ねとらぼ
2025/11/13 21:15(公開)

うっかり掘り出したクワガタの“幼虫”→スポンジに入れると…… 思わず見入る姿に「神秘的」「勉強になりました!」

 成虫になる前のカブトムシやクワガタの幼虫を、うっかり土から掘り出してしまった。そんなトラブルが起きた時に幼虫を救う方法と、本当に幼虫を救えるのか羽化するまで観察してみた動画がYouTubeに投稿されました。動画は記事執筆時点で、11万5000回以上再生されています。

なんとかして救ってみせる

 動画を投稿したのは、昆虫採集YouTuberのむし岡だいきさん。昆虫が嫌いな人・興味がない人にこそ興味を持ってほしいという思いから、昆虫採取や飼育を楽しむ様子を自身のYouTubeチャンネル「むし岡だいき」で公開しています。

 以前は“日本最強のヤゴ”を捕獲し、10カ月育てた結果が「感動しちゃいました」「神秘的」と話題になりました。今回はうっかり掘り出してしまったクワガタの幼虫を助ける方法と、幼虫のその後を紹介してくれます。

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クワガタを掘り出していたら……

 むし岡さんは以前、外国産クワガタの飼育に挑戦する様子の動画を公開しました。その後、動画に登場したギラファノコギリクワガタ、パラワンオオヒラタクワガタ、ニジイロクワガタの幼虫の飼育を続けていたそうです。

 この日は動画の撮影をするつもりはなく、続々と羽化している外国産クワガタの掘り出しを行っていたというむし岡さん。オスを掘り出すときの様子を動画にしようと考えていたので、先にメスを中心とした掘り出しをしていたそうです。

 そんな中で緊急で動画を撮影している理由はズバリ、「カブトムシやクワガタを飼育している人であれば、1度はやったことがあるだろう失敗をしてしまったから」とのこと。むし岡さんは一体、どんな失敗をしてしまったのでしょうか?

外国産クワガタの掘り出しをしていたら……
外国産クワガタの掘り出しをしていたら……

 むし岡さんは基本的に、コンテナにサナギが入っているボトルを並べ、1~2カ月後に一斉に掘り出すという形でクワガタの管理をしているそうです。同じコンテナのボトルは大体一斉に羽化するため、同じ時期に掘り出してもほとんど失敗することはないのだといいます。

 しかし今回は掘り出しをしていたところ、まだ全く羽化していない個体が1匹出てきてしまったのだとか……。ということで今回はカブトムシやクワガタの幼虫をうっかり掘り出してしまった時にどうすればいいかを紹介しつつ、その方法が本当に正しいのか見てもらおうと考えているようです。

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幼虫に見えるけれど幼虫ではない

 カブトムシやクワガタはボトルの端の方に「蛹室(ようしつ)」と呼ばれる部屋を作るため、外から蛹室の場所を見ながら掘り出せば、羽化した成虫を傷つけることなく外に出すことができます。この方法では掘り出す適切な時期がある程度わかるため、あまり失敗することはないそうです。

通常はボトルの外から蛹室が見えますが
通常はボトルの外から蛹室が見えますが

 しかし今回失敗してしまったニジイロクワガタのメスの幼虫は、ボトルの側面から蛹室が確認できなかったのだそうです。見えなくても一応成虫になっているだろう、という判断で掘り出したところ失敗してしまいました。

今回は蛹室が確認できなかったそうです
今回は蛹室が確認できなかったそうです

 この状態の何がまずいかというと、幼虫のように見えるけれど実は幼虫ではないということ。クワガタの幼虫は朽ちた木などを食べて成長し、サナギになる前に蛹室を作ってその中でサナギとなり、成虫へと羽化します。しかし今回は幼虫が蛹室を作った後に掘り出してしまったのです。

 幼虫は蛹室を作り終わってしばらくすると、身体がシワシワな「前蛹(ぜんよう)」と呼ばれる状態となります。前蛹になると「蛹化(ようか・幼虫がサナギに変態すること)」し、サナギになるまで動き回ったりエサを食べたりすることができない状態になってしまうのだそうです。

幼虫ではなく「前蛹」という状態でした
幼虫ではなく「前蛹」という状態でした

 またカブトムシとクワガタの幼虫は、自分が作った蛹室がないと上手くサナギになれないことが多いとのこと。地面の上に置いておいてもサナギになれる可能性はあるけれど、うまく羽化できないことがあるそうです。

 なお、この状態で1番やってはいけないことは、この状態で掘り出して「まだ幼虫だった」と思ってこのまま土に埋めることなのだといいます。前蛹の状態で土に埋められてしまうと、そのまま命を落としてしまいます。

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人工蛹室を作る

 ではうっかり前蛹を掘り出してしまった場合は、どうすればいいのでしょうか。そんな時は焦らず、ダイソーなどで販売されている「フラワー吸水スポンジ(植物オアシス)」を使って、人工的な蛹室を作りましょう。作った人工蛹室を入れる、保湿性の高い容器も用意しておきます。

百均で販売されている、植物用の吸水スポンジを使います
百均で販売されている、植物用の吸水スポンジを使います

 まずはスポンジをケースに入る大きさにカット。続いてスプーンなどを使ってスポンジに楕円形を掘り、前蛹を入れる蛹室を作ります。ある程度掘れたら最後は指で押し、表面をなめらかになるように整えましょう。蛹室は少し大きくても問題なく、むしろアゴやツノが伸びる種類やオスの場合は、かなり大きめに作ってあげる必要があるのだとか。

スプーンなどを使って蛹室を掘っていきます
スプーンなどを使って蛹室を掘っていきます

 なおここでは、どちらを前蛹の頭側にするか意識してほしいとのこと。実はクワガタたちの蛹室は脱皮殻やサナギが成虫になる時に出る水分が下に流れるよう、頭側が高く、尻側が低くなるように少し斜めに作られているそうです。頭側を決めたら、尻側が低くなるように調整しておきましょう。

 作った人工蛹室を容器に入れてたっぷりの水分を染み込ませて、ティッシュなどを使って余分な水分を取り除きつつ形を整えたら準備完了。うっかり掘り出してしまった前蛹をそっと蛹室に入れたら、後は蛹化と羽化を待つだけです。

たっぷりと水分を含ませた人工蛹室に、前蛹を入れておきます
たっぷりと水分を含ませた人工蛹室に、前蛹を入れておきます

 なお人工蛹室は今回のようにうっかり掘り出してしまった時以外にも、よくない場所に蛹室を作ってしまった場合などにも用いられます。またヘラクレスオオカブトはオスのツノが曲がらないように、前蛹の段階で人工蛹室に移すことが多いのだそうです。

 人工蛹室の作り方は「クワガタやカブトムシをたくさん飼育する人は覚えておいた方がいい技術の1つ」だと話しつつ、この後はこのニジイロクワガタのメスが無事に羽化できるのか、観察していくことにしました。

無事に羽化できるのでしょうか……?

 数日後。人工蛹室の前蛹は蛹化を始めていて、やがてサナギへと姿を変えました。実はもう1匹前蛹のニジイロクワガタを掘り出してしまったため、人工蛹室を2つ並べて管理していました。うれしいことに、もう1匹の前蛹も無事サナギになることができたのです。

化が始まっていました
蛹化が始まっていました

 そこから3週間後。先に蛹化した個体は体の色が変わってきて、クワガタらしい脚が外から見えていました。サナギが無事に成長し、中身が成虫のクワガタになってきていることがうかがえますね。

 その翌日。色が変わっていた個体の背中の皮が破け、羽化が始まっていました。時間をかけて少しずつ皮を脱ぎ、最後はまだ色が付いていない後翅(こうし・昆虫の2対のはねのうち後方の一対)を伸ばす作業を見せてくれたのでした。

羽化したてのニジイロクワガタ、神秘的です
羽化したてのニジイロクワガタ、神秘的です

 さらに次の日。後翅はしっかりと畳まれて、まだ白かったはねもすっかり茶色くなっていました。虹色の光沢を大きな特徴としているニジイロクワガタですが、羽化したてはみんな体の色が赤茶色で、時間をかけて虹色へと変わっていくそうですよ。

 数日後。赤茶色だった体に、虹色の光沢が出ていました。成虫となった個体がもう1匹のサナギを傷つけないよう、少し早いけれど別のケースに移動させることに。翌日には2匹目も羽化し、人工蛹室を使って“うっかり掘り出してしまった前蛹”を2匹とも無事に羽化させることができたのでした。良かった!

2匹目も無事に羽化してくれました◎
2匹目も無事に羽化してくれました◎

 カブトムシやクワガタを飼育していると、どうしてもボトルの側面から見えないパターンが出てきてしまうそうです。とはいえ国産カブトムシ以外のほとんどのカブトムシとクワガタは、今回紹介した人工蛹室で対応することができるとのこと。トラブルが起きた際もあわてずに対応し、無事に羽化させてあげてくださいと話すむし岡さんなのでした。

勉強になりました」とても神秘的」と反響

 動画には、「我が家にもしばらく菌糸瓶の見えない所にいる子がいて心配だったので、この動画とっても勉強になりました! 勇気を出して掘り起こしてみます!」「とても神秘的で思わず見入ってしまいました。 命がけで羽化している様子に感動です」「飼育してないと見れない状態ですからかなりレアですよね」といったコメントが寄せられていました。

 むし岡さんは、昆虫の採取や飼育に挑戦する様子をYouTubeチャンネル「むし岡だいき」やX(Twitter/@mushioka_daiki)で公開しています。また、世界で発見・撮影した強烈なインパクトの昆虫を100種以上紹介した著書『むし岡だいきの「世界の昆虫」おった!図鑑」(光文社)が販売中です。

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