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「信長の野望・天道」連載(第1回)――リアルさか遊びやすさか。「信長の野望」の課題は?伸ばせ街道! 戦国ニッポン改造論(2/2 ページ)

ストラテジーゲームの代名詞「信長の野望」のシリーズ最新作が発売される。今回はそれを記念して、歴代の「信長の野望」を振り返ってみたいと思う。

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「嵐世記」からリアルタイム戦闘&開発シムへ

 RTS(リアルタイムストラテジー)の世界的な流行を受けてか、2001年発売の「信長の野望 嵐世記」以降、「信長の野望」シリーズの戦闘もリアルタイム制の時代に入って、以降の作品はすべてリアルタイム戦闘となる。また、忍者集団や商人集団、各国の国人勢力や寺社勢力の活動が本格的に取り入れられたのも「嵐世記」が初めてであり、いろいろ議論があったものの、ターニングポイントとしての意義は大きかった。

 言葉にすると同じくリアルタイム戦闘ではあるが、野戦に「前線」と「後詰」の概念を持たせ、部隊のローテーションと投入タイミングに力点を置いていたのが「信長の野望 蒼天録」(2002年)の野戦ルールである。この作品では再び一続きの全国マップが採用されたほか、大名配下の城主クラス武将としてもプレイできるのが大きな特徴だった。うかうかしていると(あるいは意図的に防備を薄くしておくと)自分の持ち城が何度も攻め落とされ、そのたび主家が替わる(つまり、ある程度わざと替えたりもできる)という、他作品では体験できない不思議な展開が楽しめたものだ。

「信長の野望・ 嵐世記」(左)と「信長の野望・ 蒼天録」(右)

 「嵐世記」のものをさらに発展させた、広いマップでのRTS戦闘を採用したのが「信長の野望・ 天下創世」(2003年)で、この作品の内政要素はいわば、3D描画の箱庭シムになった。ひとたび敵に攻め込まれるや、自分で計画し開発した城下町の地形がそのまま戦場になるという“ゲームとしての分かりやすさ”が、一つの魅力でもあった。町を発展させることで城が大きくなっていくというアイデアは、藤木久志氏の北条氏研究あたりをヒントにしたギミックかもしれない。戦国後期に見られる、城郭の惣構(そうがまえ)が拡大していく傾向は現在、地域住民の避難場所を兼ねたためだと解釈されている。

 そして直近の作品である「信長の野望・ 革新」(2005年)は、3Dグラフィックスの全国1枚マップ上で城下町の開発と戦闘をリアルタイムに行えるシステムとなった。また土地開発の目標、終着点として経済発展のほかに、技術開発要素が取り入れられたことが作品名の由来で、大名家間で技術の供与や交換ができるほか、南蛮人と親交を深めることで新技術を導入できたりもする。新しい武器や戦術、生産技術といった側面でも、他大名と競争できるゲームとなったのである。

「信長の野望・ 天下創世」(左)と「信長の野望・ 革新」(右)

あえてプレイしやすさを重視する「信長の野望・ 天道」


 シリーズの歩みをざっと振り返ってみたが、その時々に応じた試行錯誤を含みつつも、プレイ要素が世代を追って拡充されていった経緯が分かると思う。結果として、新しい作品ほど戦国時代のさまざまな要素を楽しめるようになったものの、それはプレイに手間と時間がかかるということでもある。ストラテジーゲームの本質は広い意味での「陣取り」であって、その「陣」やら「部隊」やらを細かく描いていけば、たとえ同じ方向のゲーム性であっても、プレイの手間が増えるのは当然だ。ストラテジーゲームらしい楽しみを、いかにリッチかつ手軽なプレイで実現できるように設計するかが、「信長の野望」シリーズの次なる課題といえよう。

 そうした課題に対するコーエーの解答が、9月18日に発売される最新作「信長の野望・ 天道」ということになる。「天道」は、シリーズ歴代作品が積み上げてきた戦争と内政の構成要素を引き継ぎつつも、その両者を有機的に繋げるファクターである「街道」に着目して、全体のシステムを組み直した意欲作だ。個別の操作以上に計画性を問い、ディテール表現よりも根幹のシステムに力を注いだ作品となりそうな「天道」については、次回以降詳しく解説していこう。


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