ねとらぼ
2025/12/15 20:45(公開)

アメリカザリガニまみれだった終わってる池、駆除して1年後…… 信じられない光景に「凄まじいですね」「ただただ圧倒されています!」

 外来種まみれで環境が終わっていた池で、アメリカザリガニの駆除をはじめて1年後の様子がYouTubeに投稿されました。動画は記事執筆時点で、3万9000回以上再生されています。

アメリカザリガニ駆除を始めて1年が経ちました【終わってた池を神湿地にする⑮】

 投稿者は「生物多様性を全力で楽しみたい、だから生物多様性と水辺の文化を保全する」という考えで活動する小宮春平(@ariake538)さん。以前はブラックバスを根絶し、約1年経過した池の様子を紹介しました。今回はアメリカザリガニの駆除をはじめて1年経過した、「終わってた池」の様子を見ていくようです。

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アメリカザリガニまみれだった池

 小宮さん一行はこの日、もともとアメリカザリガニだらけだった「旧ザリガニ池」に来ていました。この後はこちらの池で容赦なく、ガサガサをしていこうと考えているそうです。

「旧ザリガニ池」でガサガサをします
「旧ザリガニ池」でガサガサをします

 というのも別の池でアメリカザリガニが繁殖して、稚ザリガニの姿を確認してしまったのだとか。つまりこの池にもアメリカザリガニがいるのであれば、繁殖をしていてもおかしくない時期ということ。稚ザリガニがいればガサガサで捕れるはずなので、調べて回ろうと思っているそうです。

ギンヤンマのヤゴが次々と見つかります
ギンヤンマのヤゴが次々と見つかります

 早速ガサガサをはじめると、網にはギンヤンマのヤゴが入りましたが、ザリガニの姿は見つかりません。仕掛けてあったわなには1年で大きく育ったスジエビが入っていましたが、こちらにもザリガニの姿はありませんでした。

わなには大きく育ったスジエビが入っていました
わなには大きく育ったスジエビが入っていました

 ガサガサをしながら進んでいくと、車軸藻類やホソバミズヒキモなどの藻類が生えていました。続けてガサガサをすると網にはエビやマツモムシ、大型のヤゴ類が次々と入り、足元にはミズユキノシタや立派なコナギが生えていたのでした。

 続いてアメリカザリガニがいたら絶対入りそうな場所もガサガサをしますが、うれしいことに網の中に入るのはヒメガムシやヤゴなどの在来の生き物ばかり。複数人でガサガサをしていますが、まだ誰一人としてアメリカザリガニを見ていないようです。

アメリカザリガニが好みそうな場所をガサガサしますが……
アメリカザリガニが好みそうな場所をガサガサしますが……

 池の一部にはすさまじい量のヒシが生えていて、水面をびっしりと埋め尽くすような状態になっていました。ヒシの実はしばらくゆでてアクを抜いてから開けると栗、新しい種はコーンのような風味がするのだとか。しかし少々増えすぎなため、ヒシ狩りをする必要がありそうです。

 これが環境再生の力ではありますが、現在は少々不健全な環境再生になってしまっている様子。長年アメリカザリガニによってストップしていた栄養循環が再開したことにより、圧倒的にヒシが優占状態になっているようです。

ヒシが爆増していました
ヒシが爆増していました

 小宮さんによるとヒシは富栄養な環境を好むため、栄養分が過剰にたまっている状態ではめちゃくちゃに増えるとのこと。一部の地域ではヒシが増えすぎて、悪者のイメージがついてしまっているそうです。

 しかしヒシ自体が悪いわけではなく、この池であれば富栄養化が悪者だといった方がいいでしょう。なお池を干して栄養状態が回復し、富栄養化が収ればヒシは勝手に減るそうですよ。

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稚ザリガニを発見

 この池はヒシが一面に生えている場所もあれば、水田雑草が塊になっている場所もあり、多種多様な環境が連続的に続いています。そのおかげで、さまざまな種類の植物・生き物がそれぞれ好きな場所で繁殖できる環境になっているようです。

 やや富栄養化であることを除けば、この池は成功例だと話していると、ついにアメリカザリガニがいたという報告が入ってきます。捕獲して観察してみると体長約4センチ、生後1カ月ほど経過していそうなサイズ感の稚ザリガニでした。

生後1カ月ほどだと思われるアメリカザリガニの姿が
生後1カ月ほどだと思われるアメリカザリガニの姿が

 小さいザリガニがいるということは、必ず親ザリガニがいるということ。その後慎重に探したところもう1匹、生まれたての1センチに満たないサイズのアメリカザリガニがいたそうです。

 しかしそれ以降捕れないところから、ここで稚ザリガニがヤゴに食べられている可能性が浮上します。この池はヤゴの数が劇的に回復しており、捕食者がたくさんいる状況です。小さなサイズのアメリカザリガニにとっては、ギンヤンマのヤゴは天敵・厄介な敵になりえるのかもしれません。

 そんな話をしていると、稚ザリガニをもう1匹発見。親ザリガニを捕らないと話にならないとしつつも、1年やそこらで解決するのであれば、アメリカザリガニは全国で問題になっていないはず。なかなか根絶ができないという点で、多くの人が苦戦をしていると話す小宮さんなのでした。

まだアメリカザリガニの根絶には至っていないようです
まだアメリカザリガニの根絶には至っていないようです

 現状アメリカザリガニの根絶に至っていないとはいえ、池の状況が改善していることは明らかです。あとは地道にやり続け、気を抜かずに戦っていこうと思っているそうですよ。

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用水路とビオトープもチェック

 その後は一度干上がって大変なことになったという、池の下にある用水路を見せてくれました。8月中旬から下旬にかけて雨が降ったことで水位が回復し、魚類はなんとか生き残ったようです。

 続いてビオトープを見てみると、準絶滅危惧種であるヒメミズワラビが生えていました。さらにキクモが増えていたり、ヒメガムシがいたりと、種類は多くないもののさまざまな植物・生物の姿が確認できました。

ヒメミズワラビを発見
ヒメミズワラビを発見

 秋になったらもっと生物が増えるのかな、と話しながらガサガサをしていると、ここでも稚ザリガニを発見。やはりアメリカザリガニとの闘いは、1年で終わることはないようです。しかし根絶させなくても密度さえ下げれば植物も生物も回復するという、非常に有用な情報を得ることができました。

こちらにも小さなザリガニの姿が
こちらにも小さなザリガニの姿が

 また柄がある「コキクモ」、柄がない「キクモ」という、2種類のキクモが混生していることも発見。コキクモは環境省のレッドリストではⅡ類、この池がある鳥取県はまだ入っていないものの、隣の兵庫県や岡山県ではより絶滅の危険性が高い I 類に分類されているそうです。

絶滅が心配されるコキクモが生えていました
絶滅が心配されるコキクモが生えていました

 ガサガサをした結果、この池にはまだザリガニがいるけれど、全体的に状況がかなりいい方向に行っていることがわかりました。1年でここまで行けることが分かったため、あとはわなで捕りながらゆっくりと本当のゼロを目指していくつもりだそうです。

 当初は3年ほどかかると思っていたため、予想よりも早くさまざまな種類が増えていて、いいのではないかと締めくくる小宮さんなのでした。

「現状を大きく変えられそう」「日本の自然の本来の強さを感じた」と反響

 動画には、「水質の改善がすさまじいですね。生体の栄養分がごそっと抜けただけでこうも変わるとは思えないので、ザリガニがいかに環境を破壊する力を持っているかが分かります」「素晴らしい教育素材だと思いました。これだけアメリカザリガニによる影響があるって共通認識になったら、現状を大きく変えられそう」「ザリガニの根絶の難しさを感じると共に、1年でここまで在来の動植物があふれていて、弱いイメージのあった、日本の自然の本来の強さを感じました」「ただただ圧倒されています!」といったコメントが寄せられていました。

 小宮さんはこの他にも、YouTubeチャンネル「コミヤの生物多様性に関する一考察」やX(Twitter)(@ariake538)にて、環境保全活動に関する情報を発信しています。

【終わってた池を神湿地にする①】ザリガニ捕獲再開しました
アメザリ池の日常作業【終わってた池を神湿地にする⑯】
作業進捗のお知らせ【終わってた池を神湿地にする⑰】

動画提供:YouTubeチャンネル「コミヤの生物多様性に関する一考察

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