういわゆるブクブクを付けた方がいいとのこと。また、オニヤンマは泥に潜るため土や泥などを敷いてあげた方がいいようです。

 プラスチックの飼育容器にカルキ抜きを入れた水道水と砂利を入れ、共食い対策のため収納用品の仕切りボードを使って仕切りを作ることにします。環境変化によるストレスを減らすために水合わせをしてからヤゴを入れ、ついにオニヤンマの飼育環境が完成しました。

飼育環境が完成しました!

 採取できたヤゴは、成虫になったら羽根になる「翅芽(しが)」と呼ばれる器官がもう見えている状態です。そのため、きちんとエサを与えれば40日くらいで成虫に持っていけるのではないかと考えました。

翅芽と呼ばれる部分が見えていました
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1カ月後~越冬

 約1カ月後、オニヤンマのヤゴは3匹とも無事に成長しています。オニヤンマのヤゴは体中に細かい毛がたくさん生えていて、水の中の泥や汚れなどを身にまとって擬態する習性があるそうです。

オニヤンマのヤゴは普段、汚れや泥に擬態しているのだとか

 砂に擬態しているヤゴにエサのバッタの幼虫を与えてみると、あっという間に食らい付いて捕食者らしい姿を見せてくれました。普段は枯れ葉や砂利に潜って待ち伏せし、「下唇(かしん)」という器官を使って獲物を捕まえて食べるそうです。

バッタを与えると、あっという間に食い付きました

 その後、ヤゴたちをベランダで越冬させ、やがて季節は春を迎えました。越冬後に藻でドロドロになっていた水槽をすくってみると、中には巨大なヤゴの姿が。うれしいことに3匹とも無事に厳しい冬を乗り越え、大きく育っていました。なお、オニヤンマのヤゴは初夏に羽化し、野外では6月くらいから成虫の姿が見られるそうですよ。

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6月上旬、羽化の前兆が……?

 6月に入ると1匹のヤゴが砂に潜らず、砂の上を歩き回るようになりました。この時点で採取から9、10カ月経過していることを考えると、羽化の前兆である可能性が考えられます。そこで水場と水ごけの陸地、羽化の際に使う木の枝を用意した羽化用の飼育容器に移動させることにします。移動させるときにヤゴを観察してみたところ、翅芽がパンパンに膨らんでいました。

 それから約1週間後。ヤゴは水場と陸地の間にいましたが、まだ羽化はしなそう……と思ったその翌日、ヤゴはいつの間にか羽化し、成虫へと姿を変えていました。無事に羽化してうれしい反面、羽化の瞬間を撮影し損ねてがっかりするという、複雑な気持ちになってしまったむし岡さんなのでした。

いつのまにか羽化していました……!

 オニヤンマの大きな特徴といえば黄色と黒色の柄を持つ体と、色鮮やかな緑色の目です。しかし、羽化したての個体は目の色が黒っぽいので、成熟するにつれて色が変わるのかもしれません。羽化したオニヤンマは野外に放ち、残る2匹のヤゴを羽化用の飼育容器に移動させました。

 数日後の夜には2匹目が陸地に上陸。羽化が近い可能性があるため、カメラをセットして待っているとやがて木の枝に登り始め、先端の方で動きを止めました。そして少しずつ背中に亀裂が入って……23時ごろから羽化の予兆を見せていたヤゴは2時30分、ついに羽化を始めます。

2匹目の羽化が始まりました

 少しずつ体の全てが外に出て、小さくまとまっていた羽根が伸びて、まだしわしわだったおなかが伸びて……やがて、ヤゴは私たちがイメージする立派なオニヤンマの姿になりました。

ヤゴを羽化させることにも、羽化の撮影にも成功しました◎
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昆虫採取・飼育の注意点

 なお、むし岡さんはオニヤンマを羽化させるにあたって特に湿度に気を付けていたといいます。オニヤンマが羽化している横で加湿器を作動させ、クーラーは切って湿度が上がりやすくしたそうです。

 2匹目のオニヤンマを野外へと放ちつつ、むし岡さんは昆虫採取や飼育を行う際はできるだけ生態系に影響を与えない工夫をしたうえで楽しんでほしいと話します。

 オニヤンマを飼育するときの注意点として「育てたオニヤンマを野外へと放す際は、必ず見つけた場所の近くで放すこと」「育てるときは見つけた場所で採取したエサを与えること」を挙げました。むし岡さんは、ヤゴが住んでいた場所の横にある草むらで採取した昆虫をエサとして与えていたそうですよ。

「感動して泣きそうになりました」「神秘的ですね」と反響

 この動画のコメント欄には「無事羽化できてよかったです」「ものすごく神秘的で感動して泣きそうになりました」「羽化の瞬間は息をのみました!」「カッコよすぎる!」「感動しちゃいました、昆虫の生態は素晴らしいです」「羽化って神秘的ですね……ちゃんと生態系への配慮もなさってて尊敬です」「神秘だなあ。生命の力って本当に不思議。あの小さいヤゴの中にどうやって入ってるんだろう。急速に成長するのかなあ」といった声が寄せられています。

 むし岡さんは、昆虫の採取や飼育に挑戦する様子をYouTubeチャンネル「むし岡だいき」やX(@mushioka_daiki)で公開しています。また、世界で発見・撮影した強烈なインパクトの昆虫を100種以上紹介した著書『むし岡だいきの「世界の昆虫」おった!図鑑」(光文社)が販売中です。

「むし岡だいき」動画まとめ

池で見つけたヤゴを育ててみた
むし岡家の昆虫たちの冬眠準備をしていきます!
間違って育ててたヤゴは【あの昆虫】でした…

動画提供:YouTubeチャンネル「むし岡だいき

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