ある意味リアルなウォーシミュレーション? 「ボコスカウォーズ」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(2/2 ページ)
連載第65回はアスキーの「ボコスカウォーズ」。ファミコン初期にPCから移植されたゲームですが、プレイヤーによって評価が両極端に分かれるようです。Wiiのバーチャルコンソールなどで入手できるので、皆さんも一度プレイして、ご自身の目で評価してみてはいかがでしょうか?
クソゲーと呼ばれる理由
戦闘は敵に体当たりすることで発生する。それぞれの強さと乱数により勝敗が自動的に判定され、負けたほうは消えてしまう。
実はこの乱数の影響がかなり強い。例えば、騎士(強さ150以上)が敵の兵卒(強さ10)に負けることがしばしばある。あまつさえスレン王(強さ220以上)が敵兵卒に負けることすら珍しくなく、プレイヤーをあぜんとさせた(もちろん、反対に味方の兵卒が、強い敵を倒す場合もあるが)。
シミュレーションゲームでありながら、プレイヤーの戦術よりも、運で勝敗が決まるという印象が強いのだ。当時のファミコンではアクションゲームがほとんどだったこともあり、ボコスカウォーズは“プレイヤーの腕は関係なく、すべて運任せで決まってしまうクソゲー”と評価されてしまうこともあった。
また、キーレスポンスの悪さも気になった。十字キーを押しても兵士が動いてくれないことが多い。わざと兵士たちの動き出しのタイミングをズラすために、こういう仕様になっているのだろう。ただ、スレン王が単独で動くときも同様なので、敵を避けようとする時に苦労した。
このゲームでは、敵のほうから戦闘を仕掛けることはない。味方が敵に突っ込んだ時だけ戦闘となる。だからうまく動けば、不要な戦いを避けることが可能なのだが、キーレスポンスのせいで十字キーを押しすぎ、敵に突っ込んでしまうことがよくあった。
突っ込んだのがスレン王で、しかもその戦闘で負けてしまって、ゲームオーバーになってしまった時のやるせなさ。これはボコスカウォーズをプレイした人なら、誰でも一度は経験しているだろう。
ただ、我慢してプレイ回数を重ね、操作に慣れてくれば、こういうミスが少なくなり、だんだん先へ進めるようになってくるはず。人数の多い兵卒は仕方ないとしても、スレン王の単独行動なら、なるべく敵の近くを通らないようにすれば、不必要な戦闘は少なくできる。
リアリティを追求したらこうなったのかも
軍団が思い通りに動かず隊列が崩れる。敵と戦っても勝敗が読めない。こういう要素はウォーシミュレーションとしては欠点かもしれないが、その反面、集団での戦闘風景が、リアルに表現できているんじゃないかと思う。
例えば大勢での飲み会で、集合場所が現地じゃないケースを考えてみよう。駅前に集まったメンバーを居酒屋に連れていく時、全員がまっすぐ店まで動いてくれることはまずないだろう。大きく遅れる人がいるだろうし、途中ではぐれてしまう人もいるかもしれない。全員がちゃんと来ているかどうか、誰かが確認しながら進むことになるはずだ(わたしも昔、渋谷の路上で売られていた中古ファミコンソフトが目に留まり、見ているうちに仲間とはぐれてしまった経験がある)。
ボコスカウォーズで兵士を移動させるときは、まさにそんな状態になる。団体行動におけるもどかしさが再現されているシステムだといえよう。
勝敗にランダムの要素が大きいというのもリアルだ。そもそも実際の戦いでは、敵の強さが数値として公表されることはまずない。スポーツでは数値化されたデータもあるが、結果が必ずしも数値どおりになるとは限らない。打率1割台の打者が、防御率1点台の投手から、ホームランを打つこともあり得なくはない。
隊列を組んで動けない。弱い敵に倒されることが多い。後、戦闘中に大きく能力が上がることから考えると、スレン軍の兵士はまだ未熟で、成長途上の段階なのかもしれない。
バサム城への長き道のり、そして挫折
それでは、バサム城への道のりを見ていこう。
オゴレス王から600〜500メートルの地点を、便宜上、ステージ1と呼ぶことにする。ここではまず敵騎士が出現する。強さが50あるので、まともに戦わず、やり過ごしたほうが賢明だ。スレン王を強くしたいなら、その後に出てくる敵兵卒と戦ったほうがいい。
途中の木々に触って味方の兵士を助け出す。特に騎士はステージ終盤まで残しておきたい。騎士がひとりもいないと、牢屋に捕らえられた兵卒たちを助けられないからだ。
ステージを区切る壁の前には、大勢の敵兵卒が配置されていて、いきなり激しい戦いとなる。
スレン王が壁を崩すとステージ2(残り500〜400メートル)に突入。ここでは大木が進路を邪魔するが、スレン王は大木を切り崩せるので、大した障害ではない。むしろ配置によっては、敵の足止めに利用できる。
ステージ3(残り400〜300メートル)には魔術師が登場。スレン王が通り過ぎようとすると、周りに幻戦士を出現させ、王を襲わせる。幻戦士は倒しても倒してもまた復活してきりがないのだが、魔術師を倒すと、その魔術師が作った幻戦士は消滅する。
魔術師との戦いは、テーブルトークRPGではおなじみの、エレメンタルというモンスターとの戦いをほうふつとさせる。魔術師に召喚されたエレメンタル(地水火風の4種類いる)は、まともに戦うとかなりの強敵だが、冒険者がその魔術師を攻撃して精神集中を途切れさせると、逆に魔術師に襲いかかるのだ。
ハード性能面で制約の多かった時代に作られたボコスカウォーズ。グラフィックは現代のゲームとは比ぶべくもないが、この魔術師というキャラクターの存在が、ファンタジーの雰囲気を感じさせてくれた。
ステージ4(残り300〜200メートル)は、このゲーム最大の難所である。
強さ100の強敵、重騎士が現れる。しかも、20人以上も。
ここまで来ると、味方もかなり大軍勢となっているはずだが、大半が兵卒なので、正面からぶつかってしまうと勝ち目はない。
ステージ5(残り200〜100メートル)のサボテン地帯を経て、バサム城へ突入。しかし、ここでも多数の重騎士が守りを固めている。おまけに親衛隊という強さ250の敵まで現れ、スレン王たちを待ち受ける。しかも城内は通路が狭く、これらの敵を避けるのは非常に難しい。
このステージ4・ステージ6の、重騎士との戦いが難しすぎて、挫折するプレイヤーは多かっただろう。というか、わたしが挫折した。
でも今は、攻略法の載っているサイトがいくつもあるので、それらを参考にして乗り越えることができた。
先述の通り、ボコスカウォーズでは敵から戦闘を仕掛けてくることはない。だから、味方の兵士を壁にして、敵を足止めすることが可能なのだ。特に、敵の重騎士は行動パターンに特徴があるので、それを利用して動きを封じられる。
まあ、味方も思い通りに動いてくれないから、完璧に敵を封じるのはちょっと難しいんだけど。
今もなお進み続ける者ども
強さ250の親衛隊だが、実は味方の兵卒に弱い。だからこの時点で兵卒がある程度残っていれば、さほど恐れる相手ではない。重兵卒がいたらさらに有利なので、親衛隊と遭遇する前に、間違って重兵卒を敵の重騎士に突っ込ませないように気をつけたい。
バサム城の通路を抜けると、遂にオゴレス王が姿を現す。親衛隊と魔術師を従えているので、それぞれ兵卒と騎士に倒させるのがいいが、もう味方の兵士が残っていなかったら、オゴレスが近づいてくるのを待って、スレン王との一騎討ちに持ち込んでもいい。
どのみち、親衛隊・魔術師を全員倒したとしても、スレン王以外の兵士でオゴレスを倒すことはできないようだ。数々の苦難を乗り越えて、ようやくたどり着いたこの場所での一騎討ち。もちろんスレン王が敗れたらゲームオーバーとなり、再び最初からやり直さなければならない。
オゴレスを倒すと、難度がアップした2周目が始まる。2周目は敵の強さがすべてプラス10されている上、新たに“落とし穴”が登場。兵卒はこの落とし穴を埋めることができるが、騎士やスレン王が入ってしまうと即アウトだ。
実はこのゲーム、5周目まであるという。1周クリアするごとに、敵の強さが10上がるのだから、5周目ともなると敵の重騎士の強さは140。兵卒ですら強さ50。
もちろんわたしがそこまで進めるはずもなかったが、2周目のステージ5までは進んだから、わたしにしては良くやったほうではないかと思う。
ちなみに、PC版はファミコン版と違って、スレン王の配下に最初から多くの兵士がいる。その代わり、木や岩に変えられた兵士はおらず、兵士を増やすには牢屋から救出するしかない。つまり騎士は途中で補充できないわけで、ファミコン版よりさらに貴重な存在となっている。
ボコスカウォーズの作者・ラショウ氏は、その後も多くの作品を発表しているが、家庭用ゲーム機には移植されていない(一度、「あの素晴らしい弁当を2度3度」がプレイステーションに移植される計画があったが、中止となった)。ただしPCでは現在、イタチョコシステムや、D4エンタープライズ・イタチョコショップのサイトで販売されているので、ダウンロードしてプレイすることが可能だ。
ボコスカウォーズ自体も、D4エンタープライズのプロジェクトEGGで購入できる(PC-8801版)。また、ジー・モードから携帯電話のアプリとしても配信されている。
そして、ファミコン版ボコスカウォーズは、Wiiのバーチャルコンソールで配信されている。「三國志」「大戦略」より古いゲームでありながら、今でもこれだけ入手方法があるということが、ボコスカウォーズの知名度の高さを示しているといえよう。
最後に、このゲームのBGMについて。ゲーム中、エンドレスで鳴り続けているBGMには、歌詞がある。マニュアルにも載っているので、ゲーム中に“進めー進めー者どーもー”と口ずさんだプレイヤーも多かったはず。これもハード性能面で制約の多かった中で、少しでもファンタジーの雰囲気をかもし出すための演出だったのだろうか?
バーチャルコンソールでの配信に伴い、この歌詞が任天堂のサイトに掲載されていたのには驚いた。しかも楽譜付きで。Wiiで初めてこのゲームをプレイする方も、ぜひ一度は“進めー進めー者どーもー”と口ずさみながらプレイしてほしい。
来年、高校野球の応援でブラスバンドがこの曲を演奏していたら面白いなーと思った。
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