ねとらぼ
2025/11/10 19:00(公開)

「駄作中の駄作」と呼ばれたガンプラ→ガチモデラーが3カ月かけて仕上げると…… 見違えるような完成品に称賛「異次元すぎる技術力」

 5年前や10年前……。少し前にインターネット上で話題になった投稿や動画を振り返って紹介する企画「昔のインターネット発掘!」。今回紹介するのは、2021年12月に投稿された「“ガンプラワースト1”と呼ばれたキットを改造する動画」です。

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サイサリスをカッコよくしたい

 投稿者は、YouTubeチャンネル「今日の模型ちゃんねる」(@kyo512a)を運営している「今日」さん。アニメやイラスト風に塗装したプラモデルの制作動画などを公開しています。

 今回の題材は、旧キットの「1/144 RX-78 GP02A ガンダム試作2号機 サイサリス」。パッケージイラストは格好いいですが、その作りや可動域の狭さから「ガンプラの歴史を語る上で外せない駄作中の駄作」「プロポーションがひどすぎます」と通販サイトのレビューで酷評されている商品です。

そのまま組み立てたサイサリスのプラモデル
素組はこんな感じ
「1/144 RX-78 GP02A ガンダム試作2号機 サイサリス」
「1/144 RX-78 GP02A ガンダム試作2号機 サイサリス」

 組んでみると、ビームサーベルを持たせても手から抜け落ちてしまい、肩に付いているバインダーも動かす内に緩くなってしまう状態。胴体に対して頭部も大きく、そのまま組み上げた姿を見て今日さんは「なんかチンチクリン感」と感想を伝えています。

 この“困ったちゃん”を格好よく仕上げるべく、まずは頭を改造。0.1ミリのハイパーカットソーで顔を頭部から切り離し、頭の内側を削ります。さらに頭部を縦半分、横半分にカットして各部をヤスリがけ。元のキットの造形を崩さないよう注意しつつ、頭を全体的に上下左右1ミリほど小さくしました。

頭部をひと回り小さくしたサイサリス
改造はまだ始まったばかり
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体のあちこちを“伸ばす”

 次は、一体化している胸と腰、腰周囲のアーマーを切り離します。プロポーション改善のため、分割した各パーツの間に工作用のプラスチック板をセット。パーツ同士で挟むことにより、各部を延長しました。

 腰パーツの内側にはレジンブロックをセット。これまでのプラモデル制作で生じた樹脂の削り粉をまぶしてから接着剤を塗ると、より強力に部品を固定できるそうです。胸に付けたプラ板や腰のレジンブロックに穴を開けたら、アルミ線を使って各部をつなぎます。

プラ板を挟んで延長した胸と腰
レジンブロックに穴を開ける

 この段階で胸パーツにもレジンブロックを仕込み、肩を本来よりも高い位置に取り付けられるよう改造。角度を変えることで怒り肩となり、迫力が増すそうです。

 一本につながっている肩と上腕を切り離し、肘関節にはABS樹脂のジョイントを採用。上腕と前腕は分割して内部にレジンブロックを仕込み、プラ板などを使って全体的にボリュームアップさせます。

 手首には、買いだめしておいた別キットの物を採用。既存のポリキャップの穴を工具で押し広げて前腕にはめ込みます。胴体と同じように内側のレジンブロックに穴をあけたら、ABSジョイントやアルミ線で前腕と上腕、肩を接続。さらに肩を介して胴体ともつなげます。

 バインダーの内側には、ABSジョイントと以前にたくさん作ったバーニアパーツ、必要な幅に加工した他キットのパーツを組み込みます。合わせて肩との接続部分も改良。これで内側まで作り込まれた、動かしても外れにくい安定感のあるバーニアとなりました。

 サイサリス最大の特徴である右肩のアトミックバズーカは、まず肩に付いている可動アームの位置を変更します。体とバズーカが干渉しないよう、市販のパーツを使ってアームそのものも新たに自作。砲身に付いているグリップもプラ板で延長したため、違和感なく仕上がりました。

干渉せずに展開と収納ができるよう改造したアトミックバズーカ
違和感なし!

 太ももとスネは、胴体と同じ要領で延長しました。膝関節には他キットのパーツを使用。つま先やスネ前面といった部分の幅を広げたり、プラ板を追加して形を整えたりすることで、サイサリスの力強さを細部まで表現します。

レジンブロックを詰め込んだスネの内部に差し込まれた膝関節
ブロックの隙間に「膝」を差し込む形とした

 可動域もしっかり広げつつ、アルミ線で足先から腰まで各パーツを接続しました。全身の改造だけで数日かかり、根を詰めて作業した結果、体調を崩してしまったとのこと。「ガンプラ作って寝込むってなんだよぉ」と今日さんは当時の状況を振り返っています。

改造前後のサイサリスを比較
途中で寝込んでしまった……

 復帰後に着手したのはシールドの改造。サイサリスの頭身に合わせてプラ板で延長します。裏面にも、砲身が収納できるスペースを残しながらプラ板を追加。スカスカ感がなくなったところで、全身の整形を行います。

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表面を仕上げて塗装したら……

 体を長くしたり、可動域を広げたりしましたが各部はまだガタガタで不安定です。そこで接着剤とベビーパウダーで作った即席のパテを、プラ板が挟んである部位にどんどん盛り付けて硬化促進剤のスプレープライマーを噴霧。改造した部分を安定させていきます。

 パテが乾いたら表面をひたすら研磨。ペンサンダーやナイフ、タガネ、先端に紙ヤスリを貼り付けたマンガ用つけペンなど、ありとあらゆる道具を駆使して全身の凸凹を整えました。

パテで補強した後、表面を削ったスネ
同じことを全パーツに施す

 続いては表面処理。サーフェイサーで全身をグレー1色に塗り、表面の凸凹を見やすくします。ゆがんでいる部分を見つけたら接着剤を塗り、スプレープライマーで固めて研磨。「ペンサンダーなかったらむちゃくちゃしんどい」作業の繰り返しです。地道かつ根気のいる内容ですが、頑張って進めます。

 全身を整えたので次は塗装。メインカラーには薄いグレーを塗り、胴体はガンダムらしい明るめの青、バズーカなどは濃いグレー、足先は赤くエアブラシで塗りました。かなりサイサリスらしくなりましたが、まだ終わりではありません。陰影を入れてさらに“化け”させます。

 黒を追加してやや濃い水性アクリルのグレーを影色として調整し、メインカラーであるグレー部分をエアブラシで塗りつぶします。全体に吹き付けたらマジックリンを用意。影色の塗料には水性アクリルが混ざっているため、マジックリンを付けた綿棒で拭けば簡単に取り除けます。

綿棒を使いサイサリスから余分な塗料を拭き取る
35本使って影色をきれいに仕上げた

 今日さんが考案したこの技法を使えば、広い面積の影色を塗りムラなく表現できます。そして青い部分には黒に近い紺色を使い、赤い部分にはこげ茶色を使用。影が生じる部位に筆で塗りました。

 ミリペンでスリットやエッジに黒い線を入れたら、黒に近いシーブルーでシールドの一部などに「より濃い影」を筆で追加。“うるさくない程度”にハイライトも描いていきます。

 90年代のロボットアニメを参考にした塗装のため、エアブラシでグラデーションシャドーも加えます。この工程は修正が効かない一発勝負。端から端まで手を止めず、一気に塗料を吹き付けます。白い塗料でピンポイントハイライトと周囲のグラデーションを追加。ここでミスしたら台なしです。スリリングな作業だ……。

 センサーや目など細かい部分も塗装してつや消しクリアーを吹き付ければ、ついに完成! 元のキットとの差は歴然で、改造と塗装によりサイサリスはアニメ本編から出てきたかのような迫力ある姿となりました。

改造と塗装で迫力ある仕上がりになったサイサリス
雰囲気が全く違う!

 今回の改造・塗装作業は完了するまでに3カ月もかかったとのこと。体調を崩したり、モチベーションが低下したりしたことを差し引いても大変だったようで「ガンプラワースト1と言われるだけのことありましたね」「なんとか完成までたどり着けて一安心」と振り返っています。

 この動画の再生数は、記事執筆時点で200万回を突破。コメント欄には、「すさまじい工数と、工夫の連続」「90年代塗装の再現すごい!」「HGの方のシールドをそのまま使用せずに改造し始めるの、さすがっす」「異次元すぎる技術力」「旧サイサリスをHGUCに近いような形にするって天才すぎる…」などの感想が寄せられています。

 同チャンネルではこの他にも、220円のガンプラを改造する様子や、スポンジを使った塗装方法の解説動画などを公開しています。

動画提供:YouTubeチャンネル「今日の模型ちゃんねる

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