年末年始は帰省や長期休暇などで旅行した方もいらっしゃるでしょうか。お出かけのときには行き方や交通手段をあらかじめ調べておくと安心ですが、いざ現地に着くと予定通りでないことも起こったり……。今回は、バスの迂(う)回を記録した同人誌です。
今回紹介する同人誌
『迂回運行記録集』A5 32ページ 表紙、本文カラー
編:馬車鉄路振興会
気付けばいつも違う道? バスの迂回23事例を掲載
いつもと同じ路線バスに乗ったはずなのに、今日はルートが違っている? とちょっと驚きそうな「バスの迂回」。ご本では工事、催事、スポーツと、迂回をすることになった理由を分類し、バスの運行会社名、バスの通常の運行区間、実施日などの情報と、現地の様子が短いコメントと写真で掲載されています。エリアは主に東京の西側が中心となっており、2022年~2024年に実施されたケース23件が載っています。
迂回から日常のなかの非日常が浮かび上がる
なぜこのご本を作ろうと思ったのか、どうして迂回を追っているのか……。その理由はご本には一言も書いてありません。最初のページから最後のページまで迂回の事例だけが載っています。
調査の条件なども記載がないため、おそらく対象のエリア全体を網羅的に調査するという目的でもないと思われます。一方で、迂回を記録するためには「通常のルート」と「変更されたルート」の比較が必要です。ご本では、その比較をきちんと整理した図解で示しているので、バスが走っている土地を知らなくても、いつもとの違いが直感的に伝わります。
またご本を読むと、迂回が実施される理由は水道工事やガス管取替工事、七夕祭り、さくら祭り、マラソン大会や駅伝大会などが目に付きます。地域の生活基盤のメンテナンスから、お祭りに人々が集うにぎわい、そして道そのものが舞台になるスポーツ大会など、日常の中に非日常が起こっている瞬間がバスの迂回というテーマによって、ぱっと浮かび上がります。
暮らしの中に溶け込み、許容される異変の丁寧な記録
制作にあたっては、実際に迂回の現場を訪れていらっしゃいます。写真には迂回するバスの横を駅伝の選手たちが走っている姿や、咲き誇る桜の前の通行止めの立て札など、リアルなその場の光景がしっかり収められています。
さらにコメントでは、バス停に迂回の告知がなされていたかどうかなど、現地に行っているからこその細やかな記載もあります。淡々とさえ見えるほどのすっきりとした情報に絞られた紙面から、バスが暮らしに溶け込み、いつもと変わらないときも、いつもと違うときも人々に寄り添って、より良いルートを探していることが感じられました。
臨時で発生したバスのルート変更の記録はなかなかまとめて残りづらい情報です。あるとき、ある街の、ちょっとした異変の記録は、さっぱりとしていながら、人の営みの痕跡を追う興味深さをにじませているように思いました。
サークル情報
サークル名:馬車鉄路振興会
X:@1372_snko
今週の余談
私も旅先でバスの迂回に当たったことがありますよー。にぎやかなお祭りにびっくりしていると、乗るはずだったバスが遠くで走り去っていくのが見えたのは、むしろいい思い出になっています。目的地までは歩きました。
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