「なんらかのアクションを期待して」――スクウェア・エニックス、テクモに友好的TOB提案に関する記者会見
スクウェア・エニックスがテクモに対して友好的公開買付け(TOB)を表明したことについて、記者会見を行った。
ともに歩んでいきたい、だから賛同してもらいたい
既報のとおり、スクウェア・エニックスは、テクモの発行する普通株式を公開買付けの方法により友好的に取得することを目的として、テクモの取締役会に対し賛同の意見表明を得るための公開買付けの条件案を提出。本日8月29日、帝国ホテルにおいて記者会見を行った。
本件は、テクモの株式を友好的公開買付けの方法により取得することを目的として提出したもので、9月4日までにテクモの取締役会から賛同の意見表明が得られることを前提としたもの。そのため、同日までに回答がないか、またはテクモの取締役会の賛同が得られない場合は、本案による公開買付けを実施しないとしている。なお、本案の骨子として買付価格は1株につき920円。8月28日の終値(706円)に対し、30%強のプレミアムを付加。買付予定の株券の数は、下限が発行済み株式総数に新株予約権の滞在株を加えた完全希釈化後の株式総数の過半数に、上限はなしとしている。
スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏は、今回のTOBの意義について「世界的にエンタテインメントとして成長も堅調なゲーム市場だが、かつてのように日本が牽引しているわけではない。ゲームというコンテンツ産業を支える重要な一角として、日本の企業が世界に対して影響を及ぼすべきと考え、世界を相手に戦っていく上で、手を組むべきは組んで世界展開をしていくべき」という理念の元、スクウェアとエニックスの合併や、タイトーを買収した際の方針となんら変わりなく進めてきたと前置き。ゲームが関連するビジネスラインをすべて押さえ、海外拠点の強化、そしてさまざまなブランドを生かした多様な展開をはからんと、10月1日より持株会社体制に移行することをにらんでの提案だと語る。
一方、テクモはいくつものコンテンツを持っており、ビジネスラインも広範だ。さらにこれから飛躍するには、特に世界展開に絞ればいかに自社で流通させていくかが課題となる。和田氏は、テクモの創造能力とスクウェア・エニックスが合体すれば大きな勢力になると、5月より先ごろテクモの代表取締役社長に就任した柿原康晴氏と意見交換を行っていたと明かす。元代表取締役社長の安田善巳氏とも具体的な話には触れていなかったが、思想的な部分で合致することが多かったと、TOBに関して急に進めてきた話ではないと強調した。
ただ、発表がこのタイミングになったことについては、テクモの決算発表において発表された安田氏の代表取締役社長辞任の報が間接的なきっかけになったと、不安が後押ししたことに言及。株価の下落や常勤の取締役が1人になることなども影響し、当初希望していた話が停滞することを懸念し、昨日書面をテクモ側に提出。本日の発表に至ったと説明した。
「ゲームはもちろん、クリエイティブなコンテンツは、1人の天才が作るわけではなく、チームで作るものです。チームの一部分が崩れると全滅と同等の状態になることから、チームの保全が重要と考えています。(テクモで働くクリエイターや社員が)動揺されているようなら、その理念からも我々の意見を述べておくべきと、発表に至りました。テクモ経営陣に賛同していただき、株主への説得の協力をしてほしいというのが今回の提案なわけです」(和田氏)
和田氏は、会社は誰のものかという話をしているのではなく、会社の価値の源泉は経営陣であり、社員であり、人材の塊だと持論を述べた。「世界に対して価値貢献できるチームを有するテクモの社員に、いかに気持ちよく成果を出してもらえるか。彼らの不安解消とモノ作りの環境維持のために、我々からのメッセージを出したかった」と、発表がひとつのきっかけになればとの思いがあったと、テクモ側からの回答に期待感を述べた。
なお、テクモの組織およびブランドについては現状のままで、スクウェア・エニックスおよびタイトーと同じく、スクウェア・エニックス・ホールディングスの傘下企業と位置づける考えを表明している。
今後はスクウェア・エニックス側からの発表に対する、テクモ側からの回答を待つことになる。920円という提示もあくまでも方向性を示しただけで、さまざまな条件については今後議論していけばいいことと和田氏。ちなみに、スクウェア・エニックスが提示した買付価格であれば、追加の資金調達は必要とせず、手元資金で十分にまかなえるとのこと。
どのような回答を得られるかは別にして、例え拒否されたとしてもテクモ側の議論がフィードバックされた段階で対応をしたいとスクウェア・エニックス側は考えている。あくまでも会話を求めての今回の発表になったと説明しているが、逆に見ればなかなか実務的な議論に進まないテクモ側へしびれを切らしたとも言える。テクモ側が9月4日の回答期限までに、どのような議論が行われ意思決定するのか注目したい。
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