ねとらぼ
2025/11/02 21:05(公開)

ブラックバスを根絶した池→約1年後の今は…… 思わぬ光景に「天国すぎる!」「素晴らしすぎますよ!」

 外来種の魚・ブラックバスが在来種の生き物を食い尽くしていた池を干して、ブラックバスを根絶。それから約1年後、池がどうなったのか見に行く様子をおさめた動画がYouTubeに投稿されました。動画は記事執筆時点で、7万8000回以上再生されています。

ブラックバスを根絶した池はどうなった?

 投稿者は「生物多様性を全力で楽しみたい、だから生物多様性と水辺の文化を保全する」という考えで活動する小宮春平(@ariake538)さん。以前は外来種であるアメリカザリガニの駆除を始めて3日目の池と、駆除を始めて約300日たった池を比較した様子を紹介しました。今回は昨年池干しを行い、ブラックバスを根絶した池の様子を見ていくようです。

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ブラックバスを根絶した池

 早速池に入って様子を見ていこうとすると、たくさん生え白い花も咲いている、在来種のスイレン・ヒツジグサを発見。同じく在来の水草・ヒルムシロも、かなり増えているようです。

在来種のスイレン・ヒツジグサがたくさんです
在来種のスイレン・ヒツジグサがたくさんです

 この池は水草がすごいと話しながら池の水を軽く網ですくってみると、小さなドジョウが入りました。昨年は、池干しの排水口から1匹出てきて「多分いるにはいるんだろうな」くらいの状況だったとのこと。今年はすぐに見つかったことを考えると、水草と同じくドジョウもかなり数を増やしているのかもしれません。

早速ドジョウを発見しました
早速ドジョウを発見しました

 その後は水生昆虫であるコガタノゲンゴロウとガムシ、マツモムシを発見。昨年は全くいなかったという水生昆虫たちも、かなり数と種類を増やしているようです。さらにギンヤンマのヤゴやマルミズムシの類と思われる昆虫など、さまざまな生き物を確認することができました。

網の中にはガムシの姿が
網の中にはガムシの姿が
小さな昆虫が次々と見つかります
小さな昆虫が次々と見つかります

 ここで最初に見つけたヒツジグサについて、詳しく教えてくれることに。ヒツジグサは全国各地で増えている園芸種のスイレン(外来種)とは異なる、本来の日本のスイレンです。絶滅ないしは絶滅危惧種となっている都道府県も多く、この池がある鳥取県でも準絶滅危惧種となっています。

 その後もカメラに映らないほど小さい、コガシラミズムシやタマガムシなどの微小昆虫を次々と発見。鳥取には5種類のコガシラミズムシが生息しているそうですが、見分けるのは難しそうですね。

見つけることも難しそうなコガシラミズムシ
見つけることも難しそうなコガシラミズムシ
丸っこいフォルムがかわいいタマガムシ
丸っこいフォルムがかわいいタマガムシ

 どうやらこの池の中には現在、あらゆる生き物が大量に住み着いている様子。1回網ですくうだけでギンヤンマのヤゴが5匹くらい採れるという状況を考えると、ヤゴもかなり増えていることがうかがえます。

池の縁にもたくさんの生き物がいました
池の縁にもたくさんの生き物がいました

 さらにいったん網を置いて水と陸の境目、縁の辺りを見てみると、こちらにも小さな水生昆虫がたくさんいることが確認できました。昨年は全くいなかったという水生昆虫が爆増しているということは、やはりブラックバスの捕食圧は非常に強かったのですね……!

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以前は普通にいた水生昆虫たち

 鳥取県では絶滅危惧Ⅱ類となっているコガタノゲンゴロウがごろごろいる中で、突如「ほんの十数年前までタガメが普通にいた」という話に。タガメは日本最大級の水生昆虫で、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に分類されています。

 この集落でも10年くらい前までは見かけたというタガメが一気に数を減らした理由の仮説は、農薬に弱いらしいことと、ウシガエルの拡大によるものではないかとのこと。近年は農薬の影響がない山間のため池でも、池干しをやめているところが多いそうです。ウシガエルはオタマジャクシの状態で越冬するため、毎年池干しをすれば増えることができないのだとか。

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池は浄化区域に

 なお小宮さんたちはこの周辺の池でブラックバスを見ていないか、ときおり周辺の方々に聞いているそうです。すると10年くらい前まではいたけれど、注意すること、池干しをすることを何年も繰り返しているため、最近は大丈夫という話だったとのこと。その話と池の状態を照らし合わせると、この池は「浄化区域」になったと考えてよさそうですね。

 以前のこの池は目視で泳ぎ回るブラックバスが確認できるうえに、たまに池干ししたときにクロゲンゴロウが出てくる程度で、ほとんどの生き物は食いつくされていたのだとか。ブラックバスのおなかの中から大量のヤゴや、在来種のカエル・トノサマガエルが出てくる状態だったそうです。

エグリトビケラの巣を発見
エグリトビケラの巣を発見

 現在の池は以前の状況が想像できないほど大量のマツモムシが泳ぎ回り、昨年は見かけなかったという最大級のトビケラ・エグリトビケラの巣も複数個落ちています。この状態は「ブラックバスがいたら絶対このレベルにならない」と、断言してしまってよさそうですね。

 最後に今日採取した生き物を見てみると、この周辺にいる水生昆虫がほぼ全部帰ってきたことが確認できました。ポテンシャルのある場所でブラックバスを取り除くと、もともといた生き物たちが自然と帰ってくるようです。

池の中にはたくさんの生き物がいました
池の中にはたくさんの生き物がいました

 日本ではブラックバスを駆除するとアメリカザリガニが増えてしまってよくない、という論調が多いそうですが、この地域のようにアメリカザリガニがいない場所であれば、ブラックバスを駆除するだけで豊かな環境へと戻っていくのかもしれません。

池はかなりいい状況になっていました
池はかなりいい状況になっていました

 なお今年この池ではまだブラックバスを見ておらず、昨年も駆除後2週間ほど見回ってそれ以降も出なかったそうです。ブラックバスはもちろん、ウシガエルもそのオタマジャクシもいない環境は在来の植物や水生昆虫がかなり増えて、非常にいい状況になっていたことが確認できたのでした。

これだけ再生されるとは」『希望』と言う言葉が浮かびました」と反響

 動画には、「ヒツジグサ、良いですねー。良いな〜!」「1965年代ぐらいの記憶では、一般家庭でもドジョウ汁が作れる程たくさん獲れたと思うんですが、現在はもう獲れなくなってるんですかね。寂しいなぁ」「バスがいなくなるだけで、これだけ再生されるとは、うれしくなります」「『希望』と言う言葉が浮かびました。これが未来につながってほしい」「コガタノゲンたくさん! 天国すぎる!」「小宮さん達の活動の成果が、素晴らしすぎますよ!」といったコメントが寄せられていました。

 小宮さんはこの他にも、YouTubeチャンネル「コミヤの生物多様性に関する一考察」やX(Twitter)(@ariake538)にて、環境保全活動に関する情報を発信しています。

絶滅危惧IA類の生息地にも最悪の外来種が侵入しました
絶滅危惧種を食べる。文化の継承と干潟の保全。
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画像提供:YouTubeチャンネル「コミヤの生物多様性に関する一考察

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