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『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』が劇場公開中だ。『海底鬼岩城』の原作漫画が描かれたのは1982年~1983年、旧アニメ版が劇場公開されたのは1983年のため、実に43年という時を経てのリメイクとなった。
レビューサイトでのスコアは、3月中旬現在は映画.comで3.5点、Filmarksで3.7点。激烈な酷評も、最大級の絶賛も多くはなく、やや低めのテンションでの賛否両論という印象だ。
その評価に納得だ。基本的にはオリジナルに忠実な「無難なリメイク」であり、アニメーションのクオリティーは高く、物語そのものにしっかりしたエンタメ性があるため、家族で見に行って安心して楽しめるだろう。
しかし、旧アニメ版を子どもの時に繰り返し見ていて、それなりに思い入れがある筆者個人としては「不完全燃焼」な印象が否めないリメイクだった。その理由を詳しく記していこう。
※以下、『新・のび太の海底鬼岩城』のネタバレに触れています。
「海底キャンプ」の楽しさはしっかり受け継がれている
『新・のび太の海底鬼岩城』の基本的なあらすじは、「海底でのキャンプの最中に地底人と出会い、やがて“鬼岩城”との戦いが始まる」というもの。そして、今回の脚本を手がけた村山功が劇場パンフレットで指摘しているように、原作漫画から「物語の半分を過ぎるまでは(地底人のいる)ムー連邦に行かない」大胆な構成がされている。
特に前半部の海底でのキャンプは、藤子・F・不二雄が提唱するSF(すこし・ふしぎ)のワンダーが詰め込まれる形となっている。本作はもともと、のび太たちが夏休みに海か山のどちらに行くかでモメて、ドラえもんが「両方いけばもんくないだろう」と提案し、「海底の山に登る」という発想がユニークなのだ。
そして、劇中で指摘されているように、本来の海底は光が届かず真っ暗なうえ、すさまじい水圧がかかるため人間が生きていけるはずもない。しかし、ひみつ道具の「テキオー灯」の効果のおかげで、地上とほぼ同じ感じでキャンプができるというのは、「ドラえもん」という作品でしかなし得ない楽しさだ。
加えて、1万1000メートルを超える深さのマリアナ海溝の底という「前人未到の地での冒険」があるほか、24時間限定のテキオー灯の効果が切れてあわやジャイアンとスネ夫が死ぬかもしれないというサスペンスまである。見たことがない場所での冒険と、楽しいだけでは終わらない恐ろしさが『海底鬼岩城』の面白さだと、今回のリメイクで再確認できたのだ。
また、原作漫画が描かれた1980年代初期は冷戦の緊張が高まっていた時期であり、それは劇中の「自動報復システム」の中枢となる大ボスのポセイドンの設定にも反映されている。楽しい冒険から一転して、戦争が起こりうる緊張感のギャップが際立ち、その危機感を今一度抱かせるというのも、リメイクの確かな意義だ。
美しい海上のシーンのカット、一方でテンポを鈍重にしてしまう「復活」も
しかしながら、前述した前半部も、旧アニメ版を見た身としては不満が残る。たとえば、原作漫画および旧アニメ版でとても印象的だった海上での食事シーンが、今回のリメイクではカットされている。
「マツタケ(本当はプランクトン)づくしの料理」を食べながら、満月やイルカを見る、たとえようもないほどに美しいシーンを、今回も劇場のスクリーンで見たかったのだ。他にも食事シーンがいくつかカットされており、細かいところでは「しずかが食事の前に何もないところ(海の水)で手を洗う」場面がなかったのも残念だ。
一方で、ただでさえ長い前半部のテンポを削いでしまっている要素もある。具体的には、原作漫画に存在した「ドラえもんとのび太の2人だけで海底の下見をする」というくだりが、今回のリメイクで「復活」している。
旧アニメ版にはこの下見のシーンはなく、初めから全員で冒険に行ったためにややタイトに仕上がっていたのだが、今回のリメイクでは下見の後にも「のび太の宿題を終えないと冒険に行けない」というくだりが続くので、「まだ海底にみんなで行かないの?」という印象を強めてしまったのではないか。
限定的すぎる新キャラの活躍、ポセイドンが底の浅い印象に
それでも前半部は『海底鬼岩城』のキモを押さえた冒険を楽しく見られたのだが、問題は後半部だ。個人的に厳しかったのが、「追加されたキャラやセリフが不自然で、かつ物語を面白くする機能を果たしていない」ことだった。
具体的には新たなキャラクターとして「トリライン」という地底人の老婆が登場するのだが、その役割は「逃げたドラえもんたちの手助けをしてくれる」という表面的かつ限定的なものにとどまっている。
そのトリラインが女性ということは、終盤でのしずかの「女の子のほうが相手が油断する」という言葉にリンクしているのだが、かなり無理やりな理屈づけに思えてしまう。さらに大ボスのポセイドンが「我に女性の情報が少ない」というセリフを口にするのも、まるで人間関係をRPGのステータスのように理解しているかのようで、威厳あるラスボスというより軽薄で底の浅い印象を与えてしまう。さすがに余計なセリフに思えてしまった。
さらに、地底人の青年戦士である「エル」が、法廷で「心」というワードを新たに付け加えて訴えようとすることにも違和感があった。声優が一新してからのドラえもん映画では「良いことを言おうとするセリフが直接的すぎて、説教くささを助長するばかりか、欺瞞めいたものを感じてしまう」ことが気になっていたのだが、今回も残念ながら例外ではなかった。
一方で、「海底でキャンプってレア度高いかも!」というセリフや、ドラえもんがのび太を応援する様が「推し活」風になっていたり、水の中で用を足すとあたりに混ざってしまうと知りみんなで「ウェー」と言いながらじゃれるといった、物語に大きく影響し得ない部分での現代的なアレンジは面白く見られた。セリフや演出の変更は、その程度にとどめても良かっただろう。
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